3 / 1039

第3話

「ふぅ…、終わった〜!!」 結局仕事を終えたのは定時から3時間過ぎた20時。 あの量を一人でやってたら、ワンチャン日跨いでたぞ…。 「お疲れ様です。」 「城崎ぃ〜、本当助かった。本当にありがとう。」 「どういたしまして。終わってよかったです。」 城崎が珈琲を両手に持ち、一つ俺に手渡した。 お礼を言って珈琲を受け取る。 角砂糖2個のシロップ1つ、ミルク多め。 俺の好みに作ってくれてる。マジでできる後輩。 「にしても、すごい量でしたね。」 「だよな?千紗の奴、俺に恨みでもあんのかよ…。」 「伊藤さんですか?」 「あぁ、そう。知ってる?」 「先輩の元カノですよね。」 「うん。」 あれ?城崎はこの春から二年目で、俺と千紗が別れたのは三年前だから…。 「なんで知ってんの?」 「他の先輩が言ってたので。」 「マジか。」 まぁでもたしかに。 二年も社内恋愛していたから上司も同僚も知っていた。 なんなら後輩も。 しかもタチが悪いことに、今日みたいに俺に仕事を持ってくることが少なくない。 なので営業部では有名な「望月の元カノ、伊藤さん」なのである。 まさか俺たちが別れた後に入社した城崎にまで知られているとは思わなかった。 「てか、城崎、この後時間ある?」 「ありますよ。なんでですか?」 「明日休みだし、飯行かね?今日のお礼に奢る。」 「いいんですか?じゃあ俺、店調べますね。」 俺が帰宅準備をしている間に、城崎はスマホで店を調べて予約までしてくれた。 もちろん俺の気分に合わせて、焼き鳥の美味い居酒屋。 本当に本当にデキる後輩だ。 目的地は職場から少し離れた駅の近くだった。 でも俺の帰る方向だから問題なし。むしろ家に近づいた。 城崎はそれでいいのかと確認すると、全然問題ないとのことだったのでお言葉に甘えて店に向かった。

ともだちにシェアしよう!