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第40話

「あ...っ、凄いっ、あ、ああっ....」 シーツの上、すっかり穂高からは得られなかった、拓磨からの快楽に浸り溺れる史哉がいた。 拓磨が腰を動かす度に大量の愛液と拓磨自身の精子とが混ざり合い、グチャグチャと卑猥な音を立てる。 すれ違っていた期間の空白を埋めるかのように体を重ね続けた。 史哉は自宅に帰りたくない、と言い張り聞かず、他のラブホテルも行ってみたい、と拓磨を誘い、2人は一夜を明かすとまた別のラブホテルへと転々として過ごし、4日目になる。 「あっ....あ、そこ、そこ気持ちいい....拓磨、拓磨....っ」 腰を打ち付ける度に史哉は白い肌を紅潮させ、甘い声を漏らしながら体を前後に揺らし、時折、拓磨の背中に爪を立て、全身で感じた。 「イク....イキそう、史哉」 史哉の情事に耽る艶めかしい姿に最奥を目掛け腰を動かし、史哉の中で果てた。 「....キスして。拓磨」 史哉に応え、寝そべる史哉に優しく甘いキスをする。 舌を絡めているうちに、またもや史哉は疼き始め、夢中で拓磨を抱き、舌を絡ませ、言葉でなく伝えた。 深いキスをしながら拓磨は再び、史哉のひくつく膣に挿入し、互いに息を弾ませた。 突然、スマホが鳴った。 どちらの物かはわからないが、 「今はそれどころじゃない」 紅潮した顔で史哉は電話を無視した。 ホテルに入り、もう何度目になるセックスだろう....拓磨も考える余裕は無かった。 ようやく、眠りについた史哉に顔を近づけ、柔らかいウェーブの髪に口付けた。 瞼を閉じ、まだ僅かに頬を染めたまま、口元は弧を描き、拓磨と体を重ね安堵したのか嬉しそうに眠っている。 ふとテーブルを見ると、置いていた、自分のスマホも史哉のスマホも着信があったらしく点滅している。 拓磨は着信履歴を見た。 穂高からだった。 史哉を起こさないように、ベッドルームから離れ、拓磨は穂高に電話した。 「拓磨か?史哉が何処に行ってるか知らないか?あいつの親から連絡があって」 「....史哉の親から?」 「ああ。なんでも、4、5日帰って来てないとかで。心配で、て連絡が来て」 拓磨は鼻で笑った。 「....心配ねえ。穂高は知ってるだろ?史哉の両親や史哉の兄の史哉への仕打ち」 「史哉へ....?いや?お前の勘違いじゃないか?史哉の親、いつも史哉に笑顔だったし」 (それは建前だろ。それに。穂高によく見せたいから....) 「わかった。何かわかったら連絡する」 そうして、拓磨は電話を切ると素肌のまま、シーツから白い肩を出して眠る史哉に近づき、腰を落とし、史哉の寝顔を改めて見守った。 史哉の3つ上の兄はαだ。 両親はまるで女の子のような、実際、女の子に見間違われる、まだ幼い史哉を見るだけでΩだとわかる、恥ずかしい、穢らわしい、と、罪もない幼い史哉を足蹴にしていた。 遊ぼう、お腹すいた、と笑いかけても、うるさい!と怒鳴りつけられる。 兄にも、今は交流はないが、幼い史哉をいじめ、史哉が泣き出すと、両親はいじめる兄ではなく、史哉の泣き声がうるさい、と史哉を叱る始末だった。 「....穂高には教えていなかったんだな...」 史哉はもしかしたら、穂高が孤独だと感じ、自分とは少し環境は違えど、一人で気にせず、力強く生きているように見え、穂高に憧れを抱いたんじゃないだろうか。 そして、史哉が幼少期は明るく、陽気で甘えん坊な性格だったが、年を重ねる毎に、覚えた術。 それが、生意気で口も悪く、棘のある史哉だろう。 そうして、知ってか知らずか性格を変え、もう二度と傷つかないよう牽制しているのだろう。 史哉が自分にしか教えなかった過去。 「....絶対、俺が守ってやるからな。史哉」 拓磨は史哉の可愛く無防備な寝顔を見つめながら意を決し、呟いた。

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