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第144話
今日も市販の抑制剤は飲んではいるが、昂ぶりは抑えられない。
冬の薬はそれなりに効力が強いものなのだろう。
冬がズボン越しに俺の腰に股間を押しつける。
そこはすっかり熱くなっていて、俺はゾッとした。
「俺も初めて飲んだけど。結構効くね、これ」
冬が歪な笑みを浮かべる。
「冬、止めろ」
懸命に訴える俺の頬を優しい手つきで冬が撫でる。
「兄さんはさあ、常識とか親の期待とか、そういうのでがんじがらめになっちゃって、自分の本当の気持ちすら分からなくなっているだけなんだよ。だから俺がそれを自覚する手伝いをしてあげる」
熱く湿った吐息を耳元に感じた。
冬がちゅ、ちゅっと首筋に吸いつく。
「結局あの男だって兄さんの実の父親のことを知ったから逃げだしたんでしょ?俺なら全部受けとめてあげられるのに」
「違う。大賀はそんな奴じゃ」
ふいに冬の両手が俺の首に巻きつく。
力を込められて、息が苦しくなる。
俺は絶望を覚えながら冬を凝視した。
冬は目を細めて俺を睨むと、手の力を緩めた。
「げほ、ごほっ」
「俺の腕の中にいるのに、他の男の名前なんか口にしないでよ」
苦しくて大きく息を吸いこむ俺を冬が抱きしめる。
「ごめんね。もう後は気持ちのイイことしかしないから」
冬はそう言いながら、俺のスウェットをずり下げ、ボクサーブリーフの上から屹立を撫でた。
ふふっと冬が笑う。
「硬くなってる」
囁かれ、俺は嫌悪感で鳥肌をたてた。
冬は完璧におかしくなっていた。
薬を使って好きな相手を犯そうなど、相手が兄でなくとも犯罪行為だ。
「止めろ。こんなこと最後までしてしまったら、俺は兄弟としてもお前と一緒にいられない」
ふんっと鼻で冬が笑う。
「だからぁ、最初から言ってるじゃないか。俺は唯希のことを兄だなんて思ってないって」
冬は俺の下着に手をかけると、スウェットと一緒にそれを降ろした。
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