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君を腕に抱く幸せを

「……これ美味しいね」 「でしょ」  翔太を庇って出来た傷は、まだ治りきっていないものの。  週末に小さな荷物を持って泊まりにきた司に、あの時散々笑って自分もお腹が空いたから、と言う理由で稔が作ってくれた、じゃがいもとベーコンのチーズ炒めを作って出してみたら。  ぎこちなかった空気は、一気に丸くなって、いつもの顔で微笑ってくれた司にホッとする。  むぐむぐと頬張りながらニコニコしている司は、やっぱり少し痩せたようだ。会えなかった間に、司もオレと同じように辛い想いでいたんだろう。 「いっぱい食べてね。またちょっと痩せたでしょ」 「…………」  もぐもぐしたままで目を逸らした司の頭に手を載せて、わしわしと撫でてやりながら、ごめんねを紡ごうとしてやめる。  この件はおあいこだと、お互いに理解しているから。 「この土日は、いっぱい食べる日にしよう」 「ぇー、いっぱいー?」 「いっぱい」 「……」 「じゃ、ちょっとずつをたくさん」 「……」 「とにかく、痩せた分だけでも戻さなきゃ」 「……そうだけど……」  もごもご口ごもった司に、気づかれないように苦笑した後。 「だって司、折れそうだもん」 「折れないよっ、そこまでへなちょこじゃないよ」 「そう? だって」 「----っ」  ぎゃんぎゃん怒る司を、そっと抱き締めて。ぴたり、と固まった司の耳元で、からかうように笑う。 「オレが全力で抱き締めたら、折れそうなんだもん」 「っ……」 「でも抱き締めちゃうけどね」 「----っ」  ぎゅうっ、と効果音付きで、少し強めに抱き締めたら。 「…………----もっと」 「ん?」 「……つよくても、大丈夫、だから」 「……ん?」 「もっと」  ぎゅって、と。  小さくて照れた声が、一生懸命にそう囁いて、オレを抱き締め返してくれる。 (----あぁもう、ホントに……)  とどまることを知らない愛しさが、溢れ出て溺れそう、だなんて。  心の中で盛大にのろけながら、りょーかい、と囁き返して、抱き締めた腕に力を込める。  机の上に置いたおかずの、チーズが冷えて固まっていくのを見つめながら、だけど今はこっちが大事、と。  久しぶりの抱き心地を思う存分堪能することにした。

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