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第58話
甘ったるいゴールデンウィークが終わり、仕事が始まった。
緑は生 い茂り、汗ばむ季節がやってくる。
俺たちサラリーマンはクールビズの時期になった。
4月後半はジャケットを着てると暑いくらいだったが、そこから解放された俺たちリーマン。
ノージャケット、ノーネクタイ!
クールビズ最高!!
「望月〜、あの後大丈夫だった?」
「城崎くんに介抱された〜?」
「おまえベロンベロンだったもんな。」
「あ、はは……」
営業部に入ると同僚にそういじられる。
そういえば歓迎会の後そのままゴールデンウィークだったから、みんな俺があの後どうなったのか知らないままだ。
「俺が手厚く介抱しましたよ。」
「城崎!?」
城崎の意味深な言葉にみんなゲラゲラ笑う。
こいつ、下手したら勘繰られるぞ?!
とか警戒しすぎてる俺の方が多分バレる原因になることを俺自身気づいていない。
「おはよう、みんな。さっそくクールビズ満喫してる奴ばかりだなぁ!ははは」
朝礼で部長が豪快に笑う。
そう言う部長もノーネクタイだ。
「夏仕様の先輩も素敵ですね。」
「わっ…!城崎!」
朝礼が終わってみんなが動き出した中、通りすがりに城崎が俺に囁く。
みんな聞いてないからって会社で…!!
なんて思うのに、満更嫌と言うわけでもない。
俺に素敵だとか言うが、ノージャケットの城崎は鍛えられた身体が目立って、廊下を歩く度女性社員の黄色い声が聞こえる。
そのめちゃくちゃカッコいいイケメンは俺の恋人なんだぞと誇らしげに思う反面、なんだかちょっとムッとしてしまう。
「どうした綾人〜。なんか不満そうな顔してる。」
「涼真…」
「愚痴聞こうか?」
「いや、いい。」
いくら親友つっても、さすがに男と付き合ってるとか言いづらい。
いつか折を見て伝えようとは思うが、今はまだ心の準備できていない。
幸せ絶頂なのだ、俺は。
「今日食堂行かね?」
「あ、ごめん。今日は城崎と外にランチ行くんだ。」
「えー、なにそれ。俺も行きたい。」
「もう二人で予約したから、また今度な。」
「ちぇ〜。」
涼真は残念そうにデスクへ戻っていった。
予約してるってのは嘘。
我ながらよくできた嘘だったと思う。
だってせっかく城崎と二人きりの時間を約束できたんだから。
外だからイチャイチャは出来ないけど、一緒にいれるだけでいい。
「先輩、行きましょうか。」
「おう。」
ランチタイム、城崎がすぐに俺のデスクへ来た。
ノートパソコンを閉じ、束の間のランチデートに向かった。
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