15 / 15

第15話

◆◆◆◆◆◆ 「翼!」 名前を呼ばれて翼は目を開けた。 ぼやけた視界には白い風景と、 「ハルキさん?」 ハルキの姿があった。 「ここ?……あ、あきお……」 視界が鮮明に見えると記憶も鮮明に甦る。 アキオに首を絞められながら犯された記憶。 「大丈夫、ここにはいないから安心していいよ」 ハルキは翼の頭を撫でる。 「どこ?あきおさんは?どこ?」 心配とかそんなのではない。怖くて……本当に安心して良いのかと思うのだ。 「彼は警察だよ」 「えっ?」 それは自分を殺しかけたから? 「ミオを殺したんだ………」 ハルキはそう言って翼の手を握る。 「事故にみせかけて………ミオを………翼まで……でも、よかった……翼は助けられた」 大人なのに大粒の涙……そう、思いながら 泣いているハルキの手を握り返す。 「 助けてくれたのはハルキさん?」 「うん、戻って来ないから……部屋に……そしたらアイツが翼に……」 握られた手は震えていた。 「ハルキさんだけだったよ………気付いてくれたのは」 「えっ?」 「アイツに抱かれるの本当は嫌だった……怖くて死にたかった………ずっと、冷たい冬の中でハルキさんだけが……気付いてくれた。一生冬だけだと思ってたんだ……春なんて来ないって、でも春をずっと待ってた」 よかった………と翼は目を閉じた。 眠った翼の頭を撫でる。 「うん、大丈夫。ずっと俺がいる。………君の冬は終わったんだ」 ◆◆◆◆ それから警察に事情を聞かれたり大変だった。 アキオは結婚してもハルキを忘れないミオが許せなかった。そして、ミオに似ている翼を代わりに抱いていたのだ。 長い冬は終わった……… 翼は高校に戻り、春から離婚したハルキと一緒に暮らす事になった。 「おいてくよ!」 ブレザーをきた翼は奥にいるハルキに声をかける。 「待て!」 慌てて出てくるハルキ。 一緒に部屋をでる。 ずっと、春を待っていてよかった…… 翼はそう思いながらハルキの手を握る。

ともだちにシェアしよう!