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第89話

翌日、俺は完全復活した。 身体のだるさは全くないし、熱は36.4度と至って平熱。 城崎を探したがいなくて、代わりにテーブルには小さめのおにぎりが3つと書き置きがあった。 「帰ったのかよ……。」 俺が眠りについた後帰ってしまったのか、『お大事に。朝元気があれば食べてください。』と書かれていた。 もうすっかり元気になった俺は、ぺろりとおにぎりを完食した。 さすがの城崎、おにぎりの具は3つとも違うものが入ってて、昆布、明太子、梅。絶対手が掛かるのに抜かりない。 シャワーを浴びて仕事の準備をし、満員電車に揺られながら出社した。 「おはようございます。」 「おはよ〜。遅かったね?」 「朝からシャワー浴びてて…。」 「おーい、朝礼始めるぞ。」 部署に入ったのは結構ギリギリで、すぐに朝礼が始まった。 しかしおかしなことに、キョロキョロあたりを見回すも城崎の姿はない。 「今日は城崎が熱で休みだから、おまえら城崎の分まで頑張れよ〜。あと体調管理はしっかりな。」 「えっ……。」 部長は簡単に朝礼を終わらせた。 俺はと言うと、咄嗟にスマホを開き城崎にメッセージを送っていた。 あいつ、身体は丈夫だから平気だとか言ってたくせに!! 絶対俺のせいだろ。 キスなんかしなきゃよかった……。 城崎から返事が来て直ぐに既読をつける。 『熱、治ったみたいで良かったです。』 こんな時まで俺の心配かよ。 決めた。今日絶対定時に仕事終わらせて城崎の見舞いに行く。絶対!! 「なんか綾人、やる気がすげぇな。」 「おー。絶対定時に終わらせる。」 涼真は「がんば〜」と気の抜けそうな声をかけ、マイペースに仕事を始めた。 俺はと言うと昼休み返上で仕事に打ち込み、余裕で今日の分の仕事を終えた。 「お疲れ様でした!」 「はっや。」 「望月くんどうしたの?」 同僚がびっくりして声をかけてくるが、俺は総スルーで会社を出る。 定時ぴったりにタイムカードを切ったのはいつぶりだろうか。 そして、オフィスを出たところでふと思い出し、足を止める。 「城崎の家ってどこ……?」 そう、俺は城崎の家を知らなかった。

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