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第123話「噛み合わない感覚」

芽依に手を引かれて、ボクサーパンツだけ履いた鷹夜は彼の家の寝室に入った。 (ヤバい、ヤるんだ) 寝室はやたらと整えられていて、いつもは起きて剥いだときのままの形で丸まっている掛け布団がきっちり綺麗になっている。 先程、鷹夜が洗濯機にTシャツを放り込んでその他の溜まっていた洗濯物も見つけてポイポイと追加で中に入れている最中、芽依はベッドメイキングをしていたようだ。 その変わりようにごくっと唾を飲み、緊張しきった足取りで鷹夜は芽依に連れられ、ベッドのそばまで来た。 「我慢が、できない」 「は、はあ。それは、その、どう言う我慢でしょうか」 「だから、、あの、セックスを我慢、て意味の」 「あっ、そっか、うん、、うん」 芽依はベッドに座ると、突っ立って顔を真っ赤にしている鷹夜に両腕を伸ばした。 「来て、鷹夜くん」 「ッ、か、感じないかも、お尻」 「感じなかったらそれはそれでいいんだって。ゆっくり、やろ」 芽依も顔が赤く、いっぱいいっぱいになりながら鷹夜に向かって優しい口調でそう言った。 不安や心配ごとを次々と口に出す彼が自分と同じように緊張しているのだと知って嬉しかったのだ。 「キスしたい」 芽依も緊張している。 鷹夜の手の震えを感じながら頬に触れると、お互いに緊張しながらもゆっくり唇が重なった。 掴まれた手を引かれ、鷹夜は芽依の膝に跨るようにベッドに乗る。 「あっ、」 ゴリ、とお互いに勃起したそれが擦れ、パンツ1枚にしか守られていない鷹夜は思わず上擦った声が漏れた。 「ん、芽依、脱げよ」 「うん、脱ぐね。鷹夜くん可愛い、好きだよ」 「んっ」 目の前に膝立ちしている鷹夜の乳首に吸い付き、芽依は着ているスウェットのズボンに手を掛ける。 既に勃起して布を押し上げており、ボクサーパンツだけの姿になるとやたらと大きいそれがグン、と勃ち上がっているのが鷹夜から見てもよく分かった。 (で、デカいな、やっぱり) あれが尻に入るのか、、? 鷹夜は少なからず身体を強張らせた。 (絶対に無理だ、あんなデカくて太いのケツの穴になんか入るわけない) ダラダラと冷や汗が浮いてきて、鷹夜は今まで乳首を吸われて感じていた筈の快感が吹っ飛び、全部が緊張に変わってしまった。 「鷹夜くん、、?」 するん、と脱いだズボンを床に落として、芽依は喘がなくなった鷹夜を見上げた。 そしてカチンコチンに硬い表情をして凍りついている彼に気が付き、慌ててその身体を抱きしめた。 「大丈夫?!どした!?」 「は、入んないよそれ、デカ過ぎるよ竹内メイ」 「俺のちんこを竹内メイって呼ぶのやめろ。ふざける余裕あるんじゃん」 「ねーよ!!でけーよ何だよこれ!!お尻の穴裂けちゃうよ!!」 「大丈夫!!あのっ、、ちゃんと、買ったんで」 「え?」 「こういうの、買ってるんで」 「、、、」 ヒョイ、と芽依が自分の使っている枕を持ち上げる。 きちんと見えないように隠されていたそれらが一気に鷹夜の視界に写り、彼は困惑した。 0.02ミリのコンドームの箱、「潤い」と大きくラベルに書かれた潤滑ゼリーのボトルと白い小さめの電マが一本置かれている。 準備は万端にできていた。 「これ、は、、」 「無理矢理いれるわけないでしょ、、ゴムつけるし、女の子と違って濡れないからアナルにこれ塗るし、何なら中に入れて慣らすし、鷹夜くん穴舐められるの嫌じゃないなら電マで刺激するのも好きかなってこれも買っといた」 順番に手に取り説明をする芽依。 あまりにもきちんと色んな事を考えて用意されたものたちを紹介され、鷹夜の頭の中はますますひとつの言葉で埋まっていった。 (感じないとまずい) やっと乳首がビリビリと何か感じるくらいには成長したと言うのに、今度は尻の穴問題が浮上している。 穴の外側ならまだしも、中はまだまだ未知だ。 そして何より、自分で自主トレーニングをしていた際、彼は何度か穴に指を入れようとしたが全く入らず、勃っていた性器が萎えたりした事を思い出してしまった。 (まずいぞ、まずいまずいまずい。中で感じられるのか俺は。そもそも中に入れられるのか?ぬるぬるにしたところでこんな小さい穴に、、) あんな大きいものを、と再び芽依の股間の勃起したそれを眺める。 (む、無理無理無理。絶対無理) 「あれ?鷹夜くん?鷹夜くーん?おーい?」 「あ、う、うん。うん、聞いてる」 まずい状況だった。 思っていたより緊張してしまった三十路の男は、恋人の声がまったく頭に入ってこなくなっている。 何よりも感じなかったときの芽依の反応が気になり、愛想を尽かされるのではないかと考えてしまってネガティブが止められない。 そもそもこんなにたくさんものを買っていて向こうの気合いは十分なのに、鷹夜はできたら今日は尻の穴を慣らす程度で終わらせられないものかと思案していた。 (やっべーーーーよ、これやっべーよどうしよう) 良くも悪くも、昔から人一倍強い責任感が今回ばかりは裏目に出ていた。 感じられなかったら芽依を傷付けるが、出来る限りは彼が望む速度で関係を深めるべきだ。 自分のペースだときっと遅過ぎる。 しかしそうなると今日中、しかもまさに今、尻の穴に芽依のあれを入れる事になる。 「鷹夜くん?」 鷹夜の頭の中はぐーるぐーると色んな事が回っていた。 何を大切に、どの気持ちを優先すべきかが分からない。 付き合ってから今日までで決めてきた「恋人ルール」には、セックスに至るまでの過程なんて決めていなかったのだ。 「あっ、えーと、どうしよう。入れるなら、芽依のも舐め、る?」 「えっ?いや、いいよいいよ。俺はいい、キツいでしょ」 「いや、舐めるよ。俺ばっかりさせてたから」 「え、え!?嘘でしょ!?いいって、鷹夜く、うわっ!」 グイッ 「ちょっと!!」 ベッドから降りて床に座り、無理矢理ボクサーパンツを引っ張ると、芽依の性器が一気にブルンッと下着から出て鷹夜の目の前に現れた。 (うわ、すげー勃ってる、、ガチガチ) 外気に触れながらも勃ち上がる太い肉棒に、鷹夜は一瞬怯んだ表情をした。 (入るわけない) 30年も女が好きな男だったのだ。 神経質と言われるくらい真面目で、損してばかりだなと言われるくらいお人好しで、高校から付き合い続けてきたたった1人の女性以外、愛した経験はない。 そんな彼が、今の状況やこれからする行為に対して「怖い」と言う感情を抱かない訳がなかった。 「鷹夜くん、無理しないで」 「大丈夫」 だからと言って引けない。 5歳も歳下の完璧過ぎて自分と釣り合わない様な人間が愛してくれているのだから。 この先の行為を望んでいるのだから、やらないと言う選択肢はない。 「ぁ、」 「っ!」 チロ、と小さく舌を出した鷹夜は、芽依のそれの先端をほんの少しだけ舐めた。 「あ、、」 芽依から驚いたような小さな声が漏れる。 (大丈夫だ、大丈夫大丈夫大丈夫、芽依が喜んでくれるから、大丈夫。芽依がやってたみたいにすればいいだけ) 両手で優しく掴んだそれに、今度はべろんと舌を這わせた。 「っ、、鷹夜くん、やっぱりいい。やめて、大丈夫だから」 「ん、」 「鷹夜くんッ!!」 (いける、大丈夫だ) 先端から垂れていた液体を舐めてしまい、一瞬嫌そうな顔をしてしまったものの、さほど味がしないと気がついた彼はそのまま亀頭を口に入れた。 「鷹夜くん、ごめん、本当にやめて、お願い」 「ん、」 「鷹夜くん、ごめん、鷹夜くんてば、ねえ」 「ん、、?」 下手くそなりに頭を動かして芽依の性器を愛でようとした瞬間、口の中に違和感を感じた。 (あれ?) やっと頭に入ってきた芽依の声でそれを口から出すと、握っている先程よりも明らかに縮んでいた。 「、、え」 「ごめん、大丈夫だからもうやめよ?ね?」 「な、何で、、あれ?ごめん、上手くやるから」 「違う、俺のせいだから」 「ちょっと待って、芽依がしてくれたみたいにするから、」 「鷹夜くん、ねえ」 かぽ、かぽ、と口から出し入れしてみるも、どんどんどんどん小さくなる。 小さくなったところで大きいは大きいのだが、勃起していたときのバキバキに太く硬いものではなく、ふにょん、ふにょん、と折れ曲がってしまう柔らかさになってしまった。 (何で、あれ?あれ?) 「鷹夜くんほんとごめん、あの、」 (もしかして、、俺にフェラされて萎えた、、?) 必死に口に入れて揉んだり吸ったりしていたのだが、鷹夜はピタ、とそれをやめて口から出して確認する。 やはり、ふにゃっふにゃになっていた。 「、、、」 あまりにもショックだった。 恋人のそれが自分の手の中で萎えていくのは。 「鷹夜くんごめん、ちょっと、、あの、ゆっくり、話し、」 「うっ」 「え?」 鷹夜を立ち上がらせようと二の腕を掴んでいた芽依は、苦しそうなその声に眉間に皺を寄せ、「まさか」と彼を見つめた。 「ゔッ、、ごめ、んッ」 「あっ、た、鷹夜くんッ!!!」 いきなり立ち上がり、鷹夜は一目散に寝室を出て行った。 バタバタと言う足音は徐々に遠ざかり、トイレのドアの開く音が聞こえた。 「う"ぇえ"ッ、、ゲホッ、、っう、ゲホッゲホッ」 閉める暇もなかったのだろう。 鷹夜がトイレで嘔吐する音だけが、虚しく家に響いた。

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