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(とまぁ…こんな感じで出てきたはいいものの)
「やっぱ、不可能に近いよなぁ」
見つけた宿の、固いベッドに倒れこむ。
ただの不可能じゃなく限りなくゼロに近い不可能。
こんな広い世界で、1日しか人々に覚えられてない奴をどうやって探しゃいいんだ?
『可能性に賭ける』と、あの日俺は言った。
でも、西へ東へひたすら旅を続けて早5年。
気付けばもう23歳になっていて、それなのに全くと言っていいほど証拠もなにも掴めていない。
(なぁ、女神様よ。
こんなもん残すなら少しは手加減してくれよ)
未だに、心の中の声は色あせない。
初めて聞いた時と同じ大きさで…ずっと俺に〝覚えていて〟と囁いている。
「いい加減……教えてくれよ」
お前は誰なんだ?
なんで俺のことをこんなに強く想っている?
俺と一体…どんな関係だったんだ?
優しいこの声は、恐らく男。やや高めの子どもだ。
ということは、きっと俺もそれくらいの年齢の頃そいつと一緒にいたんだと思う。
同じ孤児院の奴か…それとも……
(なぁ、お前名前なんて言うんだよ)
俺、本当に思い出せないんだ。
お前に会ったら真っ先に名前が呼んでやりたいのに。
「この街もほぼほぼ話しかけたが、別に変な奴は見かけてねぇようだしな」
(これで一旦湖と端っこの村まで行って何もなかったら、折り返すか)
あぁ、また無駄足か。次は何処へ行こう?
なにか収穫できるものがあればなぁと思いながら、クアァと欠伸して目を閉じた。
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