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第109話「暴き合う素肌」
蒸し暑い部屋の中は、弱くクーラーがかけてある。
鷹夜が空調に弱い事もあり、芽依が温度を高めに設定したのだ。
「、、ねえ、鷹夜くん」
「もう鷹夜でいいって」
「あ、癖で戻っちゃってた。鷹夜ー?」
「なに」
「見られたくないなら、俺のオナニー見る?」
「はあッ!?」
寝る準備が終わってから1時間程経っていた。
眠りにつけなかった2人は他愛のない話しをしばらくしていて、ちょうど話題が尽きて来た辺りで芽依がそう言ったのだ。
驚いた鷹夜は掛け布団代わりのタオルケットをバッとめくり、ベッドの下、カーペットの上の布団に横たわって天井を眺めている芽依を見下ろした。
「何言ってんの、、そう言う趣味の人?」
「ちっげーよ」
変な意味で胸がどくどく言っている。
「じゃあどした?イメージビデオ出すの?」
「出さんわ。そうじゃなくて〜、鷹夜がどうやったら諦めるかな〜って。俺と付き合わないって言う選択肢を」
「きゃっ!強引な人!、、じゃなくて」
それは置いといて、と手で何かを退かす動作をする。
「んなもん見せられても、、と言うか寝ろよ」
「嫌ならやめるよ。ちょっと提案してみただけ」
「、、、」
おやすみ、と小さく囁いて、芽依は布団を被ってしまった。
(芽依の、、オナニー、、)
勢いで「いらない」と言ってしまったが、と鷹夜は芽依に背を向けて考え始めた。
先程は確かに自分の性器だけを芽依に見られていて、鷹夜自身は芽依の勃起した性器を見てはいない。
ただ別に勃っていないふにゃふにゃ状態のそれなら、前に風呂で問題が起きたときに見てしまった覚えがあった。
(そうだった、1回見てるんだった)
勃っていないにしろ大きかったじゃないか、と今更思い出してまた顔が熱くなってくる。
彼はあのときはあんなに見られる事を拒否した癖に、今日は急に「オナニー見る?」と言ってきたのだ。
まったくもって、小野田芽依は行動も考えも予測できない。
(見たいか見たくないかって言ったら見てみたいけど、見てどうしろって言うのが分からん)
鷹夜からしてみれば、芽依が何を考えているのかが分からない以上、見てからの反応やリアクションは期待に添えない可能性が高い。
無論、芽依はそんなもの求めてもいないのだが、真面目な鷹夜としては期待に添えなかった場合、芽依が傷付くのでは等とそこまで深く考えてしまっているのだ。
(いやいやいや、面倒くさいな。聞くか?いやでも今更聞いたら、何か俺が物凄く、芽依のオナニー見たいやつって感じにならない?なるよね?うーん、、)
だが見たいか見たくないかと言えば、見たい。
「、、芽依」
「んー?」
「、、見ても何も反応できないよ、俺」
「そう言うの求めてたんじゃないよ。俺に慣れてくれたら、勇気も何もいらないんだってわかってくれるかなーって思ったの」
ゴロン、と寝返りを打った鷹夜と芽依の視線が交わる。
段々と目が慣れてきて、暗い室内でもしっかりとお互いを見つけられた。
「芽依と付き合うのに、何もいらないってこと?」
「そう。鷹夜が鷹夜でいてくれればそれでいいんだよってこと」
「、、、」
色んな部屋で家族が寝始めたのだろう。
家の中はシン、とした静寂で満ちていて、自分達のヒソヒソ声すら大きく響いてしまいそうで恐ろしい。
いつだかの夜のように、芽依が布団から這い出てズルズルとカーペットの上を四つ足で歩き、鷹夜の横たわっているベッドの側まで来てくれた。
「鷹夜」
こんな夜が、あと何度来てくれるだろう。
どちらとも何も言わずに唇が重なると、鷹夜は素直に舌を差し出して、それを芽依はゆっくりと時間をかけて優しく吸い、くすぐる様に自分の舌を絡めた。
「ん、ふ、、」
あまりにも甘く、優しい時間だった。
自分が日和にこんな時間を与えてあげられていた期間なんてあっただろうか、と鷹夜は改めて芽依の雰囲気や流れの上手な作り方に見惚れる。
「女の子扱い」ではなく、これは「恋人扱い」なのだろう。
丁寧に壊さないように、芽依は加減して触ってくれる。
「芽依、、ん、芽依」
「可愛い、好きだ、鷹夜」
鷹夜が、聞こえないよね?なんて小さく聞くと、芽依は薄く笑って「大丈夫」と返した。
家の中は物音ひとつしない。
チッチッチッと、目覚まし時計の秒針だけがうるさい。
「大丈夫だから、もう少しだけしたいよ」
「何したいの」
はあ、とお互いの息を飲んだ。
温かくて愛しい。
「何なら嫌じゃない?」
「ん、、オナニー見せて。俺も見せるから」
「嫌じゃない?」
「嫌じゃないよ」
鷹夜の意外な発言に、芽依は胸が躍った。
まさか自分から「俺も見せる」と言うとは思っていなかったのだ。
(ヤバい最高なんだけど、、)
熱い血が一気に全身に回っていくのが分かる。
ダクダクとうるさく波打ちながら足先まで巡り、体温を上げていって芽依を興奮状態にしている。
「脱げば良いのか」
「俺も脱ぐ」
芽依だけにさせるのも申し訳なくなった鷹夜は自分からいそいそとスウェットを脱ぎ始めた。
芽依はベッドの上に上がり、枕側に座った鷹夜と向かい合うように腰掛けて彼を見ながら持って来ておいた寝巻きの短パンを脱いだ。
トランクスとボクサーパンツ。
お互いにジッとお互いの下着を見つめた。
「何か、、」
「ん?」
「中学生みたいなことしてない?俺達」
鷹夜的に、毛が生え始めたのを見せ合う中学生のような気分がしているのだった。
向かい合ってお互いの股間を凝視している辺り、知能が低過ぎて逆に変な緊張と羞恥心を覚えてしまう。
「いいじゃん。若い子みたいに盛ろ?」
「カッ!!何だそれっ!エロゲの決め台詞かッ」
「鷹夜ってどんなゲームやってんの?」
ニヤニヤしながら芽依は見せつけるようにしてボクサーパンツを脱いでいく。
膝立ちしてスルン、と膝までパンツを下げると、鷹夜はその光景があまりにもいやらしくて心臓が止まるかと思い、Tシャツの胸のあたりをぐわし、と掴んだ。
「あ、、ぁ、」
ぶるん、と雄々しく勃起した芽依の性器が目の前で揺れた。
「っ、!」
暗い中でも分かるくらいに大きく、太い。
重さでピンと上には上がらず、鷹夜の顔の高さ辺りに向かって勃ち上がっていた。
「鷹夜」
「あ、、え?」
「勃ってるよ」
「見りゃ分かるよッ」
彼は顔を真っ赤にしながら芽依を見上げて小声で怒鳴った。
「俺じゃなくて、鷹夜が」
「えっ、、?」
そうして驚いて自分の股間を見下ろした。
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