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第八章・7
彩人のベッドに移動して眠りに就いた心路を、研悟は優しいまなざしで見ていた。
「僕は本当に、本気でこの人を好きになっちゃったんだなぁ」
恋なんて、自分の人生に無縁だと思っていたのに。
だのに、子連れのΩ男性と恋に落ちるなんて。
「決戦は金曜日、だな」
心路のパートナー・凌也。
まずは奴を、心路から引きはがす。
もう二度と手が出せないように、完膚なきまで叩きのめす。
「同じα同士だ。手加減なしで行かせてもらうぞ」
心路の気持ちが時折ゆれることは、承知している研悟だった。
仕方ない。
一時は、子どもを成すまで愛し合った仲なのだ。
綺麗さっぱり忘れるなんて、無理な話だ。
それを知りながらも、丸ごと心路を愛していた。
過去の男の影に怯えながらも、どこかで幸せの可能性を捨てられない弱さ。
「それも含めて、心路なんだから」
だからこそ、僕はこの人を愛したんだ。
恋はバラ色だけじゃない。
僕は、そこまで無邪気じゃない。
「大人の恋の戦いを、しようじゃないか」
独り言ちて、研悟は眠れぬ夜を過ごした。
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