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「あれ? お兄さんって弟いる?」 「………は?」 それは、朝早く。 街を出る門の前で、花売りの少女に掛けられた言葉。 「ぁ、違うかしら? でも凄く似てる子がいたのよ!ふふふっ」 (似てる、だと……?) 一体 誰に?? そんなこと、これまで一度も言われたことはーー 「……っ!! おい、そいつ!そいつどっち歩いて行った!? どんな奴だったか覚えてるか!?」 「ゎ、え? ちょ、落ち着いてお兄さんっ!?」 (ーーこれだ) これだ、これだこれだ!きっとあいつだ……!! 間違いない!! 勢いよく体を揺らしてしまい「ごめん!」と手を離す。 「はぁぁ……もう、やっぱり知り合いだったのねっ? どうせあなたが寝坊しちゃったんでしょ!まったく…… あっちに向かって歩いて行ったから、早く追いかけた方がいいわ? どんな奴っていうのは…そうね……なんだか凄く不思議な雰囲気で……… あ、〝綺麗だね〟ってお花を買ってくれたのよ! ほら、この花っ!!」 「っ、そう…か、そうなのか。わかった、ありがとな!! ……っと、俺も何か花をーー」 「もうっ!そういうのはいいからさっさと弟追いかけなさい!」 「は、はい!!」 自分よりずっと小さな子に怒られ、慌てて教えられた方向に走っていく。 〝弟〟 (弟、か) 俺には…もしかして弟がいたのだろか? それとも例の歳をとらないというやつで、実は同い年だったりとか? わからない、けれど…… 「ーーっ!」 今までの、どれよりも有力な情報。 ずっと探し求めていた人物が、この先にいるかもしれなくて。 全力で、湖とその先にある村へ向かった。 「あんたとよく似た、不思議な雰囲気の男……? いや、見てねぇな」 たどり着いた、この世界の一番端にある小さな村。 人口は少なく老人が多い田舎で、静かな雰囲気が漂っている。 すぐに、道端の老人へ声をかけた。 「思い出してくれよ、ほらこの顔。見たことあるだろ?」 「あぁ…? お前さんの顔なんざ初めて見たよ。 それに人探しなら他をあたんな。この村には、ここ最近だぁれも訪ねて来とらん」 「な……誰、も?」 嘘だ。 だって、あの子は確かにこの村の方向を指差した。それなのに誰も訪ねてないだって? 日にちは? あの子が覚えてるってことは、まだ1日経ってない。皆の記憶にも残ってるはずだ。それなのに…どうして…… もしかして、俺の方が先に着いたのか? 誰ともすれ違わなかったのに? そんな馬鹿なーー 「……ーい、おい、あんた?」 「っ、ぁ、悪い…… なぁ、今日この村に泊まりたいんだが、宿ってあるか?」 「あぁあるぞ。あそこにいる婆さんに聞きな」 「助かる」 宿を取ったら、一度湖へ戻ってみよう。 それでダメだったら、またここに戻って村人へ話を…… グルグル グルグル 一気に変な汗が出てきて、懸命に深呼吸を繰り返した。

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