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プロローグ・白馬の騎士※
白馬の騎士団。
その訓練場である白い床の上で、二人の騎士が激しくぶつかり合っている。
一人は若い剣士。白い鎧に刻まれた線は新入りであることを示す一本。
一人は壮年の剣士。鎧の線も、熟練の団員であることを示す二本である。
刹那の睨み合いのあと、若い騎士が弾かれたように飛び出した。
引力の如く惹きつけられる二人の身体。若い騎士の放つ強烈な横薙ぎの一撃が、剣で庇った壮年の騎士の身体もろとも揺らがせる。
「さすがだな、ヴィクター。だが…」
しかし男もまた、白馬騎士団に長く所属する卓越した騎士である。瞬間的なパワーやスピードでは負けていても、まだまだ新入りのヴィクターに劣る実力ではなかった。
「隙が大きい」
既に二撃目を振りかぶっていたヴィクターの剣先に、軽い力で男の刀が当てられた。動きとしてはただそれだけの、シンプルな動作だ。
「っ……!」
しかしヴィクターの剣は見事に弾かれた。開いた剣と身体の間に、大きな隙ができる。それで、勝負は決まった。
二人の動きが、同時にぴたりと止まる。
壮年の騎士の剣は、ヴィクターの首元ぎりぎりに突きつけられている。
「参りました……」
心底残念そうに、しかし潔さを含んだヴィクターの声。手に持っていた剣ががらん、と音を立てて白い床に落ちる。
「だんだん厳しくなるな……だが俺の勝ちだ」
壮年の騎士は埃を払うような動作をしてから、ヴィクターの剣を拾い上げた。
二人の騎士はどちらからともなく互いに姿勢を正し、向き合う。
「では、今夜」
「ああ、俺の部屋に」
密かな約束は、二人の間でだけ交わされた。
♡
鎧を纏った弾丸の如く訓練場を駆けていた身体が、今は男の腹の上で淫らに跳ねている。
「あっ、ぁ、はぁ……っ、ぁ」
「戦ってる時とはえらい違いだな、ヴィクター」
そんな言葉が聞こえているのか聞こえていないのか、若い騎士は声を震わせながら懇願した。
「……っ、もっと、もっとして……」
「はは、もう腰を振るのに疲れたか?」
「……っあぁ〜〜…ッ、アッ、あぁ……っ!」
男が腰を掴んで揺さぶると、歓喜に濡れた声が節操なく部屋にこだまする。ヴィクターの端正な顔が、制御不能の快楽に歪む。
「お前が俺より強くなったら、もう抱けないのかと思うと……、勿体ない、なっ!」
「ひ、ぃ…ぐっ!、らめ、そこ、らめ………っ!」
男の動きが一層激しくなった。たん、たん、と筋肉がぶつかり合う音に合わせ、ヴィクターの呼吸が余裕なく乱れてゆく。
「ほら、イけ……っ」
「あぁ、──ッ!」
最奥を切り拓くように深く、深く腰を沈めると、若い騎士は、白くしなやかな肢体を引き攣らせて絶頂した。
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