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第13話

「好きだとそう言えばいいんだろうが。無理矢理お前を抱いたのは事実だ。そんな俺をお前は当然、嫌っている。 それに、同性を好きだなどと言って誰がこの感情を理解できる? 俺を軽蔑(けいべつ)し、ここから逃げ出すのも時間の問題だ......」 『――愚かだろう?』  そう言ってファビウスは笑う。  だけど......だけどさ。  オレは笑えない。  だって、だって、オレもファビウスが好きなんだ。  オレを助けてくれた優しいファビウス。  やり方はおかしいものだったけれど、それでもファビウスなりにずっと冷血なフリしてオレを守ってくれたんだ......。  さっき気づいたばかりだけど、ファビウスに寄せるこの想いは間違いなく恋だ。  ファビウスと一緒になって笑えるわけがない。  だからオレは口をひらく。 「ねぇ、ファビウス。いい方法があるよ? オレをココのお手伝いさんにすればいいんだ。 オレはがさつだけど、孤児院育ちだ。料理も掃除もできる」 「アール? お前......何を言って......?」 「オレ......さ、さっきね、孤児院がオレをさらうように仕向けたっていう内容よりも、ファビウスがオレのこと、玩具みたいに思っているっていうことの方が悲しいって思ったんだ」 「アール?」 「それってきっと、こういうことだよね?」  オレはファビウスの薄い唇に自分の口を押し付けて、これ以上発言させないようにした。  これからは多分、ファビウスはオレを玩具みたいには扱わないだろう。  今のファビウスなら、きっとうまくやっていける。  そう思いながら、彼の首に両腕を巻きつけた。

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