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第7話 神社へ
駕籠の両端にはすでに二人の男が待機していた。もちろんその男たちも和装で顔を隠している。
日が暮れてきたのも相まって、古びた駕籠や顔を隠した人たちが奇妙で不気味に見える。俺はこのまま祭りに参加していいのだろうか。訳も分からないまま流されてここまで来てしまったが、この村は少しおかしいよなと思い始めていた。
駕籠の前で立ち尽くしていると少年が近づいてきて、駕籠の扉を開いて入るよう促してきた。正直、乗りたくないな。
でも、今ここで入るのを拒んだらこの人達は困るんだろうな。神社に行けば杏一が待っているし、そこまで我慢すれば……
白い草履を脱いで、かがみながら黒い駕籠に乗り込む。中は思っていたよりも広く、段差があって椅子に座るよう乗ることができた。この格好で正座はきつかったから良かった。あとふかふかの座布団も敷いてあるからお尻も痛くならなそうだ。
「少し揺れますのでお気を付けください」
そう言われ、少年に籠の扉を閉められてしまった。窓もないため籠の中はかなり暗い。扉の隙間からかすかに光が漏れていたが、駕籠全体を明るく照らしてくれるほどではなかった。
ギシッと音が聞こえ、駕籠が揺れる。どうやら進みだしたようだ。どこを通って行くのだろうか、隙間から外を覗いてみたが田んぼしか見えなかった。
暗闇の中、前後左右に揺られていたら段々気分が悪くなってきた。
早く着かないかな……
人の歩く音と籠のきしむ音だけが響いて、なんだか目を開けているのが怖くてぎゅっと目をつむった。
大丈夫、大丈夫、もうすぐ杏一に会えるから……
しばらく揺れに耐えていると、ガタンと音が鳴ってようやく揺れが収まった。
「失礼致します」という言葉とともにゆっくりと扉が開かれ、夕日が俺を照らした。外は森のようだったが、俺たちが来た道は草一本も生えていない砂利道だった。
少年は駕籠の側に草履を置き、俺が駕籠から降りる手助けをしてくれた。
「ありがとう」
お礼を言われるとは思っていなかったのか、少年が一瞬びくついたように見えた。
「階段を上ってすぐの神社に、杏一様がお待ちでございます」
「帰りもこれに乗ればいいの?」
「……それは杏一様の指示にお従いください」
そっか、できればもう乗りたくないなあ。帰りは着物を脱いで身軽に歩いて帰りたいって杏一に頼めばいいか。
ジャリジャリと音を立てて、ちまちまと階段までの数十メートルを歩いた。だんだん日が暮れて足元が暗くなり、階段を踏み外さないように下を向きながら1段ずつゆっくり上っていった。
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