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第11話

穂高は腰に絡みつく史哉の手首を掴み、振りほどいた。 「結月が見てるんだ。それにお前とは別れる、て言ったろう?」 「ずっと一緒だったのに、なんで今更。僕は諦めないよ」 「ずっと一緒だったから、て時間は関係ない。一緒にいた時間が多かったぶん、史哉は俺しか見えなくなってたんじゃないのか?」 穂高と史哉の瞳が交錯した。 「...とりあえず、今日は一旦、帰る。また来るから」 そう言い残し、史哉は出ていった。 呆然と2人のキスシーンを眺め、2人が静かに言い争う姿、史哉が玄関から出ていく姿を結月は見つめていたが、穂高にしがみついてきた。 「...びっくりさせちゃったな、結月」 結月が首を上げて優しい眼差しで見下ろす穂高の瞳を見つめた。 「...僕、あの人の子供になりたくない」 穂高は結月の頭を撫でた。 「大丈夫。そんな事にはならないから。それより」 不意に穂高は結月の前にしゃがみ、目線を合わせた。 「来週、誕生日、て本当かい?お祝いしないといけないね、ケーキも用意しないと」 穂高が微笑むと強ばっていた結月からも笑顔が溢れた。 「暖かい紅茶でも煎れようか?」 「うん!僕、ミルクティーがいい!」 穂高と結月は手を繋ぎ、並んでダイニンクテーブルのあるリビングへとゆっくり歩いた。

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