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第163話

もう既に城崎の甘い悪戯(いたずら)(とろ)けそうになっている俺を見下ろし、城崎はにっこりと笑った。 「先輩、約束覚えてますよね?」 「約束って…?」 約束なんてしてたっけ…? 記憶を辿るも心当たりがなくて首を傾げると、城崎は小さな箱から何やらシェイバーのような機械を取り出した。 「なに?」 「ボディトリマーです。この日のためにちゃんと買ったんですよ?」 「え、どこ剃るの?」 「何言ってるんですか?ここでしょ?」 城崎は俺の股間をツンツンと触る。 「は?!」 俺は驚いて上体を上げた。 こいつ何言ってんの?! 「何驚いてるんですか?約束したじゃないですか。」 「してないけど?!」 「しましたよ。ね?剃りましょう?」 「剃るわけないじゃん!!…剃るわけないじゃん?!」 大事なことだから2回言った。 え、意味わかんない。剃るわけないじゃん。(3回目) 城崎はボディトリマーの動作確認とか始めた。 何で?! 「約束してない!した覚えない!」 「じゃあ聞く?先輩いいよって言いましたよ。」 城崎はスマホのボイスレコーダーアプリを開き、再生を押す。 『これ、剃ってほしい。……え…?…………生まれたての先輩が見たい。』 スマホから聞こえるのは間違いなく俺と城崎の声だ。 こんな会話したっけ? いつ?いつだ…?! てか、まさか俺この後……。 『……………ぃぃょ。……本当っ?!……城崎がそうしてほしいなら、やってもいい。………じゃあ、約束ですよ?……うん。…………』 そこで音声は終了した。 サァーッと血の気が引く。 嘘だろ?誰か嘘だと言ってくれ。 「先輩、俺ずっと楽しみにしてたんです。」 「そ、そっか…。」 「まさか約束破るような人じゃないですよね?」 「…………」 酔った俺の馬鹿!!!! 俺の男としてのプライドは?! 本当に剃られるの?マジで? 「あ、先輩。新しい下着だ。ローライズ買ったんですね。似合ってる。」 「…………」 もうこの際下着なんてどうでもいい。 褒められてちょっと嬉しいとか思ってるけど、今はそれどころじゃない。 だってそれを下ろしたら……。 「じゃあ剃りますね。」 ジジジジ……とシェイバーの音とともに、何か大切なものが消え去っていく感覚が俺を襲った。

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