「え…？どういうこと？」 「きっと、人間で言えば慕情だろうな。イオリを誰よりも愛おしいと思っている」 「違う、それは息子だからでしょ」 「俺もそうやって己に言い聞かせてきたが…違うんだ。どうやっても誤魔化せなかった。俺はお前を愛している。人間で両性具有でも、その全てをひっくるめてイオリを愛おしく想っている」 「嘘…だ」 「嘘などつくか、曲がりなりにも俺は犬神だぞ。イオリが急に目の前から居なくなって、ようやく本音で向き合う覚悟ができた。これからは父子ではなく、俺の番(つがい)として傍に居て欲しい」 「番って…」 「ああ、言い方が獣臭かったな。人間でいえば、嫁御か」 嫁御と耳にした途端、イオリの頬が見るまに鮮やかな桜色に染まっていく。 そうして今度は忙しなく視線を彷徨わせだした。全く想像もしていなかった展開に、心がちゃんとついていけないのだ。 「嫁御…って」 ごにょごにょと口篭りながら、ちらりと上目遣いでオラガの顔を覗き見る。こちらを見下ろしていた彼と目が合い、堪らなく恥ずかしくなって視線を逸らすと、オラガが愉快そうに笑う声が聞こえた。 「俺が番では嫌か？やはり、父子の方が良いならそっちで――」 「嫌じゃ…ない。僕の気持ち、知っているでしょ？」 「お前の口からもちゃんと聞かせてくれ」 「…僕も、オラガが好き」 「ああ」 「オラガ……僕、今発情してて。だから鎮めて欲しい。オラガと交わりたい」 「良いのか？」 「うん。オラガ、愛してる…」 すんなりと口から出た言葉が、胸の奥に沈み込んだ重りを容易(たやす)く溶かしていく。重苦しさが消え、すっかり軽くなった胸の内にみるみる幸福感が押し寄せてくる。 オラガに触れる度に愛おしさが溢れ出して、そのまま蕩(とろ)けてしまいそうな心地がした。 「愛している、イオリ…」 「ん…ぅ」 優しく抱き締められながら唇を重ね、互いに見つめ合い、そうして再び深く口付ける。その動作の一つ一つが、イオリにはどこか夢見心地だった。 少し前までは、もう二度とオラガとは相見(あいまみ)えないとさえ決めていた筈なのに。 (オラガは、本当に僕で良いのかな) 首を擡(もた)げそうになる不安を、けれどもオラガの熱情に溢れた口付けが全て甘く溶かしていく。 愛おしさで息が詰まってしまうような錯覚すら覚えながら、イオリはただただオラガの愛撫に身を委ねた。 「あ…んっ」 「随分と甘い声で鳴くな、お前は。もうすっかり女子(おなご)になったか」 「やぁっ…。僕は男だもん…」 「まあ、こんな立派なモノも持ってるし…なぁ？」 「あぁんッ…オラガ、だめぇ」 鎖骨を舐められながら勃ち上がる魔羅に手をかけられて、イオリは激しく身を捩(よじ)って抵抗しようとする。 触れられてしまったら直ぐにでも達してしまいそうなほど、全身が酷く敏感になっている。