90 / 1069
第90話
肝心なところが抜けていた自分を殴りたい。
寝てるだろうなと思いながらも、一応城崎に「家どこ?」とメッセージを送る。
すぐに行けるように会社のコンビニでゼリーとかも買っておいたのに……。
がっくりと肩を落としながら駅まで歩いていると、城崎から返事が来た。
『先輩、病み上がりなので来ちゃ駄目です。』と。
俺はすぐさま城崎に電話をかけた。
城崎はワンコールで俺の電話に出た。
「城崎!家、どこ?」
『教えません。』
「なんで?」
『教えたら先輩来るでしょ?病み上がりなんですよ?ぶり返したらどうするんですか?』
「大丈夫だって!ていうか、城崎、熱は?何度?」
『先輩と同じくらい。でももうだいぶ引きましたから。』
俺と同じくらいって、じゃあ超しんどいじゃんか。
何でこんな時に格好つけてんだか。
何としてでも俺が看病してやる。
折れる気のない城崎に俺は切り札を切る。
「城崎。」
『なんですか?』
「会いたい。」
『え?』
「朝城崎がいなくて寂しかった。だから、会いたい。」
『…………。』
「おまえは、俺に会いたくねぇの?」
そう言うと、城崎は電話越しにため息をついた。
『先輩、それは狡 い。』
「城崎が会いたくないなら行かない。」
『会いたいに決まってるじゃないですか…。もう……。最寄駅は○○駅、住所は………』
俺は通話しながらスマホのマップアプリにその住所を打ち込んだ。
「ん。じゃ、今から向かうな。」
『気をつけてくださいね。待ってます。』
通話を切り、早足で駅に向かう。
電車に乗って城崎の家の最寄り駅まで向かい、マップに誘導されるまま目的地へと向かった。
城崎の住むマンションへたどり着く。
駅からそう離れてなくて若者に人気そうな外観だ。
城崎、ここに住んでんだ…。
ドキドキしながらインターホンを押すと、スウェット姿でグッタリした顔色の悪い城崎が出迎えてくれた。
「先輩……」
「おっと。大丈夫か?思った以上に具合悪そうじゃん。」
「すみません…。」
弱った城崎を見るのは初めてかもしれない。
肩を貸してやり、リビングへ向かう。
あまりにも熱いから、ベッドに寝かせて体温計を挟むと、40度を表示していた。
「は?おい、何が下がっただよ。薬は?」
「飲みましたよ。熱は下がったって言えば先輩来ないかなって思って…。」
「何でそんな冷たいこと言うんだよ。」
「先輩に迷惑かけたくなかったからですよ…。あー、しんど…。」
余程しんどいのか、城崎は目も潤んでいるし、呼吸も荒かった。
ともだちにシェアしよう!