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第95話

新幹線に揺られ約2時間。 遅れがなく名古屋に到着したのはいいが、胃がキリキリする。 「先輩、大丈夫?」 「うん………。」 「ランチにしませんか?ほら、名古屋って美味しいものがいっぱいありますし!」 「今食えねぇ……。」 城崎なりに気を紛らわせようとしてくれているが、こんなに胃が痛いのに食事は無理!! きっと城崎はまだ若いし、腹減ってるだろうな…。 「城崎は好きなの食べて良いぞ…。」 「こんな先輩差し置いて何を食えと?」 「俺は商談終わってから食う…。」 「じゃあ俺もそれまで我慢します。」 「駄目!おまえは食え!」 食え食わないと言い合いが続き、結局城崎が折れてひつまぶしを食べに行った。 俺は外の空気を吸いたくて駅前で城崎を待った。 「本当情けねぇ…。」 後輩の城崎はピンピンしてるのに、上司の俺がこんなヘタレじゃどうするんだ。 威厳もクソもねぇよ……。 「先輩、お待たせしました。気は紛れました?」 「はえーな。まぁ、そこそこ。」 「先輩がおすすめしてくれた鰻屋さん、めちゃくちゃ美味しかったです。」 「そりゃ良かった。」 あの美味しさを城崎と一緒に共有したかったなぁ…。 本当、俺の胃がこんなに弱くなけりゃ……。 「先輩の緊張解いてあげましょうか?」 「どうやって?」 取引先に向かっている道中、城崎がそんなことを言う。 解けるもんなら解いてみろとでも言うように城崎を睨むと、腕を引かれ細道に入った。 まさかと思い顔を上げると、案の定目の前には城崎の顔。 そのまま唇が重なった。 「んっ!ん〜〜っ!!」 城崎の胸を叩くも、さらに強い力で引き寄せられて離れることなんてできなかった。 舌が割り込んできて気持ち良さに力が抜ける。 「んぁ……、んっ、……チュ……、んんっ…」 城崎のされるがままになり、体重を預けた。 唇が離れ、上機嫌な城崎をぼーっと見つめた。 「先輩のトロ顔、やっぱり最高です…♡」 「…………!!!馬鹿!おまえこんなとこで何考えてんだ!!?」 「でも、緊張解けたでしょ?」 「はっ…!!」 本当だ。 なんか気持ちがさっきより全然軽い。 俺を見てクスクス笑う城崎。 俺は完全に手のひらで転がされている。

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