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関係
この出来事があってから、おかしくなってしまったのは俺の方だった。
この前まで女の子にモテてる自分が好きだったし、カジュアルな関係を楽しんでた。
だが、もうそんなものに興味がなくなってしまっていた。
実際、女の子と肉体関係になっても思い入れを抱けなかったのは、きっと既にその性的嗜好だったのかもしれない。モテているという自尊心に酔っていただけなのかもしれない。実際生意気だった。
でもあれからずっと気になるのは大河のことだった。
だが、大河は変わらず友達でいる。
二人っきりになってその空気が流れそうになると、逃げる。俺はすっかりどうしていいのかわからなくなっていた。
季節は冬になっていた。
クリスマスシーズンが近づいていた。
俺は、あのナレーションの仕事以降、ちょっとずつ、声を入れる仕事をもらいだしていた。
また、英語が堪能と言うことで、声優の英語発音をみたりもしていた。
大河は変わらず週に3日はアルバイトをしていた。
クリスマス当日、大河のバイトが休みになったと連絡をくれた。俺は、大河の家にシャンパンとチキンを持っていくことにした。
家について、二人でシャンパンを飲む。シャンパングラスなんて洒落たものが学生の部屋にあるわけでもなく、二人でコップで飲んだのを覚えている。
テレビの近くにクリスマスカードが落ちているのが見えた。
「治、今日はクリスマスなのに、よかったのか?
女の子の誘いがあったんじゃないのか?」
そう聞かれた。
「いえ。ないっす。俺、あれから全員
女の子の番号携帯から消しました」
「え?!なんで!?」
「それは・・・もう興味なくなりました。
大河先輩以外興味ないっす」
俺は精一杯の勇気を持って言った。
「治・・・」
「先輩には亜希子先輩がいるのは知ってます。
でも・・・」
そう言った時、大河に押し倒された。
気がつけば、組み敷かれて、唇を奪われていた。
そのまま2度目の夜を過ごした。
俺は大河を無茶苦茶に抱いた。
気がつけば夜中2時を過ぎていた。
「治、俺と付き合うか?」
裸のままベッドに横たわって大河が聞いてきた。
「え?でも亜希子先輩は?」
「あのクリスマスカードに、
あと三年は日本に帰らないって書いてある。
俺らの約束は、一年で帰ってこない時は、
お互いを束縛しない。いい人がいたらそちらを
優先するっていうものだったんだ。
亜希子は強い女だからな」
「・・・それって・・・」
「ああ、俺もお前を優先するよ」
そうして、俺と大河は恋人になった。
それから3年間は、ほぼ一緒にいたのではないかと言うくらい濃厚な時間を過ごした。
変わらず二人で出かければ、女は寄ってきた。
だが、俺らはもう興味がなかった。
違うな。
俺はもう興味がなかった。
大河は4年を卒業し、大手化粧品会社で働き出していた。俺はあのままナレーションの仕事を続け、そのまま声優の仕事もするようになっていた。演技をするのに最初は苦労したが、なかなか素質があったのか、すんなりいけた。
この頃に芸名をつけたのだ。
シナトラの声のように・・・と今は言っているが、本当は大河の名前からとったのだ。
俺も大学を卒業し、付き合って丸3年が経とうとしていたある時、大河と睦あった後、大河が言ったのだ。
二人が付き合っている証拠が欲しいと。
今考えればこの行動がこの後の俺たちの別れの前触れだったのかもしれない。
その時、俺は大河の舌にピアスを開けた。
俺は痛いのは勘弁と言って、その代わり名乗る名前を”大河(タイガ)”を日本語にした虎にすると言った。だが名前がトラでは猫みたいだと言って、”治”の頭文字である”お”を男らしさとして付け加えて”トラオ”にすると約束をしたのだ。二人の名前を合わせたモノなのだ。
そして、お互いの忙しさが増し、なかなか会えない時期が続いた。月に一度ゆっくり会えればいいくらいになっていった。
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