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第41話

リビングのソファで、電話を終えた穂高は、うーん、と宙を仰ぎ、唸りながらスマホを顎に当てた。 結月はキッチンで家政婦に着いて貰い、教わりながらエプロン姿で料理をしている。 後は煮込むだけとなり、結月はスリッパをパタパタと音を立てながら穂高の元へ向かった。 「料理はどうだ?」 「楽しいよ。ちなみに今日は煮込みハンバーグ」 エプロン姿で穂高の隣にちょこん、と座る。 「史哉さん、見つかった?」 穂高から史哉が行方不明、の話しを聞いていた結月が尋ねると、穂高は首を横に振った。 「拓磨にも聞いたけど、手がかりなし」 まさか、拓磨と一緒に居て、拓磨が史哉と居ることを話していないだけとは知らない穂高だ。 「あいつの事だから、気晴らしに海外でも行ってるんじゃないか?」 「だったら、拓磨さん、知ってる筈じゃない?」 「それはそうだな」 「僕が史哉さんと連絡先、交換していたらよかったかな」 突然の結月の声に穂高が驚きの眼差しを結月に向けた。 「お前と史哉がか?」 「うん」 「まあ、最近、仲良さそうだったけど....なんなら、番号教えるからLINEしてみるか?」 穂高の提案に、うん!と、結月は自分のスマホを取りに行き、穂高から伝えられる史哉の電話番号を登録し、早速、LINEの内容を考える。 「....どんな内容がいいかな」 「あいつがびっくりして、掛けてくるような内容?」 2人で結月の手にあるスマホを覗き込み、思案を練る。 結月の指が動き始めた。 内容を見ていくうちに、穂高の顔色が怪訝になっていく。 「....縁起でもない内容だな、また」 「演技だよ」 『史哉さん....僕、お腹の子供、流産しました。あんなに説得してくれたのにごめんなさい。穂高先生と別れる事になりました。今までありがとうございました。 結月』 一瞬で結月の考えた内容のLINEは史哉の元へと届く。 相変わらず、史哉はラブホテルの一室で、情事を終え、布団の上で寝転んでいた。 真っ先にソファに座っていた拓磨が史哉に届いたLINEに気づく。 「史哉、LINE、来てるぞ」 「んー、誰から」 「さあ、お前、登録してないんじゃ?自分で確認しろよ」 スマホを投げ渡された史哉は肩肘を付き、何気なく、LINEを開き....。 「なにこれ!」 思わず、飛び起き、叫んだ。 「どした?史哉」 史哉の元へ向かい、一緒にスマホを覗き込む拓磨も思わず、衝撃から口を抑えた。 「まぢかよ....嘘だろ....」 結月の考えた、史哉が掛けてくるであろう、その嘘なのだが。 「流産、て...ショックだろうな。にしても、なんでまた、穂高、別れるだなんて」 「穂高のやつ!」 流産で傷ついている結月をショックで投げ出したのかと、怒りに任せ、史哉は結月ではなく、穂高に電話を掛けた。 「....俺に来た」 なんの気なしに穂高はスマホを耳にすると、 「なに考えてんだよ!穂高の薄情者!」 「へ?」 「流産したから、て、結月を手放すとか、甘ったれるのもいい加減にしたら!」 あまりの怒声に思わず、穂高は吹き出した。 「それはどうも、心配ありがとう」 「なに、その余裕!」 穂高の隣で、結月が代わって、と声を掛け、スマホが結月に渡され、穂高から結月に交代した。 「あ、史哉さん、今何処にいるんですか?元気ですか?会いたいです」 「結月....」 てっきり、傷心からの言葉と史哉は思い込んだ。 「辛かったな、結月。僕は今、拓磨とラブホテルを転々としているよ。結月は大丈夫?」 スマホから漏れた史哉の声に穂高と結月は自然と見つめ合った。 「....拓磨のヤロー、隠してたな」 珍しく、穂高が拓磨に怒りを燃やした。

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