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運動会日和

 ヾ( ̄ー ̄ゞ)))(  ̄ー ̄)尸フレーフレー  ファイトーー!( °ロ°)乂(°ロ° )イッパーーツ!!  今年の運動会はオンラインのヴァーチャル開催が主流だ。  産学協同で開発した小中学生用スポーツ教育プログラムと、とあるゲームメーカーのフィットネスゲームデバイスを組み合わせて、全員自宅にいながらにしてヴァーチャルに運動会へ参加し、また遠方に住んでいる家族も応援できるという、一昔前にはおよそ考えられなかったことが実現したのである。  これも未だに猛威をふるっている例のウイルスのせいだ。  今回、運動用のVRデバイスはメーカーから各家庭に無償レンタルされることになった。いろいろあったがこの企画の立案には俺の会社も噛んでいる。各生徒の家族にはパスワードと限定公開URLが送られて、VRデバイスがなくても観戦と応援ができる仕組みだ。おかげで子供のいない独身サラリーマンの俺も、今日は甥っ子の運動会を自宅マンションから応援している―― 「独身だと?」  俺のとなりで魔王がいった。しまった、俺はひとりごとをいってしまったのか。魔王は地獄耳の持ち主である。なにせ地獄の魔王だから。 「マキは俺の嫁だ」 「いやでも、たしかに、地獄じゃそうだとしてもだ」  俺はぼそぼそと返事をする。たしかに俺は寝ているあいだは地獄の魔王の嫁になっている。嫁っていう表現はいまどき問題あるような気もするが、つまりその、地獄の鬼どもに魔王のパートナーとして扱われているし、魔王とはその……やることをやっている。  だいたい魔王はその、凄いイケメンで、面と向かっていうとつけあがるから口には出さないことにしているが、俺は魔王の顔をみるとうっとりしてしまうのだ――今のこれ、口に出してないよな? 「だってほら、現世は同性婚できないし、会社じゃ俺は独身だってことになってるし、おまえは会社のトップなんだから部下の俺とどうこうなってるのは道徳的に問題あるし」 「まったくこれだから人間はめんどうくさい……魔王の俺に道徳だと? それにしても同性婚法案についてはいよいよ地獄から圧力をかけるべきか」  魔王がぶつくさ呟く言葉を俺はきかないふりをした。ちなみに魔王は持碁隈央というふざけた名前を名乗り、俺の会社のCEOとして現世のあちこちに顔を出している。とはいえ本業は地獄の王だから、現世の会社にいるのは魔王そっくりに化けた鬼で、地獄から指示を受けている。本物の魔王が現世へやってくるのは俺がマンションでだらだらしている休日の真昼間である。 「それはいいから、魔王も現世にいる以上は応援しろ」 「それもそうだな」  魔王は甥っ子が懸命に走っているパソコン画面に向かって手を振った。パッと星と花が散り、ワーッという歓声がきこえた。いったい何がどうなったのか、俺は目をぱちくりさせた。いまやヴァーチャル運動会の会場には花見会場のごとく花びらが舞い、応援の声も盛り上がっている。運営の演出だと思ったようだ。こっちからは絵文字と応援スタンプしか送れないはずなのに、何をやった? 「うん。これなら景気がいい」  魔王は満足げにそういい、俺の腰に手を回した。いい忘れていたが、俺と魔王はソファに並んで座っていて、俺たちはその……ベッドから抜け出したばかりで、ふたりともあまり服を着ていない。こんな格好でも運動会を観戦できるのがオンラインのいいところ、といえばそうなのだが……。 「地上の運動会も悪くないな。地獄でもヘルリンピックがそろそろだ。楽しみだろう、マキ」 「ヘ、ヘルリンピック?」  威厳のない返事になったのは魔王の手がこう、絶妙な感じで絶妙な場所を揉みはじめたせいだ。 「って――なんだ?」 「四年に一度開催する全地獄スポーツ大会だ。酷暑競技部門と酷寒競技部門がある。出場するのは鬼だけだが、亡者は鬼券が買える。自分が賭けた鬼が勝つと全地獄アトラクション予約不要券が賞品に貰えるから、もりあがるぞ」 「それじゃスポ――むむむ」  スポーツ大会じゃなくて競鬼大会じゃないか。俺はそう返そうとしたのに、魔王の口が迫ってきて失敗した。困ったことに魔王はキスがうまいし、キスしながら尻とか乳首とかあそことかこことかを擦ったり弄ったりしはじめるので、俺は動けなくなる。  ああもう、すぐ前のパソコン画面では子供たちが運動会をやっているのに、なんてことだ!  俺はやっと魔王の唇をもぎはなした。 「だめだ、魔王、さっきもやったじゃないか」  魔王は俺の耳に息を吹きかける。 「今日は休日だぞ、マキ」 「こんなところで……不穏当だ! 不健全だ!」 「問題ない。カメラはオフだ」  魔王がささやいた。困ったことに、お色気本気モードになった魔王に抵抗するのはとても難しい。 「そんな問題じゃない、応援は……真面目にしないと……あっ、そこ、そこ弄っちゃ……」 「ん……そう、ここがいいんだろう?」 「あん、だからそこはや……ああぁ…入っちゃ――あ――」  俺が涙目になっても魔王は攻撃をゆるめない。 「今日は運動会だぞ、マキ。俺とマキもがんばらないと」 「だから何を……ナニをがんばると……」  俺は弱々しくいい返したが、先をつづけることはできなかった。つながった魔王の腰が動き始めたからだ。  今もパソコン画面から声援がきこえる。  ヾ( ̄ー ̄ゞ)))(  ̄ー ̄)尸フレーフレー  ファイトーー!( °ロ°)乂(°ロ° )イッパーーツ!!

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