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第56話

「Skypeでパパと話したら?拓磨お兄ちゃん、史哉さん」 美希の提案で、2人は並び、拓磨の父と画面越しに会話した。史哉も改めて挨拶をした。 「これから、よろしくお願いします、お父さん。なにか粗相などあれば、ご指導のほど、よろしくお願いします」 頭を下げ、史哉は緊張しながら、画面越しの拓磨の父に告げた。 「そう畏まらないでくれ、史哉くん。うちはのんびりした家庭なんでね、楽しくやってくれたらそれで充分だ」 口髭を少し蓄えた、拓磨の父が軽やかに笑い、屈託のない表情を見せた。 「逆になにか問題があったら、いつでも家内に言ってくれ。私も家内には敵わないくらいでね、尻に敷かれっぱなしだよ」 そう言って、拓磨の父は大笑いした。 しばらく会話したあと、 「1週間間後くらいか、日本に一時、帰国するから、その日にまたゆっくり話そう」 「はい、ありがとうございます、お父さん」 「こちらこそ、ありがとう、史哉くん。わざわざSkypeで報告してくれて」 「あ、美希ちゃんの提案で」 「ああ、なるほど、美希か。どちらにせよ、2人の元気な姿を見れて安心したよ、ありがとう」 そうして、電話を切ったのも束の間。 「あれー?史哉くんじゃん」 優磨のお帰りに史哉も拓磨も振り返り、2人を見守っていた美希も警戒した。 「史哉さん、新居が見つかるまで、うちにいるけど、ちょっかい出さないでよね!拓磨お兄ちゃんのなんだから!」 「へー、拓磨と付き合い始めたんだ?でも、毎日、史哉くんの顔が見れるなんて幸せだなあ、俺」 美希の言葉に懲りない優磨が史哉を見つめる。 「まじ、手、出したら容赦ねーから」 慌てて、史哉を後ろ手に隠した。 「そうよー。私も美希も優磨を監視する対象にしたから。史哉くんになにかしたら、お母さんも容赦ないわよー、覚悟してなさい」 うっ、と優磨は言葉に詰まる。 「つか、夕飯、なに?腹減った」 優磨は話しをすり替え、拓磨も史哉も一安心、と胸を撫で下ろした。

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