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第34話

下に着いたことを拓磨は史哉に連絡すると、史哉は閉じこもっていた部屋を抜け出した。 「史哉!話しはまだ終わって無いんだぞ!」 父からの怒声を払いのけ、史哉は廊下を走り、拓磨の車の助手席に飛び乗った。 「史哉。どうしたんだ?一体」 「いいから!早く車出して!人が居ないとこに行きたい」 「人が居ないとこ、て」 ハンドルを手に拓磨が呟く。 「ラブホテル。ラブホテルなら2人きりになれるでしょ。それに....行ってみたかったから....」 史哉が次第に頬を染めた。 穂高とはラブホテルに行ったことが無かったのか、と恥ずかしいのか俯き気味の史哉を眺めた。 史哉は自ら穂高を誘って来たが、穂高はラブホテルに興味はなく、専ら、穂高の部屋かシティホテルだったからだ。 拓磨はなるべく綺麗で新しい裏側から入れるラブホテルを探し、車を止めた。 「ほら」 史哉に手を差し出すと、史哉がぎゅっと力強く握り返す。 手を繋ぎ、ラブホテルに入った。 「わあ...綺麗....おとぎ話の世界みたい」 部屋に入ると現実離れしたファンタジーな一室に史哉は瞳をキラキラと輝かせた。 そして、あちこち、見て回る姿を拓磨は笑みを浮かべ、見守った。 「お風呂がある。溜めるね?」 「話しがあるんじゃないのか?史哉」 史哉は答えようとせず、浴室から部屋に戻ると、備え付けの冷蔵庫に気が付き、しゃがんだ。 「凄くない!?冷蔵庫まであるよ、拓磨」 「そうだな」 ソファに座る余裕な笑みの拓磨を史哉は自然と睨みつけていた。 「なに?全然、驚かない。来たことあるの、拓磨は」 「あるよ」 拓磨が答えるなり、誰と!?いつ!?何回くらい!?と怒り任せに史哉が質問攻めにする。 「そんな怒るなよ、俺も23なんだし。お前も俺の気持ちに気づかずに穂高とやってたんだろ?お互い様だろ?」 淡々と返され、反論のしようが無かった。 拓磨もソファを立つと自販機の前でしゃがみ込んでいる史哉の隣に移動し、ビールを取った。 「お前も飲むか?」 こくん、史哉は頷いた。

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