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第129話「真面目な話しは一瞬で終わる」
「あったか〜」
芽依が湯船にお湯を張っておいてくれたおかげで、鷹夜はザブン、と風呂に浸かって身体を温める事ができた。
風呂好きとしては家賃23万の部屋の風呂は広くて足が伸ばせて最高だ。
「今度銭湯とか行くのもいいな!あ、行けないか。竹内メイだもんな」
「ねえ人のちんこ見ながら竹内メイって言うのやめろって言ったよね?ねじ込むぞ」
「ど、どこに何を、、ごめんごめん」
お決まりのようになってきたおふざけが終わる。
先に身体やら頭やらを芽依の手によって全て洗われた鷹夜はゆったりと湯船に浸かり、追いつくように芽依はさっさとシャンプーを手に取って頭を洗っている。
ちなみに、尻と性器すら手で洗われて少し複雑な気持ちになったのは言うまでもない。
換気扇の音がボーーッとうるさく、浴室はよく響くものの、2人は少し大きい声で会話していた。
「鷹夜くん、そうやって前髪あげてた方がカッコいいね」
「え?そう?ありがと」
「思ってねーだろその返事。何でいっつもワックスでピシッとしてんの?」
話題は鷹夜の髪型の事についてに変わった。
ワックスと言っても少し整うくらいのもので、つけてべっとりかっちり固まると言う話しではない。
ただ作り込み過ぎた73と言う感じが出てしまっていて、芽依には前から少し鷹夜の髪型が疑問ではあった。
休日のセットも何もしていない無造作の方が若く見えるし、何より自然体で童顔が目立って可愛い。
風呂に入っている最中は前髪を上げるらしく、オールバックになった鷹夜を初めて見た芽依は改めて三十路の童顔の恐ろしさを目の当たりにしていた。
「可愛い系の男性アイドルがコンサートのソロ曲でちょっと大人でセクシーな曲を歌うときの髪型のギャップ感」と言う感じがもろにある。
「あー、、若い頃は何もつけてなかったんだけど、上野さんにうだうだ言われてから付けるようになった」
「うわあ。その上野さんてなんなの?鷹夜くんのこと好きなの?」
「ある意味好きなのかもね。うそうそ、目障りすぎて目に付くんだよ。だから何かと言われんの。で、言われるのが嫌だから言われたことそのままやってんの。俺も」
はあ、と重たいため息が思わず溢れてしまった。
「、、あ、ごめん。ため息あんまつかないようにしてんだけど、つい」
「俺にそこまで気遣わなくていいよ。彼氏なんだし、別に引かないし。ちょっとそっちズレて」
「ん」
頭も身体も洗い終わった芽依が湯船に入ると、流石にお湯が湯船いっぱいになって外へ流れ出した。
ザバーッと出て行くお湯を眺め、鷹夜は浴槽の縁に手を置いたり、流れていくお湯をせき止めたりして遊んでいる。
「、、その内辞めると思う」
「え?」
鷹夜の低い声が聞こえた。
「会社。その内としか言えないけど」
「うん。俺、養うからいつでも辞めて」
「絶ッッッ対言うと思った!!違う会社に行く事になったら辞める!!」
「チッ」
「舌打ちやめなさい!!お兄さんそう言うの嫌いよ!!」
これからもずっと一緒にいるだろう。
何となく、ふとそんな事を今更になって感じた鷹夜は、今考えている範囲での自分の仕事のこれからを、流れ的に仕事の話しになったのもあり、軽く芽依に伝えておいた。
何故今だったのかは分からないけれど、今ならば、鷹夜は芽依との「これから先」がちゃんとあるのだと思えたのだ。
「まあ、俺もこれからのことはよく分かんないけど、とりあえず、会社辞めて何か考えたいとか、今は休みたいとかあったらさ。この家でしばらく一緒にのんびりしようよ」
「え、?」
「8年だっけ?ずーっと嫌がらせに耐えて仕事してきたんだから、すぐ次の会社!はい仕事!ってやらなくても、半年は休むとか、1年は休むとか、していいじゃん」
湯船の中で向かい合わせに座った2人は、芽依が脚を広げ、鷹夜が脚を閉じてお互いに伸ばしている。
鷹夜は芽依の腹の上に脚を組んで置いている状態だ。
「そのときは、そのお休みの時間全部俺にちょうだい」
「そんなん来るかなあ」
「もしもでいいから」
「んー。まあ、もしもがあったらな。生活費は絶対出すけど」
「頭硬いなあ〜〜俺の彼氏真面目過ぎんだよなあ〜〜」
「悪かったなあ小僧」
ゲシツ
「ウッ」
軽めの踵落としを腹に決めると、芽依は低く唸った。
「、、と言うかさ、芽依」
「ん?」
40度のお湯はそこまで熱くはないと思うのだが、長く浸かっているからだろうか。
真っ赤な顔をした鷹夜が、まるで恐る恐る視線を上げて、対面にいるキョトンとした顔の芽依を見上げた。
しばらく口をもごもごさせてから、意を決したように小さく何かを言う。
「、、なくて、いいの」
「え?」
聞き取れない。
換気扇の音がうるさい。
「ごめん、なに?」
「な、舐めなくて、いいの?」
「、、、」
ゆっくり穏やかに入浴する雰囲気になっていたのもあり、芽依はそれを我慢しようと思っていた。
先程一緒に性器を擦ってオナニーしただけでも十分に満足だったからと言うのもある。
けれど彼の恋人はやたらと真面目で律儀で、自分からそんな事を言い出してしまった。
「どこを?」
意地の悪い男は、嬉しそうに彼に聞き返した。
「ッ、、俺の、尻の穴」
「舐めていいの?」
「ンッ、、!」
スル、スル、と腹の上に置かれた鷹夜の足に指先を滑らせるように触れる。
持ち上げて甲にキスをして、調子に乗って煽るように指に舌を這わせ、温まった足をぐちゃぐちゃに舐めていく。
「あ、やめっ、あっ」
「アナル、舐めさせて」
こうしたいんだよ。
とでも言うように、足の指をいやらしい舌使いで舐めた芽依は、鷹夜の目をじっと見つめながら言った。
「ん、、あの、」
「ぐるん、てできる?うつ伏せ」
「え、ここで?」
「うん」
「あ、、」
困惑したまま、鷹夜は体を捻って湯船の中で四つん這いになる。
尻を芽依に向ける形になったこの時点で、旅行の夜を思い出してしまって性器が少しだけ勃起していた。
「そこに手、かけててね」
「え?うわっ!」
下半身が持ち上げられ、下に芽依の身体が入ってくる。
体育座りした芽依の膝の上に跨るように乗せられると、彼の目の前、顔の高さに尻だけ突き出したポーズになってしまった。
「何これ!!恥ずかしいんだけど!?」
「お尻かーわーいーいー!ぷりんっ」
パシンッと軽く尻たぶを叩かれ、鷹夜の身体がビクンと跳ねた。
太もも同士を重ねるような格好は無防備過ぎるうえ、鷹夜は湯船の縁にしがみついて溺れないようにしていないと、腰が折れて頭がお湯に浸かってしまいそうだ。
「ふざけんなって!芽依、アッ」
身体が温まっているせいだ。
芽依の舌が、今日は冷たく感じる。
「ま、って、溺れ、るっ」
「大丈夫。支えるから」
「嘘、つけ、んあっ」
彼の舌が、鷹夜のそこを舐め上げた。
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