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第3話 ハラキの実家
「なあ、あとどの位歩くんだ」
「もう少しだよ。スーツケース持ってやろうか?」
「いいよ、自分で持つから。それよりずいぶん田舎だな。本当にコンビニとかないじゃん。」
「まあ、利便性は悪いけれど、慣れればそうでもないよ。電気や水道は流石に通っているしね。あと山も川もあるから、京の言ってた夏の遊びは一通りできるぞ」
「えっ、本当?じゃあ、自分で捕った魚食べられる?」
「まあ、食べられるけれど……おじさんが得意だから今度教えてもらおうか」
「まじで、夢だったんだよ」
5分程歩いていると、集落が見えてきた。ようやく村に到着したらしい。村人の家を通り過ぎて、曲がりくねった道を行くと、階段を上ったところに大きな屋敷が建っていた。
「もしかして実家ってここなのか?」
「ああ、そうだよ。無駄に広いんだ。それ貸して」
「あっ、ちょっと……」
杏一は俺のスーツケースをもって、颯爽に階段を上って行ってしまった。
あれ結構重いんだけどな、なんて思いながら後を追って上っていくと、二階建ての昔ながらの屋敷が俺を迎えてくれた。
玄関を開けると大きな広間があり、前と左右の三つに廊下が分かれていた。杏一は左の廊下を進んでいき、渡り廊下を越えて離れにたどり着いた。
「なあ、こんな広い家に何人住んでいるんだ?」
「家族が6人とお手伝いさんと……まあ色々いるかな」
「6人か……家が大きいからなんか寂しいな」
「過疎地域だから仕方がないだろう。この地域だと6人は多い方なんだけど。でも、京が来てくれたから俺と合わせて8人になったな」
「ん?俺は家族じゃないだろ」
「つれないなー。俺たち唯一無二の親友だろ」
面と向かってそんなことを言われるとは思っていなかったので、ちょっと照れる。
「顔赤くなってる。かわいいな」
「は?そういうのは彼女に言えよ。俺に言ってどうするんだよ」
「そんなムキになるなって。俺は爺ちゃんと父さんに会ってくるから、京は荷解きでもしてろよ。そこの箪笥とか使っていいから」
「えっ、挨拶なら俺も行かないと駄目だろ」
「いや、俺だけでいいんだ。もうすぐお祭りがあるからみんなその準備で忙しいし、外から来た客には極力会わないっていう暗黙のルールがあるから、会ってくれないぞ」
「何そのしきたり。まあ分かったから、俺も来たって挨拶してきてくれる?」
「ああ、ここから出るなよ。誰かと会っても話すんじゃないぞ。じゃあ行ってくるから」
何を言ってるんだ、変な村だな。普通、友達の家に行ったら挨拶はするもんだし、話すんじゃないっておかしいよな。
閉鎖的な村だからそういうものなのかな。深く考えても仕方がないし、荷物片づけようっと。京太は大量の荷物を出して整理し始めた。
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