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第3話 格子の呪縛―藍晶
「企業主催のコンペティションの表彰式です。役員会の後にご出席できませんか。ご子息の晴れの日ですよ」
デスクの前に立った男はそういいながら彼に封筒をさしだした。中身はなめらかな手触りの二つ折りのカードだ。クリーム色の紙に金箔の文字が並んでいる。
「天藍が出るのか」
彼は息子の名をいった。
「ええ。学生向けコンペとはいえ、自力で勝ち取ったものです」
「大賞か。よかったな」
「大学の友人との協同制作だそうです」
家業と直接関わりのないこんな領域にいつ息子は首をつっこんだのか。彼はそんなことを思いながら日付と時間を眺めた。
「この日は政府懇談会がある。時間が取れれば……いや、難しいな。紫は」
「奥様は協議会の会合が四件連続するとかで、やはり難しいと」
彼はカードを封筒にもどした。
「そうか。渡来さん、必要なら代わりに出てくれないか」
「かしこまりました」
デスクの前の男は特に表情を変えなかった。彼が当主になるずっと前から一族に仕えているベータの男である。彼と妻が忙しい時に息子のあれこれを頼むのはいつものことで、そして、彼と妻はたいてい忙しかった。
渡来が一礼してその場を去ると、彼は受話器をもちあげ、秘書にいつものコーヒーを頼んだ。
ビルの高層階にある執務室は物音ひとつしない。父親は代々続く古い屋敷に執務室を置くのを好んだが、彼はその慣習を引き継がなかった。
ひとくちに名族の総帥といっても、家によってその役割はさまざまだ。アルファの名族による支配はこの世界の屋台骨だが、何をもって社会に貢献するかは各家で異なる。政治や行政に主体的に関わる家、芸術や文化を支援する家、そして彼の一族のように、特定の領域の開発や経営を得意とする家。
彼が一族の当主としてその責任を負うようになって、何年も経つ。
もっとも彼の意識の中心を占めるのは一族が経営する企業体だけで、その他の事柄はおろそかにされていた。あえて無視しているともいえただろう。以前父の執務室だった場所は現在、彼の妻の仕事部屋となっており、他の名族との調整や社交、慈善事業や親族の世話のような事柄は妻が一手に担っている。妻は軽々とこの役目を果たし、楽しんでもいるようだ。有能な嫁を気に入った父が生前から彼女に任せた仕事でもあり、彼としても異存はなかった。
ノックの音がして、コーヒーが運ばれてきた。彼は銀のクリームポットを慎重に傾ける。コーヒーカップの円のなかにクリームの白い筋がしずむ。ソーサーには銀のスプーンがあるが、彼は手を触れずに成り行きを見守った。黒と白が混ざりあい、かきまわさなくても黒い液体は自然に褐色に変わっていく。
コーヒーをすすりながら彼はぼんやり窓の外を眺める。四角い窓枠に囲まれて、箱が積みあげられたような建物の列がならんでいる。見下ろした道路は格子状だ。連想ゲームのように彼の頭に碁盤の目がうかぶ。白い石を持った彼は十歳かそこらで、どこへ石を置くべきか考えこんでいる。黒い石を持つ相手は彼より年上だが、それでもまだ少年にすぎない。
「藍晶」
「待ってください、兄さん」
少年の頃から彼は兄と時々碁を打った。直接競争しなければ兄は穏やかで優しい男だったが、勝負の場になると年少の弟にも容赦しなかった。兄はいつでも、彼より上の場所にいた。
どうして急に兄のことを思い出したのだろう、と彼は思った。ずっと考えなかったはずなのに。そしてすぐに思いなおした。そんなことはない。兄についてはいつも彼の頭のどこかにくすぶっている。
これは名族に生まれたアルファの兄弟特有の、複雑な競争意識のせいだろうか。
数年かけて彼は囲碁の腕をあげたが、兄には一度も勝てなかった。
数年遅れて生まれたのだから負けるのは当たり前だと考えて、彼が兄に追いつこうと努力したのは囲碁に限らない。しかし学校の成績であれ何であれ、兄はいつも彼のずっと先を行った。
兄に勝てない悔しさを感じながらも、彼は兄が自分に手加減しないことに誇りを感じてもいた。兄は他者に思いやりのないアルファではなかったからだ。彼に対して手加減しないのは、つまり彼のことを対等なアルファだと認めているからだ。
逆に、もし兄に彼より劣った部分があったなら、彼は激しい苛立ちや怒りを感じたかもしれなかった。兄はいずれ父に代わり、一族を率いる役割を負う。少年期の彼にとって、兄は絶対の存在でなければならなかった。父が絶対の存在であるのと同じように。
兄が彼を失望させることはなかったし、父や他のアルファにはない静かで穏やかな性格も、彼にとって兄を特別な存在にしていた。父の執拗で激しい性格は時たま彼を悩ませたが、兄の冷静な対応によって、こうあるべきという模範が得られた。
彼にとって兄は追い越せないライバルであり、追い越してはならないライバルだった。
その兄が失踪してから、どれだけの時間が経ったことか。
彼はとうに兄がいなくなった年齢を通りすぎた。
失踪宣告も何年も前に出され、今の彼は一族の当主だ。兄がいるはずだった場所に彼はいる。それなのに彼はまだ、兄がこの世界からいなくなったと信じることができないのだ。
*
屋敷は父が当主であったころと変わらず、いかめしく古めかしい。妻はまだ帰宅しておらず、料理人は彼一人の食事を用意した。
一族の本宅の雰囲気は父が生きていた頃と変わらないが、敷地全体を見渡せば、彼が青年のときとはずいぶん変わった。彼が妻を迎えたあと父は庭の一部をつぶして別宅を建てさせたし、兄が失踪してからは離れを納戸に作り変えてしまった。その父もずっと前に亡くなった。
妻と暮らす別宅の外観や内装は彼にまかされたが、彼はどうしても興味を持てず、身ごもった妻の好きなようにさせた。完成した別宅は古く重苦しい屋敷とはうってかわって華やいだ雰囲気の洋館となり、妻は満足したようだ。
妻は父が選んで一族に迎えた才色兼備のオメガだった。特に良い家柄でもなく、才能と容色で選ばれた自尊心の高いオメガ女性。
彼は妻を進んで愛したわけではなかったが、つがい同士が必然的に抱く愛着を持たないわけでもなかった。妻の方も同じように感じているのではないかと彼は思う。息子が成長したいまでも妻と彼は時たま触れあい、絆を維持している。
それでも彼は兄のように、つがいを失って悲嘆にくれたり、後を追うことはないだろうし、妻だってそうだろう。妻と自分は一族を支える共同体だが、魂の片割れではない。
しかし兄にとって、配偶者はそんな存在ではなかったらしい。
「兄のオメガ」のことを彼は子供のころから知っていたが、特に仲良くした記憶も、親しく話した記憶もないまま、いつのまにか兄の婚約者となっていた。兄が意図してそうしたのだと彼が気づいたのはずっと後のことだ。
兄は自分を潜在的な競争相手だと考えて、将来のつがいに近寄らせないよう注意していたのだと理解したとき、彼は誇らしい気持ちになった。そんなことをしなくとも彼は「兄のオメガ」に興味を持たなかっただろうに。
今でも彼には、兄があれほど強くあのオメガを愛した理由がわからない。
名族のあいだでは、アルファの兄弟のあいだでオメガが取り合いになるという噂はたまに耳にする。兄弟のあいだを何度も行き来するオメガがいる、という話すらある。
しかし彼は「兄のオメガ」に性的魅力を感じたことは一度もなかった。もともと彼の好みは女性にあって、男性のオメガは対象外だと思っていたせいもある。とはいえ男性のオメガを抱いた経験も一応あった。まだ妻を迎えていないころの話だ。
あれは一度きりで、しかも、結婚する直前の兄が離れに籠っていた時のことだった。彼は十九歳だった。「兄のオメガ」も彼と同じ齢だった。
*
その日離れで何が起きているのか、彼にはうすうす見当がついていた。屋敷には奇妙な雰囲気が漂っていた。父までなぜかそわそわして、彼は自分でも不可解な興奮をおぼえた。
兄のオメガ、葉月はずっと離れにいて、彼は何日も顔すら見ていなかった。だから葉月がヒートだったとしても、あてられたはずもない。それなのに耳の底に葉月の嬌声が聞こえてくるような気がして――実際はそんなことはなかったのだが――彼はいてもたってもいられなくなって屋敷を出たのだ。
街へ出てつきあってくれる友人を探したものの、大学で知りあった友人もこの日に限って誰もつかまらなかった。結局彼は、以前一度だけ行ったことのある〈ハウス〉へひとりで入った。
当時の〈ハウス〉は今のようにオメガの保護を全面的に打ち出した娯楽施設ではなかった。一流から場末まで程度の差はあっても、アルファが一時の欲望を解消するために売春目的のオメガを拾う場所だ。
彼が訪れたハウスは育ちのいい学生が冷やかし半分に入って遊べる程度のランクだった。つまり本当のプロフェッショナルはいない店だ。音楽と話し声の喧騒に満たされ、酒とオメガの香りが漂っている。
ろくにセックスの経験もなく、まして恋愛の経験は皆無な彼は、身に着けているものだけは周囲から飛びぬけていた。すぐに見透かされそうな虚勢を張りながらダンスフロアをあてもなく漂うことになったのはこのせいだろうか。
フロアは広く、女性のオメガもいれば男性のオメガもいた。彼が目移りするのは当然女性のオメガだったから、音楽と照明が切り替わった時、なぜその男に目が行ったのか、後になってもわからなかった。
とにかく彼はその男を見たのだ。
そのオメガは軽く足を組んだ姿勢で壁にもたれ、両手を垂れて手持ち無沙汰に立っていた。顔立ちは女性的というわけでもなく、短髪の下のやや張った顎もうすい唇もひどく鋭い印象だ。切れ長の目がちらりと彼をみて流れ、その一瞬だけでさらに彼は注意をひかれた。
男は彼よりも年上だろう。みるからに場慣れして、退屈しているようだった。飲み物を持っているわけでもなく、といって誰かを待っているようでもない。足を組みかえると形のよい尻が動き、とたんに彼の内側でぞくりと波が立った。
「どうした?」
男がいった。あたりがうるさいせいか、叫ぶような調子だった。
「あ……いや」
彼は口ごもったが、どっちつかずの物言いはみっともないとすぐに気づいて、叫びかえした。
「ひとりなのか?」
「ああ、まあね」
男はにやっと笑った。
「あんたを待ってた」
「え?」
「あんたみたいなのをって意味だよ」
男は手を振った。誘っているとも追い払っているともつかない手つきだったが、彼はふらふらと男の方へ歩いた。
「どう? そっちは俺みたいなの、探していたんだろう?」
「え? いや、その」
「ちがった? 俺は趣味じゃない?」
男はへらへらと笑っている。困惑した彼の視線をたどるように指をふり、ダンスフロアをさす。
「ひょっとしてあの子みたいなのが好き? 残念だなあ、あんた毛並みがよさそうなのに」
猫の品定めでもするようないいまわしに彼は呆れたが、男は彼の肘にするりと手を差しこみ、バーの方へ引っ張る。あからさまな誘惑にその瞬間の彼は乗るつもりはなかった。それなのについていったのは、小柄な男に引っ張られているのが恥ずかしかったからだ。
バーで飲み物を買い――男は当然のように彼におごらせた――ソファで隣りあって何となく話をはじめると、相手は意外に聞き上手だった。彼はいつのまにか、今夜なぜハウスに来たのかにはじまり、自分と自分の周囲のことや、兄について熱心に語っていた。
男は薄い唇に慰めるような微笑をうかべながら彼の話を聞いていたが、途中でいきなりこういった。
「あんた、お兄さんがほんとに好きなんだな」
彼はまじまじと男を見返した。
「もちろん……家族だから」
「今日ここにいるの、お兄さんのオメガに嫉妬しているんだろ?」
「まさか」
彼はあわてて首を振った。
「そんなのじゃない」
「なんで? いくらお兄さんが好きでも、アルファの兄弟同士じゃ何もできないぜ。そのお兄さんのオメガ、とっちゃいなよ」
「まさか、ありえない。それに僕は……」
男は奇妙に優しい目つきで彼をみた。
「男相手にやったことないんだろう? 練習するか?」
慰めるように彼の肩へ男が頭をもたれたとき、そのうなじから漂う匂いに彼の下半身がみなぎった。男はふっと笑った。
「いけるじゃないか」
〈ハウス〉の二階はベッドひとつで埋まってしまうような小部屋で埋められている。オメガの男に腕をとられて歩くうちに、彼はすっかりその気になっていた。
シーツには漂白剤めいた匂いがついていたが、横たわった男が背中をつけたとたんに消えうせた。笑いながらシャツをまくり上げた男の胸は痩せて、肩も頼りないほど薄い。彼は一瞬不安に駆られたが、骨ばった手が触れたとたん、衝動にかられて自分から男の肌をまさぐっていた。
「こら、急ぐなって……」
ん、と息を飲みこんだ気配がする。かまわず彼は男のうえにのしかかり、はだけた喉から胸へと舌を這わせた。小さな両の乳首に交互に舌を這わせ、立ち上がってきたところを転がすと、まだ服を着たままの男の股間がもりあがる。熱くはりつめたおのれをこすりつけるようにしながら、彼はいったん唇を離し、ずらして男の首筋に押しあてた。
匂い――欲望をそそる匂いに全身が震える。やわらかな耳たぶをしゃぶったとたん、男の唇から甘ったるい声が漏れた。
「あ、あんっ――待って……自分で脱ぐ」
男の声はかすれていた。あわてた指が残ったボタンを外し、続けて彼の服のボタンも外し、ファスナーを下げて下着に手をかける。
手慣れた様子で自分の下肢をあらわにされて彼はとまどったが、色っぽく上気した目つきになった男は気にもしていない。勃起した彼自身を舐めるようにみつめながら自分の服を脱ぎ、その様子に彼は唾をのみこんだ。
衝動的に手をのばし、すべてあらわになった胸からへそにかけてを指でたどる。男がぴくっと体をふるわせる。男のペニスも彼と同様に濡れていて、お互いに伸ばした手でたがいのそれをまさぐったが、男は彼の手をさらにうしろに導こうとする。
彼は男の尻をつかんだ。そのとたんに鼻をかすめたほのかに甘い匂いは、発情間際のオメガの香りだった。
「準備はできてる」
男はそういってうつぶせになり、自分の手で器用に尻のあいだを押し開いた。とたんに彼は正気づき、焦ってあたりをみまわした。幸い手の届くところに目当てのパッケージがあった。歯でひきあけ、どうにかもたつかずにゴムを装着する。男はねだるように背中をそらし、腰を揺らして彼を待っていた。蕾がひくひくと収縮し、彼の怒張をなんなく呑みこんだ。
「あんっ、あ、ん、」
男はシーツに顔を押しつけたまま甘い声をもらしている。
「いい、そう――あ、あん、そこ、あ、あ、あ――」
絡みつき、しめつけられる快感に自身の律動が重なり、無我夢中で腰を振るうちに彼方からあの瞬間がやってきた。精を吐きだした彼はぼんやりと遠い感覚をおぼえながらシーツの上に横たわる。男の下肢は湿って冷たい。
肩に腕をまわして髪を撫でると、眼尻の細かい皺がみえた。思ったよりも年がいっているのだろうか。
「よかったか?」
男がいった。
「ああ、うん……」
「俺もよかった。初めてじゃないよな?」
「え、もちろん」
彼はあわてて答えたが、男は一瞬のためらいを見逃さなかった。
「え? まさか――あ、そうか。男を抱くのが初めてなのか」
今度こそ彼はうなずいた。男の口元がにやにやと感情豊かに動く。
「どうせオメガだからな、男だってたいして変わらないさ。よかったんだろ? いくらくれる?」
彼の胸は氷をさしこまれたように一瞬で冷えた。
とはいえ、頭の片隅で納得している自分もいた。ここは〈ハウス〉なのだ。目を見かわして体をつなげても、心がつなげるわけではない。まして相手はどこの誰ともわからないオメガだ。
「いくら出せばいい?」
男の眉が面白い言葉を聞いたかのようにあがり、値段をいった。彼は服を探し、適当に金をつかみだした。いわれた金額よりずっと多く、男はぎょっとした顔になった。
「おいおい、いいのか?」
「ああ」
彼はかまわず札を男に押しつけた。
「やるよ」
「あんたはやっぱり毛並みがいい」
彼と同様、男もすでに起き上がって服を着ていた。うなじに古い傷があるのに気づいて彼はそっと目をそらしたが、男はそんな仕草などお見通しだった。あっさりといった。
「俺の男の噛み痕さ。役立たずだから食い扶持は自分で稼いでる」
「こんなやり方で……?」
「俺はオメガなんだ」
男はさらりといった。
「無学で貧乏、持ち物は体だけ、それでも年に何回かは抱いてくれる男がいないと面倒だ。たまには河岸を変えるのも悪くない。あんたのようなのを拾える。若くてものを知らないぴちぴちのアルファ。素敵だ」
侮辱されているのか褒められているのか彼には判断がつかなかった。黙っていると男は困ったような顔つきになり、いいわけをするように付け加えた。
「今日はもう帰って眠れる。ありがとうな」
猫のようにするりと立ち上がった男がドアを押しあけて出ていくまで、ほんの数秒。彼はひとりで小さな部屋に取り残されている。
ドアの隙間から新鮮な空気が入りこんだおかげで、中にこもったセックスの匂いを彼は急に意識した。どうして自分は今ここにいるのだったろう、そう自分に問いかけて、とたんに彼は思い出す。
兄が今夜、離れで葉月を抱いているからだ。兄のオメガを。
*
十九歳のあの夜はいったい、何だったのだろう。
たった一度だけ体を重ねたあのオメガに彼は二度と会わなかった。彼が男を抱いたのもあの時だけだ。
あの日、深夜に戻った屋敷は寝静まっていて、離れからは何の物音もしなかった。まもなく兄は結婚したが、結婚直前もそのあとも、兄と兄のオメガをめぐってたくさんの厄介事がもちあがった。数年後、兄のオメガ――葉月は死に、そのあと兄自身が姿を消した。
それから長い年月が経って、いま彼は一族の当主としてこの部屋にいる。
あれからたしかに時間は流れた。
それなのに彼は時たま、自分が見えない格子に囲まれて時を止められたのではないか、と思うことがある。彼の息子は成長し、彼も妻も年をとったのに、ある日ひょっこり兄が、昔の姿のままで帰ってくるのではないか。そして身代わりでしかない自分の前に静かな表情で立つのではないか。
カップの底に残ったコーヒーはすっかり冷たくなっている。藤野谷藍晶は高い窓から矩形の街を見下ろしている。
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