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第3話
一真とよくつるんで遊んでいるのは、優太、誠。みんな僕と同じ、小3、8歳。
すぐに僕も仲間に入れてくれた。
「望ー、遊ぼうー!」
祖父と暮らす僕の家に蝉をとる網や籠を持って、一真たちがやってきた。
「なんや、蝉とりか?」
「うん!でっかいカブトムシも!」
優太が祖父に満面の笑みで返した。
「望も行ってきー、ほら、麦わらも忘れんと」
祖父が僕に麦わら帽子を被せてくれた。
4人で自転車を漕ぎ、途中で自転車を置いて登った先。着いたのは木々の覆い茂る、山間だった。
みんなが競い合うように網を振りかざす。
蝉取りもカブトムシも取る遊びを知らない僕はただ、膝を抱えて座り、そんなみんなを眺めていた。
「なんや、望はこういう遊び知らんの?」
一真が歩み寄ってきた。
小麦色の肌、男らしさとあどけなさが調和する眩しい笑顔。
「俺の網、貸したるから、望もやってみー?」
一真の網を借り、僕は立ち上がる。
一真は慣れない僕についててくれた。
「そーっと、そーっとやで?」
耳元で一真が囁き、僕は何故かドキドキしながらゆっくり網を木に止まる蝉に被せようと慎重に...。
「あー!逃げられた」
一真が残念そうに叫ぶ。
「...金魚すくいと同じだね、僕は逃げられてばかり」
「金魚すくいとは違うよ。俺たちだって難しいもん。だから、夢中になる」
一真を含め、みんな蝉を取れた。
カブトムシはみんな取れなかったらしい。
籠の中の蝉の数をみんな数え合うと、一真がダントツだった。
「あー!一真に負けたあ」
一真は立ち上がると籠を開けて、蝉たちを逃がした。
次々と蝉が青空に飛んでいく。
「せっかく取れたのに逃がすの?」
僕はびっくりして空を見上げている一真に尋ねた。
「蝉はな、夏のほんのひとときしか生きれないんやって。そのほんのひとときを、俺ら人間に飼われるの可哀想やん?家族や友達、恋人とかと過ごして欲しい」
青空を見上げたままの一真の優しい穏やかな顔に僕は釘付けになった。
一真が僕の初恋になるとは、この頃には気づいてはいなかった。
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