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第十章・7
ウェットティッシュで身体を清めながら、研悟は心路とピロートークを楽しんだ。
「新婚旅行はどこにしようか。行きたいところ、ある?」
「ぅん……。彩人も楽しめるところがいいな」
「そうだなぁ」
彼の隣に身を投げ出し、研悟は腕を頭の下で組んだ。
「思いきって、ヨーロッパに行こうか。芸術の都めぐり」
「素敵。スケッチブックも持って行かなきゃね」
目を輝かせる心路を、研悟は抱き寄せた。
「嬉しいな」
「新婚旅行が?」
「いや、ようやく君がフランクに話してくれるようになった」
あ、と心路は口に手を当てた。
「ごめんなさい」
「いや、やめないでくれよ。僕たち、家族になるんだよ?」
家族。
私と、彩人と、研悟さんが家族。
「嬉しい!」
心路は、研悟の腕にしがみついた。
「赤ちゃん、欲しい?」
「それは彩人次第だな。訊いてみようよ、兄弟が欲しいか」
「きっと、欲しいって言うよ」
「名前は何にしようか」
「それは早すぎ」
ああ、この人とならいくらでも未来が見られる。
二人は幸せな未来を、心のカンバスに描き続けた。
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