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第182話
ミーンミンミンミン………
蝉が五月蝿 く鳴きわめく中、汗を垂らして出社する。
「うわあああ。涼しい……!」
「おはよう、望月くん。」
「おはよー、綾人。」
「おはようございます。」
部署に着くと上司や涼真が挨拶してくれて、俺もそれに返した。
団扇でパタパタ仰いでいると、隣に座る涼真が俺に耳打ちしてある方を指差した。
「あれ、いいの?」
「ん?あれって?」
涼真が指す方を見るとそこは城崎のデスクで、城崎は他部署の若い女性社員に囲まれて見えなかった。
一体何で人集 りなんか…?と思ったけど、言葉を聞いてすぐに納得した。
「城崎くん、誕生日だったんだね!知らなかったぁ!これ、私からプレゼントですっ♪」
「城崎くん城崎くんっ、私からも!」
「これ、使ってくれない?」
色んな人からプレゼントを渡されている。
城崎の誕生日が広まってるのか、去年より確実に人は増えている気がする。
多分中身は消費物であるお菓子、もしくは使える小物とか?
涼真はそんな様子を見て俺に教えてくれたのだろうが、プレゼントを渡している中には歳上もいるし無下にできないだろうと俺は目を瞑る。
「すみません。俺、恋人がいるので受け取れません。」
「「「えぇっ?!!」」」
城崎は女性社員に謝って、丁寧にプレゼントを断った。
嬉しいよ。俺は勿論嬉しい。
でも城崎、おまえがそんなこと言ったら……。
「嘘〜っ?!やだ!相手は誰?!まさかこの会社の人じゃないよね?!!」
「ちょっと…。無理……。もう会社来れない……。」
「城崎くんだけが会社に来る唯一のモチベだったのに……。」
その場で崩れ落ちる女性社員たち。
そりゃそうだ。
入社当時から城崎は彼女を作らないで有名だった。
有名というか、こんなにイケメンなんだから絶対に彼女がいる、もしくはすぐにできるはずなのに、一年間フリーだったから、城崎は営業部に留まらず、社内のアイドル的存在になっていたのだ。
きっとこの情報もすぐに社内全体に伝達される。
恋人が俺だということは、絶対バレないようにしないと……。
「殺される……」
「ははっ(笑)誰も綾人が相手だなんて思わねーだろ。」
「だからこそだろ……。」
油断してバレた時が一番怖い。
現に今だって……。
「あれ?望月さんのボールペンさっきどっかで……。あっ!城崎さんとこで見たんだ!もしかして、お揃いっすか?」
「あっ…、へ、へぇ、そうなんだ?たまたま?」
「でも高そーっすよ、これ。普通被ります?」
「すっげー偶然もあるもんだな!ほ、ほら、ちゅんちゅんは今日外回りだろ!早く行った行った!」
バレるの早ーよ。
ちゅんちゅんの言う通り、普通は被んない。
しかも同じ日から使い始めるなんて、まぁないだろう。
目敏 すぎないか?監視でもしてる?
俺のそんな不安も露知らず、ちゅんちゅんは外回りへ出発した。
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