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☆二章八話

「それ以前に別の人間に依頼し、蔵之介が生贄になるようにビアンカ王は手を回していたんです。その一人に村田という男が居ます。彼は元々バードイートの一味でした。しかしリーダーが変わり性に合わないと当時王でもないビアンカ王に相談に来られました。  そしてビアンカ王は人間界に行くよう指示され、その上で管理の位置に回れる役所の仕事につかせました。そして上手く根回ししたんです。蔵之介様が元々住んでいた都内にもビアンカ王の指示で動く一族の者が居ます。いじめ自体はビアンカ王の指示ではないですが、それを使って引っ越しを促し、引っ越し先をこの付近になるよう手配しました。  彼らが引っ越したのは、そもそもがお金の為だったんです。引っ越し子供を差し出せば役所の人間からお金が入ると。母親に内密に情報を流したら、母親は話に乗り引っ越したんです。元々軽薄で薄情な方でした。蔵之介様にも興味がない方だったそうです。そんな人間の元に居たら蔵之介はいつになっても幸せになれない。ビアンカ王はそういって自分のもとに来るように誘導しました」  ピーはそこまで言うと一度ビアンカの方へ目を向ける。 「そして生贄と差し出され蔵之介様は今ここにいます。貴方がここに来たのは想定外だったそうですが。  これは私もビアンカ王が王になってから知った話です。全ておひとりで手を回しておりました。むしろ他の人間に指示を出していたらここまで厳密に蔵之介様を誘導することはできなかったでしょう。私には人間界のルールはよくわかりませんから」  ピーはそこまで言うと腕を組み、海を見据えた。 「そして、その後不思議なことにその母親から小切手を盗んだ者が居たそうです。そしてその犯人が誰なのかは特定されています」  ピーが言うと、海は眉を寄せピーを睨んだ。 「そんなことするのは誰なんだ?」 「青い服を来た青い髪の男です。防犯カメラに映っています。汚いお金な為被害届は出されていないそうです。なので捕まることもない。それにあたなは今ここにいて、毎日買い物に行くにしても短時間。毎日行く場所をかえていれば捜索されていても捕まりようもありません。本当に上手い逃げ方です」  ピーが言うと海は合わせる顔がないというように顔を逸らした。直接的に海が犯人とは言わないにせよ、犯人は確定だった。 「良いだろ、あれは蔵之介の為に支払われた金だ。俺はその金を蔵之介の為にしか使ってないしこれからも使う気はない。ビアンカの食費にもなってるけどそれは蔵之介の望みでもあるから、俺もしぶしぶ買うしかなかった」  海は不満そうに漏らす。 「ビアンカ王は、最初は逃げるために蔵之介を言い訳に来たのかと思っていたそうですが思ったより蔵之介への気持ちが強いようで、嫉妬して私にあの指示を出しました」 「あの指示?」  海は首を傾げた。何があったのか全く思い出せなかった。 「思い出せないなら忘れてください。一応言っておきますがあれは私が好んでしたことではありませんから」  そういわれ海は目を見開いた。よぎったのは、捕まって王広間に連れていかれた時。ピーが手袋をはめ、海の服を脱がし……。思い返して海は頬を赤くした。 「スペルマウェブの! あれ! そういうことだったのかよ!? てっきり蔵之介が俺の絵かいてたのを羨ましくて妬いたのかと思って、心狭すぎるだろと思ってたよ」  海が言うとピーはため息をついた。 「多分それもですね。貴方がちゃかすから、ビアンカ王も調子に乗ったんでしょう」  ピーはそこまで言って海を見据えた。 「これでビアンカ王が蔵之介様を連れてきた理由は納得されましたか?」 「できるわけねーだろ。それをした理由を教えろよ」  海が言って、ピーは面倒くさそうにため息をついた。海はその姿に眉を寄せる。正直なところ考えればわかる。「好きだから」だろう。そうなった理由なんて知ったところで興味はあっても意味はない。 「あーいや、やっぱいい。今はそんな話をしてる場合じゃない」  海はそういって蔵之介の方へ歩み寄る。 「蔵之介は今起きてるのか?」  海が聞くと「起きている」とビアンカは呟くように言った。 「王がそんなにへこむなよ、こっちまで気がおかしくなりそうだ」  海が嘆くように言うが、ビアンカは蔵之介を見つめて何も言わなかった。 「ピー、今の王は役に立たない。俺たちでどうするか考えよう」 「そうですね、治癒糸は巻いていますし、時間はかかっても元に戻る可能性もあります。今は心と体を休める必要があるでしょう」  海もそれ以外に方法は浮かばず頷いた。  蔵之介が寝ている間、ゼノスと海で分担し世話をした。  食事は与えられなかった為、治癒糸の効果で体をフォローするしかなかった。  しかし、日が経つにつれ徐々に蔵之介は回復することなく、体は衰弱していった。ビアンカも薬草を煎じ飲ませたり、蔵之介の負荷のない範囲で人間の食事を蜘蛛の糸で体内に流し込み蔵之介の体を保とうとした。  二週間たったが蔵之介は何の変化もなかった。  蔵之介の体はやせ細り、筋力も衰え、もともと細身ではあったものの以前とは比べ物にならないほど細くなっていた。ビアンカはヴィンター師に相談し見つかるかも分からないが言い伝えで聞く薬草を煎じようと一緒に取りに出かけた。しかしそれも見つからず、ビアンカは打つ手がないといった様子で戻ってきた。  ビアンカは、ベッドで眠る蔵之介を見て目を閉じた。深呼吸をして目を開く。 「蔵之介を人間の世界に帰そう」  ビアンカが言うとピーは驚きビアンカの背中を見つめた。こんなこと言うなんて相当だ。 「いいんですか?」 「よくはない。けど、今は起きたことを忘れ、人間の世界に返した方が心は休まる」  ビアンカは優しく蔵之介を見つめた。 「蔵之介様にもう会えない可能性もありますよ。何年もかけて手に入れた唯一の存在なのでしょう? それに生贄を送り返すなんて国民が何というか」 「その罰は僕が全部かぶる。ほかの皆に迷惑はかけない」  ビアンカは意は揺らがないといった様子で、立ち自分の右手のひらを見つめた。 「いけません、どんな拷問を受けるのかも分かりません。生きながら殺された生活を送ることになるかもしれません」 「構わない、今の蔵之介も同じ状態だ。そんな状態にしてしまった僕はその罰を受ける義務がある」 「そんな義務はありません!」 「受けないと僕の気が済まないんだ」  ビアンカは言って蔵之介に歩み寄り抱きしめた。 「すまない蔵之介。すぐに楽にする」  ビアンカはそういって糸を操作した。蔵之介の頭にその糸は伸びていき、毛穴から脳へと伝っていく。ビアンカは糸を伝い記憶の操作をしていると、蔵之介の部屋のドアが開いた。  海が入ってきてビアンカを見ると駆け出し殴りかかった。 「何をしてるんだ!?」  殴った拳はビアンカの頬に当たり、ビアンカの体は飛び、転がり倒れた。 「まずい!」  ピーが叫ぶと、ビアンカの手から伸びていた糸は吸い込まれるように蔵之介の頭の中に入っていった。そして蔵之介の体は光だした。 「なんだよこの光は!」 海が叫び光を防ぐように目を腕でかばった。  数秒後光はおさまり、蔵之介の姿は元に戻った。  海はビアンカの方へ振り返る。 「一体何をしていたんだ!?」 「蔵之介の記憶を消していた」 「は?」  ビアンカはそういって上半身を起こした。 「丁度いい、多分全部消えただろう。蔵之介の子供の頃の記憶も」 ビアンカが言って海はビアンカの胸ぐらを掴んでもう一度殴り飛ばした。 「俺のことも忘れさせたのかよ!?」 「例外はないすべて忘れたほうが、蔵之介の為だ」 「だからなんでお前はそう勝手なことばかりするんだよ!? こんなことで蔵之介を手放す位なら最初から望むなよ!!!」  海は目を潤ませながらビアンカに掴みかかり殴ろうとするが、ビアンカは抵抗せず目を閉じていた。海は殴ろうとしていた拳を震わせた。次第に手から力が抜け、腕を下した。 「殴らないんですか?」  ピーが聞き、海はビアンカを投げ捨てる。 「抵抗しない奴を殴る趣味はない」 「海、最後の仕事をお願いしたい」 ビアンカは力なく床に寝転がったまま言った。 「最後ってなんだよ」 「蔵之介を人間界の安全な場所に連れて行って欲しい。蔵之介が不幸にならない場所に」 海は頷く 「その仕事は高いぞ」 -----  そこまで説明し終わると、 「くらのすけさまぁぁぁ」  とゼノスは話を聞いて当時のことを思い出したのか、泣きながら蔵之介に抱き着いた。子供たちもつられて一緒に泣きだした。 「あーもううるせー!」 海が耳をふさぎながら叫んだ。 「近所迷惑だ! 連れ出すぞ!」 と村田は子供を三人抱えた。 海も二人抱え、蔵之介は一人を抱きかかえ、ゼノスの背中を押した。蔵之介の背中には先ほどから子供が一人嬉しそうに引っ付いている。蔵之介を外で吊るして落とした子供だった。その子は離れようとしなかった為、蔵之介はその子の頭を撫でてそのまま連れて出た。  村田は山への道を車で進めた。子供たち何人かはぐずって居るが、蔵之介に抱きしめられ静かになっていた。 「それで、蔵之介はどうしてもどろうと思ったんだ?」  村田がバックミラーで蔵之介をちらっと見て問う。 「俺その時の会話聞いてたんです。でも体が動かなくて神経が全部切られている感覚でした。何度もビアンカを呼ぼうとしたのに声が出なくて。記憶もけさないでって言おうとしても声に出せなくて」 「つまりは最初から残りたかったってことか。なんでそんな植物状態みたいなことが起きたんだ?」 「それは」 蔵之介が言おうとすると、子供の一人が顔を上げた。 「ママおしっこ」 「え」  と蔵之介は言って周りを見る。そこは既に山の中だ。 「ママ、僕も」 「ママ俺も」  と他の子供たちもつられるように騒ぎ出す。 「あーあー、分かった。車を止めるからその辺でして来い」  村田は山道の途中だが車を止めた。  蔵之介はドアを開け、子供たちを車の外へ連れ出した。子供たちは道の隅でそれぞれ着ているものを脱いで用を足した。  全員面倒見ないといけないかと思っていた蔵之介は安心してため息をついた。 「ママ―終わった!」 「出たよ!!」 「一人でできた!!」  子供たちがわらわらと蔵之介を取り囲む。 「うん、偉いね。よくできてた」 蔵之介は一人ひとり頭を撫でた。七人目の頭をなで終わり車を見る。車の脇に立ち見守っていたゼノスが何かと瞬きする。 「ゼノス、子供って九人産まれなかったっけ?」 「あの、それは……」  ゼノスは車の横で立ったままうつむき、もじもじと手をこすり合わせた。 「あのね、居なくなっちゃったの」 「どこか行っちゃったの」 「迷子になっちゃたのかも」  子供たちが言った。 「居なくなった?」 「良いから乗れ、進むぞ」  村田に言われ子供たちと一緒に蔵之介は車に乗り込んだ。  いろいろ、聞きたいことがあり、どれから話せばいいのか蔵之介が悩んでいると、村田が口を開いた。 「まあ、お前が戻りたい理由がはっきり自分の意思ならそれ以上は聞かない。それなら後悔もないだろう」 村田は山道のカーブを曲がった。そこで海が「あ」と声を漏らした。 「どうしたの?」  と蔵之介が聞く。 「バナナ買ってくればよかった」  海は呟き窓を開けた。 「え、今それ必要?」 「ちょっと買ってくる。上につくころまでには戻る」 と窓から出て海は飛んで山を降りていった。 「フットワーク軽いな」 蔵之介は呟く 「僕も行く」 後に続こうとする子供を蔵之介は抱きとめ窓を閉めた。 「行っちゃダメ」 蔵之介が言うと子供はムスッとする。 「なんで!?」  強く言われ蔵之介は困り、その場の思い付きで言う。 「お母さんを一人にしないでほしいんだ。海が居ないと他に頼れる人居ないでしょ?」 蔵之介は苦し紛れのように言うが、子供たちはその気になって目を輝かせた。 「大丈夫! 僕がママを守るよ!」 「僕も守る!」 「俺が一番強いんだよ」 「お前はこの前じゃんけんに負けてたじゃん」 「じゃんけんと守るのは違うもん!」 すぐに取っ組み合いが始まり、蔵之介は中断させようとするが、顔をはたかれお腹を蹴られ泣きそうになった。  子供ってこんなに元気なものなの? 蔵之介は涙目で子供たちを見ていた。 「お前ら静かにしないからお母さんが困ってるぞ」 村田がい言うが、子供たちは楽しそうにじゃれ合っていた。  以前来た山の入り口につくと車を降りた。 「自分の意思で歩けよ」  前にも言われた言葉だった。村田にとって座右の銘か何かなのかもしれない。  蜘蛛の世界から外にでるにはそれなりの覚悟が必要だったのだろう。  蔵之介は頷いた。 「分かってます。ありがとうございました」  蔵之介は村田に頭を下げる。  そこで村田の携帯が鳴った。村田がその電話に出ると驚いた様子で声を上げた。 「なんだ? ……海? なんでこの番号を……は?」  村田はそこまでいうと急いで車に走った。 「あとは自分で戻れ、海は多分すぐには向かえない。置いて行っていい」 「え? 何が」  蔵之介の言葉を聞かず、村田は車で走り去っていった。  なんの余韻もないあわただしい別れに蔵之介は肩を落とした。海のことは心配ではあるが、ビアンカの方も早く助けに行きたい。 「ゼノス、いこう」  蔵之介が言うとゼノスは頷いた。  蔵之介はゼノスと子供達をつれて森に入る。 「子供達を連れてて危険じゃないかな?」 「僕たち子供じゃないよ!」 「ずぶないる!」 「ジュブナイ……?」 「ジュブナインじゃないの?」 「ジュブネイルだよ」 子供たちが次々に言うが、どれもあっていなかった。 「この子達は強いですよ。蔵之介様が去ってからヴィンター師の元に預けられて、そこではキーパーも手伝っていましたが、キーパーから逃げるのによく走り回っていました。私よりも足の早い子がいます」 「そんなに?」  蔵之介は驚いた。  子供たちは自慢するように胸を張った。 「俺が居なくても毎日頑張ってたんだね」  蔵之介が言うと皆は嬉しそうに頷いた。 「僕ね毎日いっぱい走ったよ」 「俺は一番ジャンプ力があるて言われた!」 「僕は夜時間通りに寝て偉いって言われたよ!」 「僕の糸は綺麗だって言われた!」  そして子供たちの自慢大会が始まる。  蔵之介は一人ひとり褒めながら歩いて進んだ。  その話が落ち着くと蔵之介はゼノスに聞く 「ビアンカは今城にいるの?」 「はい、多分。私が離れた時には。  ビアンカ様の痛々しい姿を見ていられず、私は逃げ出しました。私は逃げてばかりです。ビアンカ様が蔵之介様の記憶を消した時も辛くて見ていられなくて逃げだしました」 「でもゼノスは俺の所に来てくれたじゃないか」  蔵之介が言うと、ゼノスは首を横に振った。 「それは逃げたからです。私が問題を解決しようとしたのではなく蔵之介様になんとかしてもらいたくて……、私にはそれ以外何もできません」  ゼノスは涙目で言った。 「そういうこともあるよ。だから他人がいるんだよ。ゼノスがいないと困ることだってあった。ゼノスが来なかったら俺はビアンカのことを思い出すことも出来なかった」  蔵之介はそういって、立ち止まり振り返った。 「そうだ、海にも伝えたかったことがあったんだけど」 「何ですか?」  ゼノスがくびを傾げた。 「記憶を消したのはビアンカじゃないんだ」 「どういうことですか?」  ゼノスは驚いて、蔵之介を見上げた。 「それを説明するけど、ゼノスはマフラー持ってる?」 「あ、はい」  ゼノスは懐からマフラーを取り出し蔵之介に渡した。蔵之介はそれを受け取ると首に巻き付ける。 「あと、服ってない?」  着ているのは人間の世界でのシャツとズボンだった。学校にいくつもりだったから学生用の物。 「それは、そうですね。そのままだと目立つかもしれません。私が作るのでよかったら簡易な洋服は作ることができますが」 「じゃあお願い」  ゼノスは蜘蛛の糸を操り蔵之介の服を作り始める。  想定通り時間がかかりそうなので蔵之介は木の脇に座った。子供たちは暇そうに近くをうろうろしていた。  蔵之介はマフラーを口元まで上げて目を閉じた。   他に思い出せることはないか、記憶が戻らないかを確認した。何も思い出せないことがわかり目を開く。 「記憶のことの前に、ビアンカは俺の為にずっと治癒糸を巻いてくれてたよね。だけど、それに効果がなかった。それには理由があって、俺の部屋には一匹の蜘蛛が潜んでいた」  蔵之介が言うとゼノスが驚いて顔を上げる。子供たちは蔵之介が話し始めたので周りを囲み聞こうと座った。 「その蜘蛛は人の姿になるとビアンカと同じ姿をしていた。それは前に現れたワイトだと思う。  ワイトが俺につけられた治癒糸をほどいて普通の糸に巻き直したんだ。それで俺は回復できなかったんだ。彼は俺を殺そうとしてたんだ。ただ殺すならすぐにできたはずなのに、俺が苦しむように、ビアンカも苦しむように。その方法を取ったんだ。何度も「もっと苦しめ」って言われた。  何も言い返せなくて苦しかったよ。ゼノスにも、海にも言えなくて。  そして、俺が動けなかった理由も別にあって。子供を産んだ後、俺は衰弱していた。体力も消耗して精神的にも削られて意識を保っているのがやっとだった。  そして、ビアンカも許可して医者に体を見て貰ったんだ。その時、足首に糸を刺されたんだ。それを打たれた後、意識がはっきりした。けどそれ以降動くことも喋ることも出来なくなったんだ。  ビアンカにそれを伝えたくて声を出そうとしたけど出来なかった。心音で伝えられないかも試したけど、心音も制御されているのか伝えることは出来なかった」  蔵之介がそこまで言うと一度口を閉じた。 「つまり医者はワイトの手下だったってことですか?」  ゼノスは服を編みながら蔵之介に聞いた。 「それは分からない。他にも俺を狙う人はいる。だから別の人の指示かもしれない。  そしてその後、ビアンカは俺の為に薬草を探しに出たんだ。その隙を狙いワイトは薬草が見つからず戻ってきたふりをした。ビアンカになり切って感傷的に話しながら、俺の記憶を消したんだ。その後の記憶は人間の世界に戻って目が覚めた所からしか記憶がない」 「じ、じゃあ、今ビアンカ様が罰を受けてるのは」 「うん、ワイトのせいだよ。俺が人間の世界に戻ったことで罰を受けてるのだとしたら、ワイトは俺を殺すよりその方がビアンカを苦しめられると思ったのかもしれない。  早く助けたい。けど俺には戦うことはできない。海が追いついてくれるといいけど他に頼れる人もいないし」

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