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亜希子

亜希子の手術が成功したというメールをもらったのは、その2日後だった。 残念ながら、子宮は全摘になったことも書かれていた。まだ、面会はできないが、術後一週間後くらいで少しの面会はできるようになるだろうとの事だった。 だから8日後の昼に面会に行く事を約束した。 8日後、治は亜希子の入院病棟にいた。 「霧島君、久しぶりだね。活躍してるんだって?」 「亜希子先輩、無理しないでくださいよ。  ゆっくりしてください」 「ふふふ。みんなすごく気を遣ってくれる  モノだから、私ったらすっかりお姫様気分よ」 そう言って笑う。 そうなのだ、この亜希子と言う人は、強い。 そして、自己主張をはっきりする。見ていて清々しいくらい気持ちがいい女性なのだ。 「まさか、霧島君が声優なんて思わなかったなー。  歌も上手だったし、英語も堪能だったから、  そっちにいくのかなーなんて思ってたのだけど、  声がいいって言ってた大河の言う通り  声のお仕事に就いたのねー」 そう言ってまた笑う。 「先輩、聞きました。手術大変だったんですね。  もうしんどくはないんですか?って、  もちろんしんどいですよね・・・。すみません。  馬鹿なこと聞いちゃって・・・」 「ふふ。いいのよ。 癌だってわかった時は流石に落ち込んだし、その前には流産もしてるから、もう気分最低のどん底だったけど、大河がついていてくれたから、大丈夫。 知ってるでしょ?大河の優しさ。今はあの時お腹にいた子が知らせてくれた事なんだって思う。 縁って言葉があるでしょ?全てのことには理があって人の縁に救われるって私は思ってるから、精神的にしんどい時はあったけど、手術も今は成功したし、あとは体を治すことがミッションだって思ってる。 まだ傷は痛いし、抗がん剤治療がはじまるし、大変だけど、負けないって決めたから私は大丈夫。 ただ、私が心配なのは大河の方。 変に頑固で、優しすぎる男だから。 霧島君、大河のこと、たまには連れ出してやって。もうこの一年、あの人が笑ってるところ、私見てない気がするの。それは私にとっても辛いから・・・・」 ああ、この亜希子という女性はなんて強いのだと、また俺は再確認してしまう。 「霧島君、聞いてる?たまには大河を連れ出してよ。   それは私はできないんだから」 俺は頷いた。 「霧島君、そろそろ、眠くなっちゃった。ごめんね久しぶりに会って、もう少し話したかったのだけど・・・」 「いいえ。亜希子先輩、顔が見れて嬉しかったです。 大河先輩のこともわかりました。また見舞いにきます。絶対元気になってくださいよ!!」 そう言って病室を出た。 ちょうどそこに、大河が飲み物を買って戻ってきたようだった。 「亜希子先輩、今眠られました」 「そうか・・・。ありがとうな・・・治」 「先輩、またバーの方になるだけ顔出します。たまには息抜きに連れ出せって亜希子先輩に今お願いされました。だから、たまには息抜きしましょう」 大河はふふっと苦笑いをして、コクリと頷いた。

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