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*番外編『黒鉄×白峰』一話

少し小説の書き方を勉強しました!それとこれからはR18を含む話の時はタイトルに『*』を表記しますね。 ーーーーーー ーーーーーー 中田先輩を好きになったきっかけは些細なことだった。 僕、白峰(しろみね)はフランス人の父と日本人の母を持つハーフで、生まれつき白髪に近い少しクセのある金髪に、夜空のような黒い眼をしていた。 そして、父からの遺伝により日本人離れした端正な顔は、誰が見ても美しいと言うのだった。 ーーつまらない。 誰も僕の中身に興味はなく、かっこいいから、可愛いからといった浅はかな理由で近付いてくる人達から離れたくて、クールでなんの関心もないような性格を装って日々を過ごした。 「ーー俺は中田、今日から同じ係としてよろしくね」 「······よろしくお願いします」 この学校では何かの係に入る事が義務付けされている。僕の顔目当てで寄ってくる人間と長い間作業をこなすなんて想像するだけで頭が痛くなり、誰にも会いたくなくて人気のない係を選んだ。 人気が無さすぎて係の人数は僕を含めて二人しかおらず、心底ほっとしたのを覚えている。その時初めて中田先輩に出会ったのだった。 「環境保護係なんて大層な名前だけど、要は校内のゴミ拾い係だよね、めんどくせぇ〜」 「まあ、そうですけど······嫌なら、中田先輩は何故この係を選ばれたのですか?」 「寝てたら勝手になってた」 ふは、と笑う先輩の表情は今まで僕の周りにいたやましさを含んだ笑みではなく、単純明快な清々しい笑顔だった。 ーーあ、この人『普通』だ。 理解するよりも早く鼓動がとくんと跳ね上がり、じわじわと何かが胸の奥から溢れ出はじめた。 それが『恋』だと気付くのにそう時間はかからなかったーー。 だから先輩が、僕の秘密の場所に来た時は驚きと共に高揚感に包まれたが、先輩の身に起こった話を聞いて目の前が真っ暗になった。一体誰が、誰の手が指が、先輩にそんな稚拙なマネをしたのか? 謂れもない焦燥感にひやりと汗が首筋を伝う。いっそ僕が先に手を出していればーーなんて思考が頭の中を巡り始め、嗚呼、自分も周りにいた人間と変わらないのだと自分自身を軽蔑した。それでも尚平静を装い、良い後輩を演じることに徹した。先輩にだけは嫌われたく無かったからーー。 その日、僕は体操着を忘れてしまい先輩に借りようと先輩いる教室に足を運ぶ。上級生の階層に私用で来たのは初めてで、それにより僕を知らない先輩達の好奇の目に晒され、吐き気がする。 でも、それよりも先輩に会える。 最近は、毎日屋上前に集まりたわいもない言葉を交わし、少しずつ先輩が元気になっていく姿に安心すると同時に、物足りなさを感じていたのだ。 もっと先輩と会いたい。 しかし、そんな甘い考えは先輩の姿を見つけた時にすぐに消え失せた。 教室の中の先輩が今にも泣きそうな顔をしていると認識した刹那、自分の中でギリギリ繋ぎ止めていた理性がプツンと切れた。 中田先輩の名前をひっくり返しただけの田中先輩。先輩と同じ文字の名前だなんて腹立たしい。コイツが事の元凶か。 どういう動機かは知らないが先輩に恥辱を働いたクセに、浅はかにも先輩の心を奪った卑劣な男。その上自分は彼女を作り、残された先輩に残酷な現実を突きつけるのか。 ······はは、違うな。僕も本性は彼と似て腐っている。だって心が囁き続ける、今なら先輩を奪えるとーー。 「白······み、ねく············」 先輩が僕の指で悦んでいる。自分が一番嫌っている行為をしている嫌悪感と夢にまでみた先輩の艶かしさに思考がぐちゃぐちゃに混ざってゆく。 こんなことしてごめんなさい、それでももっと欲しい、全部欲しいと渇望してしまうのだ。僕だけが先輩をドロドロに纏って愛していたい、僕だけにその恍惚とした表情を見せて欲しい。 だがそれが叶わぬ夢だということは理解していた。 ーー曲がりなりにも、僕に一ミリだけでも良心があって良かった。僕の決死の告白に、先輩が決着をつけてくれたのだ。これ以上求めては本当に嫌われてしまう。 ーーこんな僕にお礼なんて言って、先輩は馬鹿だなぁ。 チョロくて、可愛くて、どうしようもなく好きで、恋焦がれて焼き尽くされた。 ただ、僕のした行為が罪悪感として肺の中に残ったまま。 だからバチが当たったんだーー。 ーーーーーー 「ほら、さっきお前がしてた行為だぞ?もっとそれっぽい言葉でも吐けよ?」 「うぅっ······」 先程の一部始終を黒鉄(くろがね)という冷酷な男に見つかり、先輩に手を出さない変わりに僕が先輩の受けた恥辱をコイツからされることになった。 ごつごつとした細長い指が、容赦なく突起を抉る。全く気持ちのいいものでは無い、痛いし、吐き気がするほど気持ち悪いーー。 もたれ掛かった壁から、座り込んだ床から、ひんやりとしたえも言わぬ冷気が漂い、ぞくりと肌が粟立つ。 これはきっと先輩に手を出してしまった僕に天罰が下ったのだと何とか納得しようとするが、這わせる手の動きのあまりの雑さに苛立ちを覚え睨みつけた。 「こんな気持ち良くも何ともない行為であんたが望むような声が出るわけ無いだろ!」 「ふーん?じゃ、つまんないからやっぱりさっきのヤツで遊ぼっかな?」 ボサボサの少し長い髪の隙間から鋭い眼光で睨み返され、しかも逆らえない条件まで出され怯んでしまう。 「それがいやなら、啼けよ?」 「っ······!」 僕には一切の拒否権が無いのだ。恐る恐る、少しずつそれっぽい声を発する。恥ずかしいし痛いし全く感じないが、そうしないと先輩が危険に晒されるかもしれない。 「ぁ······う······」 「は?そんな小声じゃ聞こえねぇんだけど?」 「あんたが下手なんだよ!」 思わずそう叫ぶと、目の前の男は眉をひそめた。目にはギラりとした鈍い光が宿り、先程まで突起を弄っていた手で僕の顎を掴みあげ、蛇に睨まれたカエルになったような感覚に冷や汗が垂れる。 「さっきから誰に向かって物言ってんだ?自分の立場分かってるのか?」 「っ······だって、無理やりグリグリされても痛いんだよ······」 半ば涙目になりながらもキッと目線は外さない。痛い、という言葉に反応したのか黒鉄は不敵な笑みを浮かべた。 「そっちの方が面白いだろ?」 「······」 コイツは危険だ、本能がそう囁く。本当に最低なヤツに捕まってしまったのだと、後悔してももう遅い。 「はは!その顔だよ!俺が一番好きな顔!絶望に歪むその表情、堪んねぇよなぁ!」 「くっ······!」 黒鉄は再び僕の胸の突起を弄り始め、ジクジクとした痛みに耐え続けた。 先輩も最初はこんな思いをしたのかな······?って、こんな時でも『先輩』か。いや、こんな時だからこそ先輩が僕の光なのだろう。眉尻から涙がつうーーと流れた。 「うぅ······なか、た······せんぱ············」 「······俺は中田じゃねぇけど?」 「胸······痛い、うぅ······せんぱ、い······」 「······おもんな」 黒鉄の指がスッと離れる。子供みたいにムスッと顔を歪ませる姿を見て、このまま本当に飽きられたら先輩の方に行ってしまう!とハッとして思わず黒鉄の手首を掴んだ。 「······ダメ、やめないで············」 「俺おもんねぇの無理なんだよね」 「ごめん、先輩の名前、呼ばないから······何でもするから······」 懇願するように、媚びるように、上目遣いで相手を見据える。当の本人は何かを考え込んでいた。 「何でもしてくれんの?」 「······僕に出来ることなら」 「じゃあここでオナれっつったら?」 一瞬何を言われたか理解出来なかった。ポカンと空いた口を閉じることさえ忘れるほど。僕が、ここで、コイツに自慰を見せろと言われた? ······最悪だ。誰が嫌いな奴の前でそんな事するって言うんだよ。······でも、僕が中田先輩に手を出してしまった事が全ての元凶。もう後には引けない、覚悟を決めよう。 「······男のソレを見ても面白くないと思いますが······分かりました」 「気にすんなよ、ただの暇つぶしなんだから」 気にするなって言える立場かよ! しかし、暇つぶしだとかそんなくだらない理由であれ、僕にこの行為への拒否権は無い。 仕方なくガチャガチャとベルトを外し、ジッパーを下ろしその隙間からネイビーカラーの下着がチラリと覗く。普段意識して見られることの無いその場所に視線を感じ嫌悪感が背中を撫でるが、ついには最後の砦である下着もずりおろし、普通校内ならトイレかプールの前の更衣室の中でしか出さないモノが外気に触れる。 「へにゃへにゃ」 「······」 文字通りへにゃへにゃの何の変哲もないソレを右手で握る。黒鉄に握りしめたモノが見られないように内股に、前屈みになりながら、さっさと終わらせたくて早めに扱き始めた。 「ん······」 胸の突起とは違い直接的な刺激が下半身に疼く。そうは言っても他人の前なので勃つものも中々勃たなかった。 お願いだから早く終わってくれ······。 そんな僕の心中を読み取ったのか、ヤツは気に入らなさそうな不機嫌な面持ちをしていた。 「くっ······」 「おい」 「な、んだよ······」 「脚開けよ、見えないだろ?」 「見えない、様にシてんだよ······!」 「見せろ」 「······」 ······逆らえないので少しだけ脚を開く、と同時に黒鉄の掌が僕の膝の裏にねじ込まれ、約百八十度にぱかりと脚を押し開かされた。 「は!?」 ぎっちりと抑えられた脚はビクともせず、右手を動かせば隠しているソレが見えてしまうので一切手を動かせなくなってしまった。 自身がしているポーズの意味に気付き、驚きと羞恥に目を見張る僕に追い打ちをかけるように耳元に黒鉄の唇が近付く。 「右手を離せ」 「っ······!」 ニヤリと口角を上げ楽しそうに微笑むソイツを見上げながら、命令に従うしかない屈辱を噛み締めてゆっくりと手を離す。 ······見られてる。 今度は直接ハッキリと僕のモノを見られてしまい、羞恥でふるふると体が震える。 そんな最悪な状況なのに、ソコがぴくんと揺れた。 「あ······れ······?」 「······見られて感じたのか?」 ぐぐ、と少しずつ育ってしまうモノの意味を受け止めきれない。 嫌いな奴に見られて興奮するなんて、こんなの、まるで変態じゃないか······。こんなの、僕じゃない······。 言葉にできない程の恥ずかしさから瞼を伏せる。 「やだ······!見るな!変態!」 「はっ!変態はお前だろ?」 「うるさい!離せ!」 「そのままじゃ辛いだろ?欲望のままにぐちゃぐちゃに扱きまくっていいんだぜ?」 「誰が······そんな事······っーー」 黒鉄の舌が、カッターシャツの上から突起をなぶった。先程雑に扱われヒリヒリしていた箇所をヌルヌル、レロレロと執拗に舐られ、ゾクゾクとした感覚が身体中を走る。 何これ······全然さっきと違う······。 「あ······あ······く、ろがね!」 「なんだ?気持ちイイのか?」 「さ、きと······ちが、う······な、んで······」 「······ふっ」 ビクビクと何度も腰が反り、何度もイきそうになるのに、乳首だけでは刺激が足りず、ソコに手が伸びそうになってしまうのを必死に我慢する。行き場のない両手は、黒鉄の筋肉質な肩を無力にも押し返そうとしていた。 ボロボロと涙や唾液が溢れ、どうにかなりそうだった。 そのうち、黒鉄の顔が胸から離れて僕のモノを見つめた。 「くはっ······男にこんな事されてココ、こんな風にして······お前素質あるんじゃねぇの?」 「はぁ······はぁ······」 「見ろよ、透明な液が我慢できずに溢れてるぜ?もっと出したいよな?我慢するなよ」 「······い、やだ」 「······聞こえ無かったか?扱けって言ったんだよ」 腹の底から凍えるような声なのに、背中にゾクゾクと快感が走る。獣のようなその瞳から目が離せない。 こんな感覚、こんな自分知りたく無かった!くそ······!くそ······! 「黒鉄っ······!」 「扱け」 拒否権はーーない。 僕は消え入りたい思いを噛み締め、嗚咽を漏らしながら自身のモノに右手を当てがった。そしてゆっくり上下する。 「ん······、ゃ······」 「気持ち良いか?」 頭がクラクラし、酒に酔ったような感覚に判断能力が鈍る。 「は······」 「気持ち良いかと聞いた」 待ちに待った快感だ。気持ち良いに決まってる。次第に手を動かすスピードが上がって行き、見られているせいで余計に興奮する。 熱気を放つ。 辺り一面の空気は、その場所は、今までと全く違う意味を持つ場所に成り果ててしまった。 なのに僕は、逆らえない事を理由に手をとめない。もう······だめ。 気持ち······良すぎる。 「白峰」 「くろがね······」 「······!」 いつの間にか完全に我を忘れ、トロンとした表情で黒鉄を見つめた。磁石のようにビタッと視線が合い、お互い動けなくなる。 まるで、恋人が見つめ合うようにーー。 「きもち······いい······よ」 「······っ!」 気持ち良いと口に出してしまえば早いもので、今まで感じたことの無い快感の中、僕は果て、そのまま意識を手放した。

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