12 / 116

第12話

医師会の理事長でもあるが、結月の通う学校の責任者でもある父に、しばらくは結月に付き添いたい、と願い、穂高は保健医を休み、代理の保健医が代わりに宛てがわれた。 穂高がいなくとも穂高を幼少から知る執事や家政婦、家庭教師もいる。 不安はないが、今はなるべく、不安定な結月の傍にいてあげたかった。 家庭教師に教わりながら、真新しい学習机で勉学に励む結月を見守った。 「うん!今日はここまで。結月は飲み込みが早くて助かるよ」 穂高の親友である拓磨に家庭教師を依頼した。 結月が満更でもない笑みを拓磨に返す。 「もう遅くなったし、拓磨も一緒に食事していくか?」 「いや、今日は遠慮しておくよ。帰ってレポートも書きたいし」 拓磨は大学院生だ。 「悪いな、お前の勉強の邪魔して」 「謝るなよ。復習みたいで俺も楽しいよ」 拓磨とは小学校で知り合った。史哉と拓磨もまた友人として親交がある。 「史哉もなあ、本当、昔からお前ばっか見ていたから。内心は辛いんだと思うよ、昔から気ばかりは強いけど」 執事の有坂に差し出された湯気を立てるコーヒーのカップを渡され、ありがとう、と拓磨が飲んだ。 結月と穂高は一緒に食事をした。 「ほら、口、付いてるぞ」 口元のソースを拭ってあげた。 「来週の誕生日。なにか欲しいものはあるか?結月」 「うーん」 結月が口を尖らせ宙を見る。 「考えておいて、結月」 「うん!」 そうして、別々に風呂に入り、穂高はベッドで1人、なかなか眠れずに天井を見上げた。 「穂高先生...」 パジャマ姿の結月が布団に潜り込んできた。

ともだちにシェアしよう!