15 / 16

番外編Ⅱ

「お~い、ファビウス~」  こんなに揺らしても、まったく起きないなんて......。  はあっと長いため息をついて、いまだ眠っている彼を見下ろせば、オレの視界に真っ先に飛び込んでくるのは、朝日を浴びた象牙色の肌――。  サファイアの綺麗な瞳は、今は長いまつ毛で閉ざされている。  常にオレをあばく半分ひらいた薄い唇。  プラチナブロンドは絹のよう。  相変わらず、すごく綺麗だ......。  ベッドに横たわる彼に見とれていると、腕が伸びてきて、ベッドの方に引っ張られた。 「うわわっ!!」  気がつけば、目の前にはサファイアの瞳がオレを覗き込んでいた。 「アール、また食事の用意をしてくれたのか?」  まだ寝起きらしいその人のテノール声はかすれていて、男の色香を放っていた。  起きてたのかよっ!!  狸寝入りなんて卑怯だぞ!! ――なんて思っても、声に出せないのは、大好きなその人が射抜くようにオレを見つめてくるから......。  ドキン、ドキンと心臓が高鳴って、胸がいっぱいになる。  何も話せない。  だけど、何か話さなきゃ、オレがファビウスに見とれていたっていうことを知られてしまう。  いくら恋人になった今でも、そんな状況を知られるのはやっぱり恥ずかしい。 「......オレはこれくらいしか役に立たないから......」  ドクン、ドクンと高鳴る胸を抑えるように話すその言葉は、オレが思っていたよりもずっと悲しい内容になってしまった。  これじゃあ、ファビウスに面白みがない奴だと思われてしまう。

ともだちにシェアしよう!