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よく煮詰めたジャムは、一口で(下)

「やべーーー。寝落ちそう。」 「えー、だめまだ、オレのおちんぽくん元気だし、」 「待って、テンポえぐい。」 陸斗の話を半笑いで聞き流し、ベッドの上をゴロゴロと転がる佑介。その上に陸斗は覆い被さる。 「ねえ、てか今日まだ挿れてないから」 「…や、そう、だけど、」 佑介の顎を掴んで乱暴に口に舌をねじ込む。 「ん、ぐ、」 口の中を無闇に掻き回して口を離すと糸を引いた唾液が佑介の唇にぼたりと落ちた。陸斗はそれを吸い取ってまた顔を離す。 「気持ちいいこと沢山シよって言った!で ゆうちゃんもうんって言った!」 「す、する!…する、けど。 落ち着けよ。俺お前みたいに乱発できないから。」 弱音を吐く佑介を陸斗は抱きしめる。佑介は腕の中で横を向いて顔を逸らす。 「ええ、2回くらいイけるじゃん」 「お前絶対今始めたら2回目で終わらない…」 「まあそれはそう、」 「ほら」 でも、だって、というような言葉を口の中で繰り返して陸斗は佑介の体の向きも気にせず両手を纏めてベッドへ縫いつける。 「イカないようにキモチくしてあげよっか」 「や、え?そ…れはなんかちが」 喋り始めた佑介の腕を持ち上げて乳首をべろりと舐める。 「うぅ、」 ぐっと耳に口を近づければ、途端耳を噛まれると察知して佑介が目を閉じる。 「かわいい。ゆうちゃんのちんぽ、ちょっと勃ってきたね」 陸斗は低い声で耳を刺激して、反論しようと佑介が口を開いた時に耳たぶを吸い上げる。 「あぅう、っ、」 空いた口から無防備に喘ぎ声が零れる。既に潤んでいる瞳に睨まれたところで、物欲しそうにして見えるだけだった。 それから陸斗はサイドチェストのスイッチを押してスタンドライトをオフにする。佑介が仰向けになると視線の先にあるのか、眩しそうにしてこちらを向かないのに気づいたためだ。 「ゆうちゃんこれでオレの方向いてくれる?」 佑介が体をもぞもぞと仰向けにして陸斗の方を向く。 「ありがと」 「ごめんね、気づかなくて。眩しかったね」 佑介は首を振ると、陸斗の首に腕を回す。スタンドライトで出来たハイライトを失った分、佑介の瞳はより黒く、陸斗には淫らに濡れて映る。キスのために自ら目を閉じる佑介。 先程までのイけない騒ぎは何だったのか。始まってしまえば従順にされるのが佑介の、この二人のセックスの常である。 大人しく目を閉じた佑介の唇に、陸斗は唇を押し付けては離すのを繰り返す。キスと言うには艶がなく、それでいて触れると言うにはあまりに優しく熱い。 その唇が顎のラインを撫で、耳輪なぞり、髪へ落とされ、頭の上で繋いだ手と指へ流れる。腕へ移動して、二の腕を食まれる。肩を啄み、鎖骨を舐め、その感覚が首へたどり着く。佑介は体の底からゾクゾクと湧く、どうしようもない期待感に喉が締まった。忙しない息ばかりが口から溢れる。 それを見透かすように陸斗が首筋に歯を立てる。 「ひっ、」 思わず締まったままの喉から声が出る。 普段はこんな真似はされない。乳首を執拗に攻めたり、ペニスや前立腺を扱かれて擦られて、あからさまな気持ちよさばかりを与えられるはずなのに。佑介は知らない焦れた快感に困惑していた。 早く、早くもっと性急に触れられたい。目を開けて訴えれば与えられるのだろうと淡い打算の基に薄目で陸斗を見やる。 自分たちの部屋とは違う、薄暗い部屋。洒落た照明が逆光となり、かつ佑介の腹部へ頭を埋める陸斗の表情はわからなかった。 先程と同じように肋、脇腹、臍の周囲、とただ陸斗の唇で触れるばかりが続けられる。少しずつその位置が降りていくのに合わせて、佑介の下腹部は期待で熱を上げた。 「っは、」 腹部を唇が侵食していく最中、佑介のペニスに少しだけ陸斗の下顎が触れる。その事故のような少しの刺激にも関わらず、佑介は声が漏れ出た。 「そっかあ、」 陸斗は体を起こし、佑介へようやく顔を見せる。イタズラで、稀なほど純粋に意地の悪い顔をしていた。 陸斗が口を開け、舌を出す。そのまま少しだけ顔をペニスへ近づける。与えられる、直接的な快感を、佑介は腰を僅かに浮かせて声にならない声と息でせがんだ。ペニスからはつぷと先走りが漏れる。 陸斗は顎をかちと鳴らして食む仕草をして見せただけで、結局ペニスを咥えることはしなかった。 「なん、…なんで、」 佑介は泣きそうな気持ちに苛まれる。自分ばかりが欲しているような、淫らではしたないこの下半身の期待をどうしてくれよう。 陸斗はまた腹部へひとつキスをすると、ペニスの上を手で覆って、触れる寸前まで近づけて止め、佑介の腿へ顔を沈めた。 陸斗は純粋に楽しんでいた。佑介の欲しがる顔があまりにも愛おしくて初めて少し酷くしたいような感情が芽生えた。 自分の舌や手がペニスに触れるのを切望して食い入るように息を上げて見つめ、触れられないと、ああと声を漏らして抗議するのが、腰を持ち上げて押し付けようとするのが全て無自覚のようで、同時に今すぐに全て与えたい感情とも葛藤していた。 膝から腿の付け根まで舌先だけでなぞると、佑介の体が浅く痙攣する。喉の締まった呼吸が頭上から聞こえる。先程離してやった手を口に当てて必死に耐えているのが見えた。 脚をゆっくりと開くと、アヌスはひくつき、佑介の口の代わりに大層雄弁だった。直情的で膨大な快感を早急に与えてほしい。その欲望に目を瞑るのは陸斗にもかなり困難なものではあった。 今すぐ望むままに滅茶苦茶に与えて愛したい気持ちは山々だが、とはいえもう少しだけ酷く焦らしたなら、どんな言葉で態度で乱れて自分を欲するんだろうか。いつもと違う部屋のせいか、なぜかこの長い夜に余裕を感じて探究心に火がつく。 確信を欲しがるアヌスへ顔を近づけ、熱い息を吐きかける。 「あっ、うう、」 その刺激に小さな睾丸が揺れていじらしく強請る。 挿れたい、挿れて激しく突きたい、衝動を奥歯でバキバキと噛み砕いて代わりに内腿に噛み付いた。 「んんっ!」 佑介の知らない獣が佑介の体を懐柔している。その知らない獣は陸斗ではない。佑介の中に住む快感を貪る獣だ。むず痒い快感が体の一部に与えられると、全身の神経がそこへ向き、深い快感を必死に探しだす。 甘噛みされた内腿が、信じられないくらいに熱い。 その唇はうっすらとついた歯型をちゅうと吸って慈しみ癒すように何度も舐めた。 「りく、」 「ん。」 陸斗は佑介の言葉を待ちながらも唇をとめない。膝の裏へ手を入れて右足を持ち上げると脹ら脛を揉んで膝と脛にキスをした。そして足の甲へも。 足の裏を指の先でつうっとなぞる。 「ひぅん!」 今までと異なる擽ったさを伴うものに佑介は驚きを隠せなかった。陸斗は続けざまに、佑介の足の指の間に自らの手の指を押し込んでいく。そしてそれを時間をかけて抜く。一本ずつ、四本同時に。それからその指で足の裏をまたなぞる。 隙間を埋められ犯されている擬似的な感覚と、擽ったさと、焦らされているという前提のせいで佑介は頭がおかしくなりそうだった。陸斗と反対の手で持ち上げた脚の内腿を撫でる。 「やっ、あ、なんかも、ムリぃ」 持ち上げられた脚の根元で、佑介のペニスはこれでもかと反り立ち先走りで濡れ、アヌスは早くしろと穴を広げて待ちわびている。 すると陸斗は佑介の両脚を広げさせて、パッと手を離した。ベッドから降りて洗面室へ行きタオルを、ソファからローションのボトルとコンドームのケースを手にする。 ケースを見た佑介は、漸く求めた快感が与えられるのだと安堵する。と同時にその時を我慢できず上体を起こす。 陸斗は佑介の腰の下にタオルを引くと、その上に座らせる。 「ほら、脚広げて。」 普段ならば恥じらって陸斗に膝を掴まれるのを待つ佑介も、何も言わず自ら脚を開く。 そして陸斗はローションのボトルキャップを外すと逆さにして佑介の下腹部の上で軽く振った。どろりとローションが垂れて佑介のペニスに落ちる。 「ひゃ、」 敏感になった所へ、温められていない違和感が落とされ、佑介は膝を閉じかけるが、割り入っている陸斗の体が邪魔をしてそれをさせない。 ヌルヌルとローションが垂れていくのを陸斗は眺め、またしばらくして逆さにしたボトルからボタボタとローションを落とした。 佑介は陸斗の意図を汲めずに、されるがままに待つ。ローションは先程の風呂のものより粘度が高いのか、かなりまとわりつく。ゆっくりと竿を下っていく感覚と、陸斗にその様子をじっと見られている恥ずかしさに耐えかねて顔を逸らす。 逸らした先にはまだ今日は出番を迎えていないコンドームのケースがあった。 「ね、リク今日は俺のこと欲しくないの、?」 ぽとりと言葉が零れて、陸斗は顔を上げる。佑介は上気した、けれど悲しみの交じった顔をしていた。 「いや、」 「欲しいの俺ばっか」 「や、ちがうって、違う。ごめんん」 陸斗が顔を逸らした佑介を覗き込む。 「オレももう、欲しくて、ガチガチだよ…」 「じゃあ見せて」 「見せ、え?なに、まって」 佑介は陸斗の肩を押して勢いよく押し倒して馬乗りになる。 「ご、ごめんって。ゆうちゃんが可愛すぎていじわるしちゃった…」 「知らない」 陸斗のペニスが硬度を保っているのを握って確認すると、ゴムを口で割いて開封し陸斗のものに慣れない手つきでどうにか装着させる。 「ちょ、待って」 自分にされたようにローションのボトルを逆さにして中身を落とすと根元を掴んで、腰の位置を確かめてあてがう。 「ゆうちゃん、まだ指とかしてないから」 「風呂でシたじゃん、もう入る」 佑介の我慢は限界を超えて崩壊した。陸斗の胸板に体重を乗せた片手をついて起き上がらせないようにすると、反対の手でペニスを固定して一息に奥まで貫かせた。 「あ゙っ、ぐ、あ゙あ゙っ!?」 佑介は挿れただけで一度達したようだった。穴の奥がぎゅうぎゅうと締め付けて陸斗のペニスを引き抜かせない。 「ゆうちゃん、痛くない?やめよ?オレがちゃんと気持ちくしてあげるから、ね」 「黙っててよ」 ぐりぐりと自ら腰を回して中を擦り、腹に手を当ててはその位置を確かめて、佑介は満足気に小さく舌なめずりをして笑う。 淫猥な変貌に陸斗は声を失った。普段焦らされることのほぼ無い佑介にとっては完全にやりすぎだったようで、タガが外れたように自ら腰を振り続けている。 「あ゙っ!んん゙!あっ、あ、ぁあ゙ !」 壊れたように腹部をビクつかせ舌を出して浅い呼吸が苦しそうに部屋に響く。 「イ゙っ、あ、またイぐぅ!」 何度か小さな痙攣を繰り返して、それでもなお陸斗を押さえつけて佑介は腰を振っている。快感を貪る獣に完全に支配されてしまった。しかしその整わない呼吸に反して顔は恍惚として満足気だ。 陸斗は激しい締め付けで達しそうになるのを堪えながら、焦らしたことを嫌われてはいないようで内心安堵した。 「んぅ゙、あ、あっ、ああ。は、ッ、は、」 やや疲れたのか、佑介の腰の動きが緩まる。 「ゆうちゃん、苦しいでしょ、おいで」 陸斗が下で手を広げると、佑介はぱたりとその中へ倒れた。 汗でびっしょりと濡れた額。張り付いた前髪を指で払ってキスをする。ここまでされたのだから、応えなくては。 佑介の頭を撫でて抱え込むと耳を噛む。それから耳に唇を付けたまま声を潜める。 「佑介、まだちんぽはイってないでしょ?」 「え、」 佑介の身体に緊張が走る。 「オレとイこ。サイコーにキモチくしてあげる。」 佑介の穴の中で陸斗のペニスが質量を増す。 「あんなに求めてくれたから。オレも沢山あげるね。」 陸斗は体を横に倒して佑介を体の下に敷き込むと、脚を高く持ち上げて最奥まで突き上げた。 「あ゙う、」 穴の入口まで引きずり出しては奥まで貫く。その度に腰で抉るようにして前立腺も刺激する。 「あっ、うぅ、これらめ、」 「だめじゃないよ。ッ、すごい締まるもん」 腹部へかかる圧から佑介の声が何度も詰まる。浅い呼吸をさらに乱すように陸斗はキスで口を塞いだ。 「ふッ、んぐ、む゙ぅ゙、んうっ、ううぅゔ」 ピストンを速められるとまた絶頂へと近づいていく。 「っふ、は、ッ、ふ、ん゙ん゙、ふ、」 陸斗が佑介から口を離すと、佑介の口からはだらしなく唾液が溢れて頬へ伝う。べろりと舐めとっても佑介はそれを恥じらうことも忘れて汗に濡れた自分の手の甲に噛み付いた。 「ゆうちゃん、だめだって、オレの肩にして、」 「やら、う、痛くしちゃ、は、はッ」 「いいよ痛くしてッ、く、っあ、オレがいじわるした分、痛くしていいよッ」 陸斗は佑介の手を口から力づくで離すと、佑介を抱きしめて口の前に肩が来るようにしてやった。 「あ゙、ああ、」 佑介の歯が陸斗の肩に食い込む。 「っ゙、ゆうちゃ、」 「んぐ、あ、ああ゙、」 なるべく肩が動かないように、腰だけを打ち付ける。 「んぅ゙、ぐあ、ッが、ああ、あ!ぁあ、」 佑介が肩から口を離すと、赤い歯型にべったりと唾液が着いていた。佑介が悲しい瞳で肩に手を添える。 「う、痛そう。ごめん。」 「うん?ゆうちゃんにされるなら、オレこれくらい全然へいきだよ。」 「でも、」 陸斗は傍にあったタオルで唾液だけ拭うと佑介を思い切り抱きしめる。 「すきだよ、ゆうちゃん。大好き。」 「…俺も。すき。」 佑介が背中に腕を回すのを確認して、陸斗はピストンを再開した。 「はッ。あ、佑介、」 名前を呼び捨てにされると、陸斗が昂っているのがわかる。 「あ、あっ、う、りくゥ、」 陸斗は佑介の両脚を持ち上げて閉じさせると、体を横向きに転がした。臀からL字に折った佑介の身体に伸し掛るようにして、浅いピストンをする。晒された佑介の左耳に陸斗が噛み付く。 「あっ、んぅふ、」 挿入をしたまま、佑介の腰の下に腕を入れて持ち上げると、佑介は意図を汲んで、肘で自身の体重を支え上体を起こした。そのままぐるりとうつ伏せになる。 体重をかけた重たいピストンが前立腺を的確に刺激する。 「んぅ゙、イイぃ、」 「佑介、」 ベッドについた手を、手の甲から重ねるように陸斗の手が覆う。指を絡ませて握られると、安易に大切にされているような感覚で満たされる。 「佑介、すごい締まるね」 「あ゙っ、そゆ、の゙、言うな、っ、」 「可愛い」 項に伝う汗指で掬ってやると、触れらたせいか、ひゅ、と喉から空気を吸う音がして、佑介の顎が反る。 「ね、もしかしてゆうちゃんってオレに触られたらどこでも感じちゃうの?」 「ちが、」 「違くないよ、ほら」 機嫌を良くした陸斗が項から背中の中心を指でなぞる。 「やめ、ん、うあ」 切なげな声色で佑介が抵抗するが、陸斗はただただ煽られるばかりだ。 しかし佑介が欲しいのはそんな生半可な快感ではなかった。ずっと目の前にぶら下げられたままの絶頂に必死に手を伸ばす。 「も、イこ?」 腰を持ち上げて四つん這いになろうとする。一番深い、一番好きなところを、簡単に突かれる術を求めていた。それを見て陸斗は一度ずるりとペニスを引き抜く。 「え?」 佑介はまたも外されたはしごに動揺が隠せない。 「ゆうちゃんこっち、きて。」 陸斗は再びローションのボトルを手にベッドから降りると、今度は手を引いて佑介もベッドから下ろす。不安げにぺたぺたと歩く佑介をドレッサー代わりの机の前に連れて行った。 机に手をつかせて後ろから抱きしめる。佑介は目の前に映されているであろう情景から目を逸らすために俯く。しかし顎を掴んで顔をあげさせると、目の前の鏡には裸の二人が大写しになった。 「待ッ、これやだ」 振り向こうとする佑介の腰を陸斗が抑えたため、顔だけ佑介が振り返り陸斗を睨む。 「キモチくするから」 そう言うと尻たぶを掴んで広げアヌスにペニスをあてがい、そこにローションを垂らす。 「挿れるからね」 佑介の返事は帰ってこないが、机に手をついたまま少し臀を突き出してくるので問題はないのだろう。 ズプ。 再び中へ質量が押し込まれ、広げられていく。 佑介は羞恥で目を硬く瞑っていた。自分がいやらしく腰を振って陸斗のものをせがむ姿など、分かりきってはいてもこんな形で自覚したくはないのだ。とはいえ目を瞑れば景色がないせいか、穴の奥で蠢く熱に全ての感覚が集中してしてしまうのも事実だった。 「んんっ、あ、っああ、」 研ぎ澄まされた感覚の中で、熱が捩れて一番いいところを故意に避けているのが分かる。 と、突然背中に冷たいものがべったりと落とされる。 「!?」 思わず目を開くと、鏡越しに陸斗がローションボトルをまた逆さにしているのを知る。 「何すん、」 「何って、うーん、エッチなこと?」 後ろから陸斗の胸板が当たる。ローションのかかった背中に陸斗の熱い身体が重なってヌルヌルと滑る。体を重ねているのは言うまでもなかったが、その密着した様が鏡に映され、実感を伴って目の当たりにするのが佑介には恥ずかしくて耐えられなかった。 「いいから、突けよ、も、俺イきたいぃ、」 「ゆうちゃん、頼むから煽んないで、」 なりふりの構って居られない佑介を、今日はどうしても楽しんでしまう自分がいるのを、陸斗は自覚せざるを得ない。 「言われなくても、たくさんしてあげる、から、っ。」 後ろから深く、最奥を突き上げながら、手にもローションを垂らす。両手で少しぬるくしたそれで佑介の脇腹に添えた。ヌルヌルと滑って上手く掴めないものの、佑介が反応を示すには充分。 「だから、あっ、それやめ、ろってぇ、」 身を捩って首を振って佑介は要らない快楽を振り落とそうとする。陸斗は佑介の声が感じ入っているものだと慎重に確かめながら手を前へ回す。 「あぅッ、ほんと、やめ、て、からだ、ヘンなるゔ」 ゆるゆると奥までピストンをされつつ、背中や腹部に陸斗の身体の熱が分け与えられて、佑介は汗が脚を伝うのにすら身体を震わせた。 そして陸斗の濡れた手が不意に胸部を覆う。 「ひっ、」 小指を肋に添わせ、胸を覆った両手を内側へ外側へとただ滑らせる。 「っふぁ、んん」 「あれ、さっきまでこんな勃ってなかったよね?」 ぷっくりと改めて主張を始めた乳首をぴんと指で弾かれる。 「やめッ」 「やめないよ。ね、ゆうちゃん自分の顔みて。」 「ヤだ!」 佑介は目を瞑り直す。ピストンが奥まで届かなくなっているのを感じる。 「いい顔してるのに。」 勿体ないとでも言いたげに、乳首をきゅっと摘んで引っ張った。 「ぁう!」 浅く、モタモタとした律動がもどかしい。 目を開ければ自分の痴態を目の当たりにし、目を閉じれば触られるのに不必要なほど感覚が冴える。佑介はもうどう選ぶこともできずに、振り返って陸斗を見上げた。 「いいから、もうイかせろ」 鏡の中や、触られた感覚などといった細かいことを全て吹き飛ばすような、単純明快な快楽の答えが欲しい。 「もうちょいゆうちゃんのこと触ってたい。」 「そんなんもういらない。っ、めちゃくちゃに突いてもいい、から…」 佑介は陸斗の手首を掴むと、その手を自分の腰に当てる。 陸斗とて別にやる気が無いわけではない。佑介の懇願に瞬時にアテられることなど容易かった。 「ゆうちゃん、オレ相手でもそういうこと言っちゃだめだよ、加減効かなくなっちゃう。」 腰をぬめる手で掴むと少し後ろへ引く。より臀を突き出させるように挿入の角度を調整すると、一度奥までぐりぐりと挿れて確認をして、入口まで引き抜き、一思いに貫いた。 「ッッあ゙!?」 それから耳元で優しく確認をし直す。 「ほんとにめちゃくちゃにしちゃうよ、いいの?」 佑介はまた少しふりかえって潤んだ瞳で陸斗をキッと睨んだ。 「いんだよ、ほら加減効かないんじゃないのかよ、早くシろ…」 「ん、わかった。」 佑介の腰を掴む内の片手を、脇腹、肋、胸と移動させながらゆっくりとペニスを抜く。濡れた手と排泄感に全身を支配されたであろう、小さな短い息が何度も佑介の口から漏れるのを確認してまた深くまで前立腺を抉りながら挿入する。 「んうぅ…、んああっ!」 決して手も腰も止めることなく、目を瞑る佑介が一つ一つの行為を脳の奥底から自覚するように丁寧に侵食していく。そして少しずつ深いストロークを変えずに速める。 「あんっ、あ!あぁ!い゙いぃ…」 佑介の溶けた顔が鏡に映る。もっとはっきりとこの顔を見たい、陸斗は部屋を暗くした過去の自分をやや責めた。 中の好きなところを擦られるように、自分から腰の位置を変えて佑介は快楽を貪る。 「んんゔっ!りく、とッ、あ゙!もっと、もっ、ほぉ…!!」 時折歯を食いしばるものの、佑介の口はだらしなく開いたままになっている。見かねた陸斗は項から耳へ口付けて佑介を振り向かせ、互いの唇で口を塞ぐ。 「んふ、んー、っふ、んん!」 舌を噛まないように比較的浅いストロークに変える。ぐじゅぐじゅと音を立てて舌を吸い、酸素を求めて逃げる佑介の唇や舌をがむしゃらに追いかけ回す。 「ッは、ゆちゃ、」 「んぐ、む゙、ん、ぐ、ぅ゙ああっ」 唇が触れたまま何度も名前を呼ぶ。佑介は答える余裕もなく、弱い上顎、特に前歯と上唇の隙間や、軟口蓋の奥を舌がなぞると、陸斗の腕を掴んで抗議した。 唇を離すと唾液の糸がねっとりと伸びて、やがて佑介の肩へ落ちた。それを陸斗が舐めとる。 再び徐々に大きなストロークへ戻す。入口から深くまでしっかりと重みのある熱で埋められ、佑介は腹部に手を当てて確かめる。 「んうっ、あっ、これぇ、もっと、んああ!」 少しずつスピードを上げていくと、下から突き上げられる為に、佑介は意思もなく必要に迫られて声を出し続けているようだった。 「あっあっ、んあ、あっ」 指で乳輪をなぞり勃たせた乳首をつねると、佑介は穴を締めて鳴いく。 「んぐおっ!!あ゙っ、んんっあっあっ、」 「ゆ、すけッ、すごい、かわいい!」 「ううっ、あ、っあ、」 佑介は激しく揺すられる最中に薄目で自分の顔を見た。それは怖いもの見たさのような、目を開いてしまった偶然のような、一瞬のことだったが、映された自分と陸斗にそれなりに驚いた。自身が乱れて腰を振っているのは予想の範囲内とはいえ、案外に自分が幸せそうな顔をしている気がしたからだ。それから陸斗が、自分と向き合っていない時、自分のどこを見てどんな顔をしているのか、初めて知る。項にキスを落とす時、胸焼けがするほど優しい顔をしていた。 「んい゙っ!、りく、と。…っあ゙、すき、すひィィ゙!!」 「ゆうすけ、オレも、オレも好きだよ、ッもっと言って!」 珍しく佑介から告げられた好意の言葉に陸斗はヒートアップする。 「ぁあ!すきい、す、あっ!すき!りく、リク!っああ゙!すきすきすき、あ!りく、りくとお」 求められている愛されているという感覚が佑介をより高みへ連れ去る。 「佑介、やばい…っ」 「あ゙っ!も、イ゙ッ、イぐぅゔう、イかせてぇ、あ゙っ!ぁあ!!」 何度も絶頂の手前まで来ては引きを繰り返して、もう二人は限界を迎えていた。鏡越しに二人の目が合う。 「っああ!いいい」 陸斗は一瞬だけ腰を止め、食べそうなほど佑介の耳元に顔を近づけると、低い声で囁く。 「愛してるよ、ゆうちゃん。ずっと大事にするから。…出すね」 「う、俺も、俺もすき、だからァ、」 「うん、ッ!」 佑介が言葉を終えたのを確認すると同時に律動を再開する。目の裏に星が飛ぶほど激しく腰をうちつける。 「あ゙ああ゙!!!」 緩急の酷さとその衝撃に背中が反り返る。甘い言葉に溶けた脳や背筋にビリビリと電撃が走り抜ける。 「イ゙、ッ、ホントに゙!いっ、い゙っぢゃう!あっ!あっ!あああぁあ」 「ゆすけ、イって!オレも、オレもイく」 陸斗が佑介のペニスを軽く扱く。 「イくっ!イクぅ!いやっ、すごいいい、は、いく!すき!あっ、すきりくといく俺いっちゃううっ、あ!あ!ああ゙ぁああ!!らめッ、あ゙ーー!!!!」 「っッ、、ゔく!!佑介、」 佑介の精液が机の上に酷く飛び散った。それからゴムの中へ陸斗の熱が広がる。 「っは、っ、っは、う、」 佑介は肩で息をして、どうにか肺の奥まで酸素を回そうとする。ただ頭は痺れたままで、呆然と机に手をつき、その飛び散った精液を眺める。 「ゆうちゃんいっぱいでたね。」 「、っ、うん。」 陸斗は硬さを失ったそれをまだ引き抜くことはせず、佑介と繋がったままに佑介を抱きしめた。 「ゆうちゃん、愛してる。」 「、うん。」 「可愛い。」 「…お、俺も、」 「え?」 佑介は同意のタイミングを逃したようだった。 「ちが、その、あ、あ……あい、…」 愛している、自分に不釣り合いに艶やかで擽ったい言葉がどうしても上手く出てこず、喉でつかえてしまう。 陸斗はそれでも言葉にしようと努める佑介を愛おしく思い、互いの身体がローションだらけであることは忘れて正面から抱きしめたい衝動に駆られる。 手早く引き抜き、外したゴムを縛ってデスクの上のティッシュに包むと下のトラッシュボックスへ投げ込む。その間も佑介は、言いかけた言葉と陸斗の勢いの間でもたついていた。 陸斗にぎゅうと抱きしめられると、佑介は耳に口を寄せて臆病に一文字ずつ発した。 「っあ、…………して、……る、」 消え入りそうな臆病な声でようやく紡いだ言葉は陸斗の耳にだけ届く。 「うん、ありがとう。嬉しい。ゆうちゃん、大好き。」 「…なんでお前はペラペラ言えるんだよ。」 少し恨めしそうに佑介が陸斗の頬を引き伸ばす。照れ隠しでもあるのは言うまでもない。 「オレはオレだもん。ゆうちゃんはゆうちゃん。」 「あ、…そ。」 二人はこの後にローションをひたすらに落とすような厄介なシャワーを控えいることはすっかり頭の外へ放って、互いを確かめるように何度もキスを繰り返した。 ーーー 「うえ、全然おちない。なんかヌルヌル増してる。」 「あんな垂らすからだよ馬鹿」 流したままのシャワー。 ボディソープをやたらと浪費する。 「でも良くなかった?」 「…」 「ゆうちゃん結構キいてたよね?」 「………」 佑介は無言でシャワーヘッドを掴むと放出される湯を陸斗の顔へ向ける。 「わ、ぶ。お前!」 「は、ふふ、あはは、ごめん。髪にもローションついてた。」 「ウソ!」 「ほんとほんと、あはは」 佑介がシャワーを壁へ戻すと陸斗はバシャバシャと顔や髪も洗う。 「ああ゙ー!ちょっとはスッキリしたかなー」 陸斗が犬のように頭を降って水気を払う。 「ね、リク。こっちむいて。」 「ん?」 「仕返し」 佑介が陸斗に口付ける。 「…え?なんの?」 「うーん、わかんね。」 考えたようなフリだけ体良く見せて佑介は首を傾げる。 「……色々?」 気が済んだのか一人で浴室を出ていく勝手な生白い背中に、陸斗は真意を掴めないまま置き去りにされる。仕方なしにシャワーの温度を下げて思い切り水を出すと、頭から被ってその中へ狡い、という呟きをかき消す。 それからぎゅ、としっかりシャワーを締めてあとを追いかけた。

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