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番外編Ⅰ

 ――――。  ――――……。 「お~い、ファビウス。仕事行く時間だぞ~!!」  お玉とフライパンを手に、カンカンと打ち鳴らし、いまだベッドの上で眠っている彼を起こす。  オレ、アール。  ひょんなことからこの広い屋敷で住まわせてもらっている。  んでもって、ベッドの上で眠っている彼の名前はファビウス・アレビノ。  孤児院育ちで家族がいないオレの里親になってくれた最愛の人......。  ファビウスは投資家で、しかもすんげぇ金持ち。  そんなだから、オレっていう同居人がひとり増えたくらいじゃ金に困らないらしい。  彼はすぐにオレの家族になってくれた。  だから正式なオレの名前は、アール・アレビノだ。  だけどそれだけじゃない。  オレがいた孤児院の経営が難しいと知った彼は、なんと孤児院に寄付までしてくれたんだ。 『もうオレみたいな目にあわせることがないように』って、彼はそう言って......。  ファビウスはすごく優しい。  そんな彼と一緒にいられるオレはすごく幸せだ。  涙がでそうになるくらい、今がすごく嬉しい。  心が満たされる。  今という時を実感すれば、実感するほど幸せで、嬉しさのあまり、オレはわざと大きな声を出した。 「ファビウス、今日は大事な取り引きがあるんだろう?」  何回、ファビウスを呼んだだろう。  なかなか起きてくれない主人を起こすため、オレはフライパンやらお玉を机の上に置いて、彼を揺さぶる。

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