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第44話

食後の紅茶を煎れよう、と立ち上がった結月を穂高は制止し、キッチンに立っている。 「拓磨と史哉も紅茶でいいか?コーヒーもあるけど」 振り返った穂高はダイニングテーブルにいる2人に尋ねる。 「あー、俺はコーヒーで」 「僕は紅茶」 「あ、穂高先生。頂き物のクッキーが戸棚にあるから、お茶請けに」 振り向いた結月は穂高に促す。 「戸棚?どこ?」 「んっとね...」 結月が立ち上がり、執事の早坂が休暇の後、お土産に、と渡したクッキーの箱の場所を教える。 「早坂さんから頂いたんだ」 「早坂から?」 「うん」 穂高がお茶を煎れる中、結月は穂高の傍らでクッキーの箱を開け、ナプキンを敷いた籠で出来た器に入れ替える。 「もうなんだか、夫婦みたいだね」 史哉は微笑ましい、とばかりに笑みを浮かべ、 「息、ぴったりだな」 2人の共同作業に拓磨も優しく笑う。 「もう、子供の名前は考えてあるの?」 食後のティータイムとなり、史哉がカップを口元に運びながら結月に尋ねる。 「いえ、まだです。性別もわかってないですし...でも、春に生まれる予定なので、春っぽいというか、そんな名前もいいかな、とは考えてます」 結月もカップを持ったまま、史哉に応える。 「春っぽい名前かあ...とりあえず、性別がわからないならまだ決められないな」 拓磨がクッキーを片手に言う。 「穂高は男の子と女の子、どっちがいいの?」 史哉が穂高に聞くと、穂高は即答だった。 「どちらでも」 そうして、優雅に紅茶を嗜む穂高に拓磨は言う。 「でも、穂高は兄弟いないし、跡取りを考えたら、やっぱり、男の子なんじゃないか?」 「いや、俺はそんなことより、五体満足に元気に産まれてくれれば、それでいい」 穂高らしいな、と史哉は秘かに思った。 「そんなことより、もう夜も遅いし、泊まっていくか?部屋なら余ってるし」 「でも、お邪魔じゃない?」 史哉が気遣うが、 「お前らの声で、結月を起こさないでくれたら、邪魔じゃない」 「僕たちの声...?」 「2人の営みは知らないけど、変にうるさくしなければいい、てことだよ」 平然と穂高が紅茶を飲みながら言い、史哉は顔を真っ赤にし、拓磨もさすがに照れた。 「さすがに、それはないよ、な、史哉」 「え?う、うん」 バツが悪そうに史哉はテーブルにあるカップを手に取った。

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