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第2話

小3のその日。 「綺麗やなあ、なあ、望」 祖父がかき氷を買ってくれ、境内で夜空を彩る大輪の花火が次々と打ち上げられるのは何処か儚げに思えた。 しばらくしたら美しい花火は粉々になり、また次の花火が打ち上げられ、最終的には花火大会の終了を告げる、淡々とした女性のアナウンスが流れると、人だかりは散り散りになり、去っていく。 「しかし、なんだ。望は金魚すくいの名人やったとはなあ。水槽はないから、しばらくバケツを用意したるからな」 僕の頭をクシャッとし、祖父が微笑んだ。 「あれ?さっきの」 顔を上げると、さっき、金魚すくいで出くわした少年、一真が僕を見かけ、話しかけてきた。 「なんや、望、もう友達が出来たんか。一真、うちの孫の望や。訳あって、東京から越してきてな、良かったら仲良くしてやってくれな」 祖父は一真を知っているようだ。 田舎でマンモス校だった僕の通っていた都会の学校とは違い、分校で生徒数も少なく、近所付き合いもあるらしいから当然といえば当然なのかもしれない。 「そうなん?ようわからんけど、よろしくな、望」 友達、2人と一緒だった一真が眩しい笑顔を見せ、ふと、僕が手にしている金魚が入ったビニール袋に視線を落とした。 「水槽あんの?無いねやったら、使ってないのあるからやるよ。近々、望の家、持っていったるわ」 そうして、次の日には僕の家に水槽を抱えた一真が顔を出した。 金魚の餌まで持って来てくれた。 水槽の中で自由きままに泳ぐ金魚に僕は胸を高め、凝視した。 「餌もやりすぎは注意やで?」 うん、と僕は水槽の中の金魚に目を奪われながら、頷いた。 そうして、祖父はバスも殆どない田舎の為に自転車を購入してくれ、時折、一真も金魚の様子を見に来た。 友達を連れた一真に誘われ、教わりながらも、今まで知らなかった、蝉やカブトムシを取ったりし、つまらなかったはずの夏休みを共に過ごすようになった。 都会では知る由もない夏休みだった。

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