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番外編Ⅲ
前のオレなら、それもいいかと思えたかもしれないが、今はそうじゃない。
なにせ、オレは今、ファビウスの恋人なんだから......。
悲しくなって目を伏せると、優しい声音が話しかけてくれる。
「気づいていないかもしれないが、俺は少なくともアールがこの家にいるだけで嬉しいし、役に立たないとも思ってはいない」
――それは本当のことだろう。
ファビウスの眼差しがとても優しいから、そう思う。
だけどさ、好きな人の役に立ちたいって思うのは恋人なら誰だってそう思うだろう?
オレは反論を試みる。
......んだけど、オレよりも先に、ファビウスが口をひらいた。
「どうしても役に立ちたいというのなら、そうだな。ずっと俺の腕の中にいなさい」
……グルンッ。
「うわわっ!」
オレの視界が回転したかと思うと、ファビウスの顔が真正面にあった。
彼を見下ろしていたはずだったのに、今度は逆に見下ろされている。
――かと思えば、すぐにオレの口は塞がれた。
キス、されているんだ。
仕事に行く時間だと、抗議したいのに、オレは自分の意志に反して彼の広い背中に腕を巻きつける。
そして数時間後には約束の時間よりも遅れたのはなぜかと、取引先の主人から怒られるのは目に見えている。
その時は、仕方がない。
一緒に謝ってあげよう。
決意したオレは、ファビウスが与えてくれる長い甘い口づけに酔いしれた......。
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おやゆび姫~
偽りの仮面を被った王子。END
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