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第90話

肝心なところが抜けていた自分を殴りたい。 寝てるだろうなと思いながらも、一応城崎に「家どこ?」とメッセージを送る。 すぐに行けるように会社のコンビニでゼリーとかも買っておいたのに……。 がっくりと肩を落としながら駅まで歩いていると、城崎から返事が来た。 『先輩、病み上がりなので来ちゃ駄目です。』と。 俺はすぐさま城崎に電話をかけた。 城崎はワンコールで俺の電話に出た。 「城崎!家、どこ?」 『教えません。』 「なんで?」 『教えたら先輩来るでしょ?病み上がりなんですよ?ぶり返したらどうするんですか?』 「大丈夫だって!ていうか、城崎、熱は?何度?」 『先輩と同じくらい。でももうだいぶ引きましたから。』 俺と同じくらいって、じゃあ超しんどいじゃんか。 何でこんな時に格好つけてんだか。 何としてでも俺が看病してやる。 折れる気のない城崎に俺は切り札を切る。 「城崎。」 『なんですか?』 「会いたい。」 『え?』 「朝城崎がいなくて寂しかった。だから、会いたい。」 『…………。』 「おまえは、俺に会いたくねぇの?」 そう言うと、城崎は電話越しにため息をついた。 『先輩、それは(ずる)い。』 「城崎が会いたくないなら行かない。」 『会いたいに決まってるじゃないですか…。もう……。最寄駅は○○駅、住所は………』 俺は通話しながらスマホのマップアプリにその住所を打ち込んだ。 「ん。じゃ、今から向かうな。」 『気をつけてくださいね。待ってます。』 通話を切り、早足で駅に向かう。 電車に乗って城崎の家の最寄り駅まで向かい、マップに誘導されるまま目的地へと向かった。 城崎の住むマンションへたどり着く。 駅からそう離れてなくて若者に人気そうな外観だ。 城崎、ここに住んでんだ…。 ドキドキしながらインターホンを押すと、スウェット姿でグッタリした顔色の悪い城崎が出迎えてくれた。 「先輩……」 「おっと。大丈夫か?思った以上に具合悪そうじゃん。」 「すみません…。」 弱った城崎を見るのは初めてかもしれない。 肩を貸してやり、リビングへ向かう。 あまりにも熱いから、ベッドに寝かせて体温計を挟むと、40度を表示していた。 「は?おい、何が下がっただよ。薬は?」 「飲みましたよ。熱は下がったって言えば先輩来ないかなって思って…。」 「何でそんな冷たいこと言うんだよ。」 「先輩に迷惑かけたくなかったからですよ…。あー、しんど…。」 余程しんどいのか、城崎は目も潤んでいるし、呼吸も荒かった。

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