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第94話

「しっかり掴まれ!結月!」 腕がちぎれるかと思う程の痛みと時間の中、遂には穂高の力も尽き果ててくる。 穂高は腹を括った。 ◇◇ ふわふわと柔らかく、暖かさの中、瞼が開いた。 雲の上?それとも、天国....? 結月が目を覚ますと穂高の腕の中に包まれていた。まるで蛹のように。 どうやら木々の中に結月の手を引き摺り上げられず、穂高共々、落ちたようだった。 「....穂高先生....?」 穂高の腕の中から顔を上げ、穂高を見上げた。 口も瞼も閉じ、穂高は眠っているかのように見える。 「...穂高...先生?」 結月は這い上がり、穂高の顔を間近で見た。 「穂高先生!穂高先生!起きて!穂高先生!」 何度、呼んでも、叫んでも、穂高は反応しなかった。 「起きて、起きてよ!穂高先生、穂高先生....!」 穂高の頭を抱え込むと、手のひらが血だらけになり、驚愕で目を見開いた。 「いやだ!穂高先生!目を覚まして、穂高先生ー!」 穂高にしがみつき、何度も声が枯れるまで泣きながら呼んだ。 『どうした?結月』 不意に、いつものようにそう起き上がって来そうなのに、と涙が止まらない。 「僕のせいだ...僕のせいで...」 その頃。 「え、あ、待って」 「どうした?史哉」 「蹴った」 「蹴ってねーよ」 「違う!お腹の子!」 「えっ、マジで!?」 慌てて、拓磨は史哉のお腹に触った。 「....動かねーじゃん」 「パパは嫌いなのかもね、そうだ!結月に報告しなきゃ、穂高にも」 史哉は浮き足立ち、早速、結月に電話したが、繋がらない。結月のスマホは崖から落ち、壊れていた。 「おっかしいなー。穂高に連絡するか」 穂高に掛けると、今度は電源が入っていない、という機械的なアナウンスだ。 「....どうなってんだ?」 「どうした?」 「繋がらないんだよ、2人とも」 「2人とも...?しょうがねーな、ちょっと待ってな」 拓磨は穂高の実家に掛けた。 「なんだって?」 「昼頃に2人で来た、て」 史哉と拓磨は顔を見合わせた。 「....嫌な予感がする....」 史哉の呟きに、 「俺も」 拓磨も同じだった。 すぐに2人は警察に連絡した。 穂高の車が見当たらない。穂高の車を探したらわかる筈だと。

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