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第144話

日曜日は悶々(もんもん)としながら過ごした。 愛してるゲームのせいで城崎に会いたさが増して仕方なかったのに、外せない用事があると言われて会うことは叶わなかった。 絶対文句言ってやると意気込んで出勤したが、営業部に入ってすぐ、俺の考えは全部弾け飛んだ。 「先輩、おはようございます♡」 「な……っ!!」 「え、先輩。何で逃げるんですか。」 俺は城崎を見るなり(きびす)を返す。 何あれ!!何あれ?! 「あ、城崎くんだ♡髪切ってる〜!」 「本当だ〜。超かっこいいね!」 そうだね?!超超超格好良いね?!! 俺が走って逃げる後ろを城崎が追いかけてきて、すれ違う女性社員が呟いた言葉に激しく同意した。 俺が逃げてる理由はまさしくそれ。 城崎が髪切ってて格好良すぎるからだ。 「せーんぱいっ!!」 「っ!!」 かなり人気(ひとけ)のないところまで逃げたはいいが、城崎に捕まって強制的に振り向かされる。 あぁ、駄目だって。 「先輩顔赤いですよ?」 「お前のせいだろ、馬鹿……。」 「え、俺?」 顔を上げると格好良すぎる城崎がいて、俺はまた俯いた。 あー……、あっちぃ。 「何で今更?今までも何回か切ってますよね?」 「付き合ってから初めてだろ…。」 「まぁそうですけど。え、もしかしてときめいてくれたんですか??」 「悪いか?」 「めちゃくちゃ嬉しいです♡」 城崎の言う通り、今までも何度か短髪城崎を目にしているはずなのだが、恋人フィルターって厄介なものだ。 つくづく思う、俺は結構女々しい。 「先輩がこんな照れてくれるなら頻繁に切ろうかな?」 「伸びてるのも嫌いじゃない…。」 「じゃあどんな俺でも好きってこと?」 「…………かもな。」 「先輩〜♡」 人気(ひとけ)が少ないことを良いことに、城崎は俺を抱きしめて頬擦りする。 見られたらどうすんだって思いながらも、内心は嬉しいから何も抵抗しない。 俺、こんな格好良いやつと今週末デートするんだ。 「城崎、昨日何してたの?」 「内緒です♡」 「浮気?」 「まさか。そんなわけないじゃないですか。」 浮気なんてすると思っていないけど、俺に言えない理由ってことがなんか気に食わなかった。 気になる……。 「気になります?」 「は?!ならねーし。」 「じゃあいいや。」 「よくねぇよ。」 「知りたい?」 「………」 「教えて♡って可愛くおねだりしてくれたら教えないこともないですよ?」 「誰が言うか。」 気になって仕方ないけど、可愛くおねだりなんて絶対したくないから、俺は諦めて部署へ戻ることにした。

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