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第15話
◆◆◆◆◆◆
「翼!」
名前を呼ばれて翼は目を開けた。
ぼやけた視界には白い風景と、
「ハルキさん?」
ハルキの姿があった。
「ここ?……あ、あきお……」
視界が鮮明に見えると記憶も鮮明に甦る。
アキオに首を絞められながら犯された記憶。
「大丈夫、ここにはいないから安心していいよ」
ハルキは翼の頭を撫でる。
「どこ?あきおさんは?どこ?」
心配とかそんなのではない。怖くて……本当に安心して良いのかと思うのだ。
「彼は警察だよ」
「えっ?」
それは自分を殺しかけたから?
「ミオを殺したんだ………」
ハルキはそう言って翼の手を握る。
「事故にみせかけて………ミオを………翼まで……でも、よかった……翼は助けられた」
大人なのに大粒の涙……そう、思いながら
泣いているハルキの手を握り返す。
「 助けてくれたのはハルキさん?」
「うん、戻って来ないから……部屋に……そしたらアイツが翼に……」
握られた手は震えていた。
「ハルキさんだけだったよ………気付いてくれたのは」
「えっ?」
「アイツに抱かれるの本当は嫌だった……怖くて死にたかった………ずっと、冷たい冬の中でハルキさんだけが……気付いてくれた。一生冬だけだと思ってたんだ……春なんて来ないって、でも春をずっと待ってた」
よかった………と翼は目を閉じた。
眠った翼の頭を撫でる。
「うん、大丈夫。ずっと俺がいる。………君の冬は終わったんだ」
◆◆◆◆
それから警察に事情を聞かれたり大変だった。
アキオは結婚してもハルキを忘れないミオが許せなかった。そして、ミオに似ている翼を代わりに抱いていたのだ。
長い冬は終わった………
翼は高校に戻り、春から離婚したハルキと一緒に暮らす事になった。
「おいてくよ!」
ブレザーをきた翼は奥にいるハルキに声をかける。
「待て!」
慌てて出てくるハルキ。
一緒に部屋をでる。
ずっと、春を待っていてよかった……
翼はそう思いながらハルキの手を握る。
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