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第142話
デートの約束は二週間後になった。
理由は翌週の土日、俺が取引先の都合で土曜出勤になってしまったから。
日曜日でも良かったけど、城崎が一日くらいゆっくり休んでほしいと遠慮してきた。
「はぁ、疲れた。」
土曜出勤を終えた俺は、帰るなりソファに横になる。
いつもなら土曜か日曜、城崎が居るのにな…。
あー……、俺めちゃくちゃ城崎に依存してんじゃん…。
無意識にスマホを開いて、アドレス帳から城崎を開く。
ちょっと前に、メッセージアプリだけじゃ何かあった時不安だからと電話番号も交換した。
プライベートのスマホは電話し放題のプランに入ってないから諦めてアドレス帳を閉じ、メッセージアプリを開き直す。
出るか出ないか分からないけど、城崎に電話してもいいかな?
忙しいか?
「よし……。3コールまでで出なかったら切ろう。」
俺は意を決して通話ボタンを押し、スマホを耳に当てる。
1コール目……ガチャッ
『先輩?』
「早ぇよ。」
まさかの1コールで出た城崎。
なに?スマホ常に持ち歩いてんの?
俺と一緒にいるとき、そんなにスマホ持ってるイメージないんだけど。
『先輩、お仕事お疲れ様です。』
「あぁ…。」
『どうしたんですか?電話なんて珍しい。』
「や…、ちょっと声聴きたいなって…。てか、風呂?」
『はい。湯船浸かったところです。』
「スマホを風呂に持ち込むなよ、現代人。」
浴室特有の反音する城崎の声。
かけるタイミングミスった。変な想像しちまう。
『ビデオ通話にする?』
「は?!ば、馬鹿!!」
『期待してたでしょ?先輩のえっち〜♡』
「してねぇよっ!!切るぞっ!?」
『やーだ。先輩、揶揄 ってごめんなさい。お話しよ?』
顔を真っ赤にした俺は恥ずかしくて通話終了を押そうとするが、それは城崎の制止によって止められた。
こんなのでドキドキしてる俺、バレたくない。
年上で余裕のあるとこ見せたいのに。
『先輩、愛してるゲームしたい。』
「え?」
『知ってますよね?さすがに。』
「知ってるけど、嫌。あれ苦手。」
『先輩下手そうですもんね。すぐ赤くなっちゃいそう。』
電話越しに城崎の笑い声が聞こえる。
なんか悔しい。
言われた通り、昔合コンとかでやるたびに俺はすぐに赤くなって一番に脱落していた。
「ビデオ通話もなしにどうやってするんだよ。」
『どちらかがギブアップするまででどうですか?』
「へぇ。じゃあいいよ。」
『言いましたね?男に二言はなしですよ。』
ギブアップさえしなけりゃ負けることはない。
馬鹿にされた悔しさと、人生で一度くらい勝ってみたいという気持ちで俺はそれを引き受けた。
この後めちゃくちゃ後悔するとは知らずに。
こうして俺たちの"愛してるゲーム"が始まった。
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