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第56話 END

 唇に触れるか触れないかのすれすれの位置でそう云うと、「あっ」とちいさく叫んだ神野は一度悔しそうにその唇を咬んで、それからその先端をつんと尖らせた。 「いまも、……です」  云いなおして、素直に目を閉じキスをまつ。篠山は可愛げを見せた彼に微笑むと、そっとおやすみのキスをした。 「……たばこの匂い」  目を閉じたままの神野を抱きしめると、胸もとで不明瞭に呟かれる。聞きなおそうとするも、すでに眠りについていて。  最後に彼が口にした「好き」の言葉が、たばこの匂いのことなのか、それとも自分のことを云ったのかわからないままになってしまった。  きっと目覚めのキスをたのしみにして、彼はいまから素敵な夢をみるのだろう。  篠山の肩にぴったり寄せられた寝顔はとても安らかで。そのピンクの唇は柔らかく解けていた。                    END               

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