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…と、 「…申し訳ありません」 「ん?」 「念のため、お熱を測らせていただいてもよろしいでしょうか」 心配そうな、…そんな声が聞こえて 「え、…いいけど…」 条件反射で、流されるように許可を出した。 「失礼致します」 「…へ、」 すっと伸ばされた手に、前髪をあげられる。 部屋の風が額をふわりと撫でていった。 …それから 少しだけ暗くなる視界と、近づけられる端整な顔に 息を、呑む。 「―――っ、」 (……なんと) オレと同じように、前髪を自分で上げたさっくんが …こつん、と裸の額をくっつけてきた。 「…な、な、な…っ、」 (そんな測り方があるか!!) 普通体温計で測るだろ。 おでこくっつけるとか、さっくんこそオレを幾つだと思ってるんだ! 「…ッ、…っ、」 だけど言おうとした言葉は、あわあわと震える唇から一向に外には出ていかない。 額をくっつけあったまま、少しの静寂。 ……お互いの吐息だけを感じるような、この距離感に 一瞬呼吸が止まった。 周りの音も耳から消えた。 ドクドクと…再び血液が首から上に凝集してくるのを嫌でも感じながら、目の前の顔を見つめる。 「おかしいですね。熱はないようですが、今度は呼吸まで荒く…」 「っ、」 心配そうな口調とは裏腹に、ふ、と意地悪げに微笑む顔。 ……わ、わかってるくせに。 「ううううるせー!!!別に赤くなんかねーし!!」 ぐぬおおと怒って、ぱっと額を離す。 ばばっと部屋の隅まで距離を取った。 そっぽを向く。 (熱い、熱い、熱すぎる…!!) 頬を手でおさえてその暑さを振り払うようにふるふる顔を振った。 今すぐ冷水に顔を突っ込みたい。 「鏡でご覧になりますか?」 「いらん!!」 本当に鏡を持ってきそうな気配に、振り向いてキッと睨み付けるようにしてがるると牙を剥く。 …確実にオレの精神を破壊しに来てるぞこの執事。

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