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第115話「好きだよ」

「た、鷹夜っ?」 興奮の混じった芽依は鷹夜を見つめたまま、持っていたお茶のペットボトルをホルダーに雑に突っ込んだ。 「あーーッ!!もお何だよコレ恥ずかしいなあ今更!!」 鷹夜がバッと両手で顔を覆い、叫んだ。 指の間から見える肌が熱そうで、思わず芽依の手が運転席から伸び、彼の手首を掴む。 やはり、手首も熱かった。 「ちゃんと言って、!」 「断れる訳がない」なら、もう答えはひとつの筈だ。 「めんどくさ」 「そこ言葉にするのが大事なんだよ!!」 運転席から身を乗り出した芽依は必死で、鷹夜は押されながらもそんな彼を見てへにゃ、と弱ったように笑った。 「俺から言うの嫌だから先言って」 彼は頬を赤くしながら手で顔を覆うのをやめ、代わりに芽依の手を掴み返す。 「何回言わすの!?」 「イケメンは絵になるからなあ〜、芽依の良い声でもっかい聞きたいなあ〜」 「はあ!?」 芽依の顔も真っ赤だった。 背中にはじわりと汗をかいている。 「す、好きです!」 いつも通りの真っ直ぐで、ありきたりだけれど芽依らしいそのままの告白だ。 「本当に、大好き、、だから、俺と付き合って下さい」 遠くの建物の明かりが少しだけ車内に入っている。 微かなそれに照らされた芽依の顔を見つめて、鷹夜が嬉しそうに笑った。 どんなに綺麗な女優やアイドルを知っていても、芽依の中では鷹夜のそんな顔が1番愛しくて優しく、美しい笑みに見える。 このときが、芽依からすればやっと訪れた瞬間で、鷹夜からすればいい加減に覚悟を決めた瞬間だった。 これと言って、鷹夜の中の何かが覚悟を落とさせてくれた訳ではない。 もう自分に素直になってもいいだろうと思ったのだ。 この一回で人生が終わるような恋は鷹夜は絶対にしない。 そんな弱い人間ではない。 だったら、この馬鹿みたいに浮かれた、たまに自分を見失って暴走する男の手綱を握ってやってもいいだろうと思ったのだ。 「はい」 答えはシンプルにそれだけで、けれど芽依には充分すぎるひと言だった。 (やっと聞けた、、) (やっと言えた) 暗い車内で見つめ合い、どちらともなくキスをする。 柔らかいお互いの唇をくっつけると、小さく吐いた息が互いの歯に当たる。 芽依が角度を変えて何度もキスをして、鷹夜はそれにまた照れ臭そうに笑った。 誰も2人を見てはいなかった。 「っ、あーー、どうしよう嬉しい」 「付き合っても、対して何も変わんないからね?」 「それがいいんだよ」 ちゅ、ともう一度鷹夜の唇を奪うと、彼は困ったように笑った。 「好きだよ」 「、、俺も好きだよ、芽依」 優しく頬を撫でてやると、芽依はその手に擦り寄りながらうっすらと涙を浮かべていた。 「何泣いてんの」 「本当に嬉しい」 「ん、、待たせてごめんね」 ぽんぽん、といつものように頭を撫でると、芽依は涙を拭いながらコテ、と鷹夜の肩に額を乗せる。 「ありがとう、待っててくれて」 「ん、、本当にいいんだよね?俺の彼氏だよ?」 「いいと言うか、なりたいと言うか、、何かこの流れだと尻が良かったみたいに感じてるかもしれないけどそうじゃないからな」 「そこは、わかってる、ふふっ」 芽依が笑うと鷹夜の肩にその振動が伝わってきた。 「芽依こそいいんだよね?俺、一般人だし男なんだよ?」 わしゃわしゃと頭を撫でると、芽依が首筋にスリスリと頭を擦る。 大きい犬みたいだなあ、と鷹夜は小さく高鳴る胸を落ち着けながら芽依の頭に自分も擦り寄った。 「鷹夜がいいの」 ふわふわと芽依からいい匂いがする。 けれど、そう言えばこれは実家にある鷹夜が使っているシャンプーの香りだ。 つけている人間が違うだけでこんなに良い匂いに感じるのか。 「、、ん」 「あ〜〜、無理、もっかいチューしよ」 「甘えるなあお前」 「甘えるよ〜。甘えるけど、もちろん鷹夜のことグッダグダに甘やかしてでろでろにするから覚悟しといて」 「そんなカッコつけられる?」 「できますよ」 「んむっ」 ちゅっ、とリップ音がした次の瞬間、深く口付けられる。 「んっ、」 改めて舌を絡め合うキスをすると、何だかむずむずと恥ずかしくなってきた。 鷹夜が「もういい」と芽依の肩を押すのだが、まだ満足しない芽依はしつこく鷹夜の舌を吸ってくる。 「ん、芽依っ、んっ」 「ん、、ごめん、もう少し」 「ん、ふっ」 生暖かい舌の感触を感じると、鷹夜はどうしても昨日の夜のできごとが頭の中に蘇ってしまった。 自分が他人に触られた事がなかった筈の部分をいきなり芽依に舐められ、あまりの気持ち良さにだらしなく喘いでしまった事だ。 そのせいで、徐々に徐々に身体の中心に熱が集まってきている。 「め、芽依、ほんとやめて、ごめん」 「ん、どした?いや?」 ちゅ、と唇を離し、鼻先が擦れる距離で芽依が鷹夜の唇を物欲しそうに見つめながら聞いた。 「そうじゃなくてッ、、おっさんの股間が保たないから!」 「、、、え?」 ヒュン、と芽依の視線が鷹夜の股間に落ちた。 「、、、」 明らかにそこはふっくらとズボンの布を押し上げている。 「、、可愛い」 「何でそうなるッ!」 「え〜〜、せっかく鷹夜が勃ったのにこのまま運転して帰んの〜〜、無理〜〜!!ラブホ行きたい」 「帰んだよッ!」 「えー、もったいなくない?ここでフェラする?俺昨日からずっと鷹夜のちんこ咥えたいんだけど」 「もういやだ何なのこの子ッ!!やめて!!無理!!」 迫ってくる芽依の顔を思い切り両手で押し返し、鷹夜は涙目で車内に響く声で叫んだ。 対して芽依は怪しげな声で笑いつつ、数秒それを続けてから、鷹夜の股間が段々と落ち着いてきたのを見てやっと諦めて身を引いた。

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