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4 文化祭②
翌日。文化祭二日目も滞りなく進行し、後夜祭も大盛況のうちに終了した。俺の思った通り、悠月は打ち上げで帰りが遅くなると言うので、俺も久しぶりに夜遊びをしようと街へ繰り出した。といっても近所のスナックくらいしか行くところはなく、二時間ほどで帰宅した。
「ただいまぁ」
玄関を開けると、ガタガタッと物が倒れるような慌ただしい音が洗面所から聞こえた。部屋も廊下も灯りがついている。
「せ、先生?」
洗面所のドアの向こうから声がする。
「成瀬? ずいぶん健全な打ち上げだったんだな」
「あ、開けるな!」
そう言われてももう遅い。手を洗うため洗面所に入った。ワイシャツに靴下だけという珍妙な恰好をした悠月が、真っ赤な顔で座り込んでいる。よく見ると、シャツの裾を引っ張って股間を隠している。
「……何やってんの」
「……何でもない」
「なんで脱いでんの。そんなとこ座って、ケツ冷たくない?」
「ふ、風呂、入ろうとして……だから出てけよ」
どうも落ち着きのない様子だ。洗面台の前にはなぜか風呂椅子が転がっている。踏み台にしていたのか? 俺が帰ってきたので、驚いて転がり落ちたとか? でも何のために。
「風呂入るなら入れば。裸くらい見慣れてるし」
「あんたが出てく方が先だ」
「ていうかなんか隠してるよな? この手、何」
悠月の前にしゃがみ、シャツの裾を引っ張る両手に触れた。悠月は一層固く手を握りしめてシャツを引っ張る。そんなにしたら生地が延びるし変な皺がついてしまう。
「何でもない。見るな」
「そう言われると気になる」
シャツを掴む手は頑として放そうとしないので、俺は代わりに露わになった足を撫で始めた。太腿から膝、ふくらはぎを辿り、紺色の靴下に指を突っ込んでくるぶしを撫で、靴下を踵まで脱がしてからまたふくらはぎ、膝、内腿へと戻ってくる。
悠月は顔を背けてくすぐったいのを堪える。逃げようにも逃げられない、動けない、立ち上がれないという様相である。
「やっぱ寒いんじゃねぇ? 冷えてるし、鳥肌立ってるよ」
「あ、あんたが触るから……」
「キスしていい?」
返事を待たずに口づけた。始めは唇を合わせるだけ、次に舌を出して唇を舐め、相手の口が薄く開いたところで優しく舌を侵入させる。そのうち脱力して口が大きく開く。シャツを掴んでいた手からも力が抜ける。俺はすかさずその両手を捕まえてシャツから引き剥がした。事態に気づいた悠月は暴れようとするがもう遅い。
「やっ……見んな……」
思わず、言葉さえ失って凝視した。こいつが必死になって隠そうとしていたのは下着だ。しかもただの下着ではない。女物の、つるつるてかてかした生地の、面積の狭いパンツだ。パンツというか、パンティ。最近だとショーツというのかな。色は薄ピンクで、ウエストには小さなリボン、全体的にレースがあしらわれている。
こんなにかわいいパンツなのに、股間に不自然な膨らみがある。竿も玉もぎゅうぎゅうに押し込められ、容量オーバーの小さな下着はぱっつんぱっつんだ。これはこれで倒錯的で良い。興奮する。意外にはみ出さずに履けるんだなと、妙なところで感心する。
悠月はかわいそうなくらい真っ赤になって羞恥に震えている。顔も首も、シャツの襟から覗く胸元まで真っ赤だ。ぽちっと乳首が浮いているが、自分では気づいていないのか隠そうともしない。
「も、もうや……はなせよぉ……」
「お前、これ、どうしたの」
俺はようやく喋ることを思い出したが、悠月は口を噤んで俯く。
「今日一日ずっとこれだったの」
「ち、ちがう……」
「じゃあ誰かに履かされた?」
「そんなわけない!」
「じゃあ……」
自分で履いたの? と尋ねると、悠月はもじもじと頷いた。
「き、きもいって思ってんだろ。幻滅しただろ」
「まさかぁ。キモいどころかむしろ……」
股間の膨らみを、性器の形に沿って撫でる。触っているうち、小さなショーツに詰め込まれた性器の輪郭がくっきりと浮き出てくる。爪で先端を引っ掻くとピクリと震えて頭をもたげる。悠月の腰がわずかに動く。
「んっ……」
「勃起するとはみ出しちゃうな」
「や……さわんな」
「無理だろ。ていうか、気持ちいいんじゃねぇの?」
悠月はううんと首を振ってべったりと抱きついてくる。やめてほしいのかもっとほしいのか、どっちなんだ。ショーツから零れた性器は我慢汁で濡れている。鈴口に触れるととろりとした粘液が糸を引く。
「俺が昨日言ったこと気にしてた? 俺のために、こんなにかわいいフリフリのパンツ履いてくれたの?」
「ち、ちが」
「こんなのどこで買ったんだよ。駅ビルの下着屋とか? 男一人で入るのは勇気がいるぜ」
「こ、コンビニ……」
「コンビニでぇ? 最近はこういうのも売ってんだな。お前、学ラン着てこれ買ったのかよ。恥ずかしくなかった?」
「ま、ますく、してたから……ぁっ、へいき……んっ」
ショーツに手を突っ込んで後ろの孔を解す。最初に少し唾をつけて、後はこいつ自身の愛液を塗り付けて慣らしていく。悠月はもう抵抗する素振りもなく、指を入れやすいように腰を浮かしてくれる。抱きつかれて、悠月の甘い声が俺の耳たぶを撫でていく。
「せんせぇ、せんせぇっ……」
「中気持ちい?」
「きもち……も、ほしい……」
「何がほしいって?」
「せ、せんせぇのおちんぽ、ぶちこんで」
これまでに感じたことのない衝動が全身を駆ける。悠月を抱いたのはまだ片手で数えられる程度だが、思い返せば今までに抱いてきた女とは比べ物にならないくらい、俺は毎回興奮していなかったか。今まで抱いてきたどんな女にも抱かなかった高揚感、ほとばしる熱情、胸の高鳴りを、悠月は毎回俺に与えてくれる。
この場でめちゃくちゃに抱いてやりたかったが、冷たくて硬い洗面所の床の上でするわけにもいかない。お互いに膝や腰を痛めるし、下手すりゃ風邪を引く。俺は悠月の背中と膝裏に手を回して横向きに抱き上げた。所謂お姫様抱っこである。悠月は少しバランスを崩し、不安そうに俺の首に腕を回してしがみつく。
「部屋行こう。ここじゃアレだし」
「せんせぇ……」
悠月は待ち切れないと言わんばかりに俺の耳を舐めたり頬を舐めたり、最終的には唇を舐めたりする。
「やめろよ、勃つだろ」
悠月を布団に寝かせ、俺は服を脱ぐ。今日は訳あってジャージを着ていたが、上も下もTシャツも下着まで全部脱いだ。片手で胸を愛撫してやりつつ、引き出しから手探りでコンドームを取り出す。封を噛み切って手早く装着し、悠月の足をM字に開かせる。
「あ、ま、まって」
「正常位、嫌なんだっけ」
「ちが……ぱ、ぱんつ、ぬがないと」
悠月は自分で脱ごうとしてショーツに指を掛けるが、俺はそれをいなす。股間部分の布地をずらして後孔を露出させると、悠月は自分が何をされるのかを理解したようだった。怯えたように身を竦める。
「……このまま?」
「せっかくかわいいから、脱いだらもったいないと思って」
「ひっ……」
悠月は腰を引いて嫌々とかぶりを振るが、下腹部を押し当てれば息を詰めて迎え入れてくれる。すんなりと、奥の突き当たりまで挿ることができた。
「ぁ……や……」
「大丈夫、かわいいよ」
「……も、ばか……」
「お前こそバカだろ。こんなもん履いて、俺を萌え殺す気か?」
「もえ……?」
「そーいう天然ぽい顔もやめろよ、もう……」
わざわざ布団まで運んできたわけだから、遠慮せずめちゃくちゃに抱こう。密着し、腰を回して奥をぐりぐりと圧迫する。肉壁がうねって吸い付いてくるのが堪らず、溜め息が漏れた。
「ひぁ、んっ……せんせぇ……」
悠月は控えめな嬌声を漏らして俺の肩にぎゅっとしがみつく。悠月も腰を回して俺のものを自身のいいところへと誘なおうとする。
「んん……やっ、やっぱり、ぱんつ、」
「脱ぎたいの?」
「ぬ、ぬぎたい……ぬがして、せんせぇ……」
上体を起こして見てみる。悠月の男の象徴はショーツの中で窮屈そうにしている。さっきまでははみ出ていたのに、いつの間にか布の中に戻ってしまったらしい。亀頭と擦れたであろう箇所がじんわりと湿っている。布越しに裏筋をなぞると、悠月の腰がビクッと大袈裟に跳ねる。
「やっ、さわっちゃ……」
「悪ぃ。やっぱ履いたまましてぇ」
しかしこのままではかわいそうなので、性器をショーツの外へ出してやる。足を通す輪っかの部分を性器の付け根に引っ掛けてやれば、これでもう窮屈な思いをすることはないだろう。布が落ちてきて挿入の邪魔になることもない。
「んや……も、ぬぎたい、あつい」
下着は諦めたのか、悠月はシャツのボタンに手を掛ける。しかし俺はそうはさせまいと、服の上から胸の突起をかりかり引っ掻いてやる。すると悠月の手は止まって、シャツの裾をきゅっと握りしめるだけになる。
「ぁっ……ちくび、や」
「でも触ってほしかったろ? ずうっと前から勃ってたぞ」
「ちがっ、だって、むねなんか……んっ……」
ここを弄ると大体毎回こういう反応をする。戸惑うような、でも本気で嫌がってはいない。息を荒げ、自ら胸を反らして乳首を押し付けてくる。
白いワイシャツを着たまま、女物のパンツも履いたまま、紺の靴下も踵に引っ掛かって脱げかけのまま。日常、特に学校生活からの延長線上に今のこの倒錯的な空間があるのだと実感して、妙に興奮した。
「ねぇ、洗面所でこそこそ何やってたの」
「な、なんでも……」
「お風呂の椅子踏み台にして、鏡見てた? これ、ちゃんと履けてるかどうか」
ウエストのゴムを摘まんで引っ張る。レースの手触りがざらざらする。悠月は悔しそうに眉を寄せ、唇を引き結ぶ。
体勢を変え、足が交差するように挿入する。悠月の右脚を押さえ込み、左脚を持ち上げて開かせ、ぐっと奥まで腰を進めて密着させる。体を起こしたので、悠月の様子がよく見える。すっかり上気した顔、尖った乳首、滑らかな太腿、濡れた接合部、俺のものが出たり入ったりする様までもがよく見える。
「……だ、って、あんたが……」
悠月が息も絶え絶えに口を開いたので、俺は少し抽送を緩めた。
「きのう、へんなこというから……」
「かわいいパンツがどうのって?」
「がっかり、してたから……やっぱり、こういうほうが、いいのかなって……でもおれはおれだし、女じゃないし……」
こいつ、やはり大胆に見えて繊細だ。俺は何も女物の下着が好きなのではない。そんな物好きではない。あくまでもメインはこいつ自身なのに。
「細かいこと気にして、バカだねぇ」
「ばっ……だ、でも、もともとは……」
「そりゃ元は女が好きだったし、ガキも男も興味なかったけどさぁ……でもお前はなんか特別っていうか。だってすっごくかわいいし」
きゅん、と陰道が締まる。わかりやすい体だ。俺は緩めていた律動を再度速める。
「そのまんまで十分かわいいから安心しろよ」
「かっ、かわいいとか、いうな、……っ」
「かわいいよ、悠月。こういう下着もいいけど、いつものやつでも全然かわいいし興奮できっから、だからあんま心配すんなよ」
奥をぐりぐりするだけでなく、直線的にピストンする。カリ首を前立腺に引っ掛けるようにして擦り上げる。悠月の抑えられない嬌声といやらしい水音とが響く。
「あんっ、も、やっ……あぁっ、せんせ、んっ、せんせぇっ……」
そろそろ天井が見えてきた。絶頂を免れない。俺が何度も突き上げるのに合わせ、悠月も腰をくねらせる。片手はシーツを掴み、もう片方の手を懸命に伸ばして俺の手を掴もうとする。その仕草が健気で堪らない。俺も手を延ばして悠月の手を絡め取った。五本の指を交互に絡ませて握り、そのまますぐに達した。
翌日は休日なので夜更かしも可能だったが、一回で切り上げて風呂に入った。俺が風呂を上がると先に出ていた悠月が髪も乾かさずにゲームで遊んでいたので、俺もドライヤーの代わりにコントローラーを持った。悠月が何度もしつこく勝負を挑んでくるので、せっかく一回で切り上げたのに結局夜更かしをすることになった。
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