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第1話 ※R-18内容有

「青森?」 「そー。そこに、件の神様がいるかもしんないんだよねー」  ヘムさんが一緒にパンを食べながら長いため息を吐く。 「じゃ、行かんとだねー。俺も一緒に行くの? 留守番?」 「危ないかもしんないから、留守番なんだけど……、青森って遠いんだよ。前の事もあって、その間ハチ一人って心配だからさ。リリにハチを預かってもらおうと思って」 「リリさん此処来んの?」  未だにホテルに寝泊まりしてる俺たちは、だだっ広い部屋を見渡す。  テレビもあるし、格段に前の家よりも暇は潰せるし一人でもいいんだけどな?  ま、前回も死にかけたし、俺が口を挟む事はなんもないけど。 「リリがこんな部屋泊まるわけないって。ハチがリリんところ行くの。リリも仕事もあるし、そっちの方がメイディリアもいるし、他の子達もいるから私も安心だしね」 「ふーん?」  他の子? まだ誰かいんのか? 「いつから行くの?」 「今日から」 「今日!? 急だね」 「色々あってね」 「へー、大変だね。じゃ、いってらー」 「そして、あっさり。雑ーっ」  じゃ、何で言えばいいんだよ。  ヘムさん、こう言うところ面倒いな。 「はいはい。俺も少し寂しいけど、人間になる為なら仕方がないよ。あ、俺も着替えとか、持ってた方がいいよね?」 「……もう少し嫌がって? 一緒に行きたいとか、だだ捏ねて。ハチが出来ないなら手本見せるから」 「すっげぇ見たくないからいいよ……。で、俺何用意すればいいの?」  嫌じゃん。千歳のだだ捏ねる姿見るの、凄く嫌じゃん? 「氷河期対応ー。着替えとか、持ってかんでもメイディリアがなんか適当に買ってくるでしょ?」 「メリさん大変じゃん。持ってくよ。服入れるもんなんか無いかな?」 「鞄あるよ? 使う?」 「マジで? 借りる。俺、鞄持つの初めてでワクワクすんね!」 「……いいねー。それ。瞬時に機嫌直った」 「チョロすぎん? 流石に」  何処に機嫌直る要素あったん?  全然わからん。 「千年も生きてると、そう言う目新しさが眩しさに変わって弱くなんの。考えてもみてみ? 知り合い全員、五百歳は越えてるジジイとババアばっかりよ? ハチなんて赤ちゃんじゃん?」 「いや、赤ちゃんじゃないでしょ? ヘムさん、鞄何処よ?」 「こっちー」 「ヘムさんは用意終わってんの?」 「私はほぼほぼ現地調達するから、いつもの鞄しか持ってかないよ。ほい。何かの時に貰ったトートバッグだけどいい?」 「ありがとー」  何かの時に貰ったトートバッグ、取ってるんだ。  吸血鬼もやっぱり人間寄りだよね。  俺はヘムさんから受け取ると、手当たり次第に服を詰める。  おっ! 白い無地のバッグ。かっこいいじゃん! 「こらこら。服は畳んで入れないと。着る時にシワになっちゃうし、上手く入らないよ?」 「そうなん?」 「そう。服はこうやって畳むの。ハチもそっちでやってみ?」 「ん。こう?」 「そうそう。うまいうまい」 「パンツはちっちゃくこうやって折って丸めると収納に便利ですよ〜」 「吸血鬼の知恵〜。生活感なさそうなのにすげぇ」 「そこは主婦でしょ? そして、何気に馬鹿にしてるな? 生活感ないわけないでしょ。一人でいるの長いからねぇ。千年ほぼほぼ一人暮らしみたいなもんだし。世界中飛び回ってたから、こう言うのは得意だよ」 「かっけー。仕事できる大人みたいなこと言うね」 「いや、仕事できる大人だからね? 私の事、何だと思ってんの?」 「気分で部下とか殺しちゃう吸血鬼」 「え? ハチ、もしかして私のこと嫌いじゃないよね? 大丈夫だよね? ハチからした一緒に人間になろうと誓ったプロポーズ忘れてないよね?」 「忘れてないから大丈夫だよ。ヘムさんと違って俺、千年も生きてるお爺ちゃんじゃないし」  俺はでっかく腕で丸を作る。  でもさー、それ以前の問題だから。  そして、あれは別にプロポーズでもないし。 「心臓痛くなるからそう言うのやめよ?」 「歳じゃん」 「千年も生きてるけど、若いからね!? 若い方だからね!?」 「吸血鬼って、何歳から老人なん? この前のチェロスさんだっけ? あの吸血鬼、おじいちゃんの姿からおっさんの姿に変わったし、吸血鬼よくわからんね」 「そんな美味しそうな名前だっけ? あれはねぇ、多分三千年は生きてると思うよ」 「三千年経ったらヘムさんもおじいちゃんになんの?」 「ならんと思うよ。あれは、一種の節電みたいなもんでしょ? 私とは力の量が違うんだよね」 「全然わからん」  どう言うこと? 「吸血鬼もサキュバスも、と言うか人外の化け物って身体の時間が最も適した時に止まる種族が多いんだよ。でも、止めるのにも力が必要。常にその最適な状態でいる為には常に力を消費し続けなきゃいけないの。あのおじいちゃんはその最適な体になる力を温存して別の何かに使える様にしてたんじゃないかな? 雑魚過ぎて知らんけど」 「ふーん? よく分からんけど、ヘムさんは強いから年取らんって事?」 「そう言う事。よく出来ましたー! グッボーイ!」 「ワン!」  お、久々にめっちゃ褒められるじゃん。  俺、犬なのはどうかと思うけど、ヘムさんにこうやって褒められるのは好きなんだよね。  その後も俺たちは無駄話をしながらも、畳んだ服を次とバッグに入れて行く。  あれ? 俺の服、めっちゃ少ないな。ま、外に出ないしいいけど。 「さて、服も畳めたし……」 「もう行く? 早いね。そんなに時間やばかったの?」 「違う違う。ハチを充電すんの。一週間は向こうにいるし、もう少し長くなるかもしれないし、少しでもハチを堪能しておかないと死んじゃう」  そう言って、ヘムさんは俺たち二人の間にあったトートバッグをポイっと投げて俺に抱きつく。  この人、本当にこう言う所がダメだと思うよ?  俺のだからね? あれ。 「吸血鬼なんだから、死なないでしょ?」 「ハチ不足で死ぬかもよ?」 「もー。絶対嘘じゃん。俺が心配して死ぬよ?」 「それは困るね。ハチが死んだら世界が終わっちゃうから、気を付けて?」 「終わらせんでよ」  あのさ。  俺、今笑ってるけどさ。  最近ふと思うわけよ。  前からちょいちょいこの手の冗談を言う人でさ、俺は笑って流してたんだよ。  でもさ、リリさんとかもめっちゃ強いとか、吸血鬼大量に殺したとか言うの聞くとさ、この人、本当に世界終わらせたり人類滅亡させたり出来るんじゃないかって考えてる自分がいるわけよ。  いや、流石にね?  流石に。  盛りすぎだとは思うよ?  いくらヘムさんが強くても、それは無理じゃない?  流石に盛り過ぎでしょ?  分かってるって。  強いって言ってもさ、最早それは流石にでしょ?  そう思うじゃん?  むしろ、そう思いたいじゃん?  けど、実際は、だよ? 実際、ヘムさんは……どれぐらい強いんだ? と、俺は思うようになってしまったわけですよ。  だからさぁ。  この冗談、めっちゃ俺に緊張が走るんだよ。今されるとさ!  マジで人類滅亡しんよね!? 世界終わらんよね!?  俺、まだヘムさんの情緒全然わかってないからね!? 「ハチがいい子でお留守番してたら大丈夫だよ? 危ない目に、合わないで。ちゃんと私を待ってたら、大丈夫っ」 「大丈夫だって。ヘムさん心配し過ぎー」  この会話、段々胃が痛くなってくる。  無理無理。普通の人間の俺には無理。  重いのは、ヘムさんの好きって言葉だけで十分っ! 「私も初めて自分がこんなに心配性って知ったよ。心配って大変だね。心臓がぎゅって痛くなる」 「俺もー。一緒だね」  一緒に笑ってあげると、ヘムさんは赤い目をキラキラさせながらキスをする。  赤い目は、あの事件以降俺に隠さなくなった。  好きは分からんけど、ま、こう言うヘムさんは可愛いよね。  真っ赤な目のうさぎさんみたいで。  今も必死に俺の唇を噛んだり舐めたりしてるの、可愛い。  俺が舌を出すと、ヘムさんはカプリと優しく歯を立てる。  痛みよりも柔らかく刺さる犬歯の刺激に思わず声が出た。 「ん……っ」  それに気を良くしたヘムさんはどんどんと俺の口の中に我が物顔で入ってくる。  少しだけざらりとした舌で歯茎を舐められ、舌を絡みとられた。  此処までされると、最早息を吸うのもやっと。どちらの唾液かもわらぬ唾液がだらしなく口端から滴り落ちる。  それを拭う事さえ許されず、ヘムさんの口は唾液を追う様に下へ下へ降りていった。  服を捲り上げられ、乳首を吸われる。 「んぁっ」  もう、拒む理由も、必要もない。  このホテルに来てから、何度もキスをしたし、セックスもした。てか、昨日もした。  なんなら、今日起きてもした。  絶対充電の必要なくない? 毎日毎秒百パーセントになってね? 消費不可でしょ。それ。  けど、やっぱり、何か……。  俺は薄目を開けてヘムさんのつむじを見る。  真っ黒な髪な綺麗な髪がサラサラと揺れている。  俺はその髪を掬うように指先に絡めてヘムさんの頭をぎゅっと抱く。  可愛いんだよなー。  充電って聞くと、悪い気もしないし。セックス疲れるけど、許しちゃうんだよね。この可愛さに免じて。  もう、こうやってつむじ見るだけで、抱きしめちゃうぐらい、可愛いく思えて来ちゃうの。  俺よりもめっちゃデカいのに、めっちゃ男の人なのに、何でかとてつもなく可愛いと思ってしまう。  何だこの気持ち。マジでよく分からん。 「ハチ、気持ちいい?」 「ん」 「随分と可愛く慣れてきたよね。えらいえらい」  ぼんやりと頭の中がしてきて、褒められる様に優しくキスをされる。  激しいのもいいけど、こっちも好き。  夢中になってキスを貪っていると、激しく乳首を爪でつねあげられる。 「んんっ!」  突然の刺激に叫びにも似た声が上がってしまう。 「こらこら。何満足そうにしてんの? まだまだでしょ?」 「べ、別に、してないし……っ」 「本当? トロンってしてたけど?」 「それは、してたかもだけど……」  満足ってわけじゃなくてさ。 「まだまだ私は足りないよ? ハチの中、入ってないしね」  そう、ヘムさんが意地悪そうに笑うと、ヘムさんの指が中へと入ってくる。 「んっ!」 「朝もやったばかりだし、緩くて気持ちいいね?」  すんなりと指を受け入れてしまった気恥ずかしさから体を捩って逃げようとするが、手は簡単に片手で抑えられて両足の間に体を擦り込まされる。  抵抗させないつもり、満々すぎん? これ。 「痛くないでしょ? ハチも、気持ちいいはずだけど?」  少々の抵抗を根に持っているのか、いつも以上に無遠慮な指が奥へ奥へと入ってくる。 「やぁ……っ」 「嫌じゃないでしょ? ハチ、自分から腰動いてるよ?」 「そんな訳……っ!」 「気付いてない? ほら。奥へ奥へ来てっておねだりしてるように動いてる」  無意識の自分の存在に、思わず何とも言えない羞恥心が湧き上がってくる。  何処かで、物足りないと思っている自分がいるのだ。  もっと奥まで欲しいと、もっと引っ掻き回すように中を暴いて欲しいと、ねだる自分が。 「あはっ。自覚しても動くのやめないの、可愛いね」  先程まで与えられていた小さな快楽がピタリと止められ、俺は恐る恐る顔を上げる。 「やめる、の……?」 「ちょっと意地悪したかったけど、そんなに可愛くおねだりされたら、意地悪出来そうになくなるよね」  ヘムさんは俺の中から指を抜くと、ペロリと舐める。  いつも、よく舐めれるなと思うけど。赤い長い舌が絡みつく姿に少しだけドキドキを覚えてしまう。   「可愛いね、ハチは。良いワンコにはご褒美あげるね」 「え」  突然、体を抱き上げられて、向き合い子供の様に膝の上に移動させられる。 「あ、ワン忘れたね。じゃ、ペナルティ」 「え、ちょっ……、はぅっ!」  そのまま俺の何の意思も確認されずに、尻たぶを掴まれると、一気に指よりも太いものが、さっきよりも奥に押し込まれる。 「な……っ! やっ!」  目の前がチカチカするっ。  何これ。いつもよりも、深いっ! 「あれ? 喜んじゃった? お仕置きになってないかー 」  楽しそうなヘムさんの声は、最早脳に届いてすらいない。  突然の激しい挿入に、自分の中が驚きと喜びでぎゅっと締まり生々しい程の肉の食感が抉っていく。 「じゃ、もっと激しくしなきゃね」  体を倒され、何度も激しく突き動かされる。  体がバラバラになりそう。  でも、押し込まれる度に、引き抜かれる度に、一番気持ちいい所が擦られて何度も何度も体が快楽に痺れる。 「やっ! ダ、ダメっ! きもち、よすぎて、ダメっ!」  何も考えられない。  激しすぎる快楽が脳を支配する。  必死にヘムさんにしがみつくだけしか出来ない。 「ハチ、私も気持ち良いよ」  快楽に濡れたヘムさんの声が、耳元で囁かれる。  あ、やば。  何でかわんないけと、快楽が急激に込み上がってくる。 「それ、ダメ……っ!」  もう耐えれないと熱を手放すと、体の中が痙攣した様なうねりを起こす。 「ん……っ」  それと同時に、体の中に熱い熱が放たれた。  あ、またこの人、中に……。  でも、ダメ。まだ、何も考えたくないし、何も考えられない。  ぐったりした俺の腰を掴んでゆっくりと、揺り動かしながら、ヘムさんが俺を抱きしめてた。  あー。これから、少し離れちゃうんだ。  少し寂しくなりそうな時に、ヘムさんが耳もとで囁く。 「足りない……」  ん? 「ヘムさん……?」 「まだ、足りない。全然、足りない」  嘘でしょ? さっき出してばっかりなのに、もう中で元気を取り戻そうとしてるなんて。 「もう一回しよう?」 「へ? ちょっと無理かもぉ……」  朝もしたし、結構疲れたよ、俺。 「もう一回だけ。なんなら、ハチは寝てて良いよ」 「そんな雑さ加減ある……?」 「だって、ハチの中にいると我慢できないだもん」  ゆっくりとまた動き出すヘムさんに、流石に抗議の声をあげようとした瞬間だ。 「僕を呼び出しておいて、何やってるんですか! 貴方達はっ!」  へ?  突然の第三者の声に肩が跳ね上がる。 「あ、メイディリア。ちょっと待っててくれる? 後一回したら多分終わるから」  そこには、いつ入ってきたかも分からないメイディリアさんが仁王立ちで立っていた。  いやいやいや。嘘だろ? おい。 「へ、ヘムさんっ!? は!? ちょっ! 待って!? どう言うこと!?」  何でこの人、まだ続けようとしてんの!?  メリさんいるじゃんっ! 「そろそろ空港行く時間らしいんだけど、まだ一回は出来るって! 余裕!」 「余裕とかじゃなくてっ! メリさんいるじゃんっ!」 「えー? 嫌?」 「普通嫌だよ! 何言ってんの、マジで!」 「わかった。メイディリア、ハチが嫌がってるから、また後で来てくれる?」  わかってねぇーなぁー! この野郎! 「ヘム様、それは……」  流石にねぇーだろ。この吸血鬼は。 「ヘムさん、お出かけ寂しいのは、俺も一緒だからわかるけど……。これじゃ、離れられなくなっちゃうよ。続きはね、また帰ってきてからしよ? ね?」 「ハチ……。うん、わかった」  ヘムさんはゆっくりと俺から体を離すとにっこりと笑う。  お、今日は成功か? 「メイディリア、便明後日ぐらいに変更しといて」 「そうじゃないんだよなぁーっ!! 人の話、マジで聞いてる!?」    この人のこう言うところ、マジで好きになれる自信ないわー!  この後、メリさんと一緒にゴネにゴネる千歳児吸血鬼を何とか送り出し、俺がリリさんの所迄送られるのに二時間近く掛かった事は今年最大の大仕事だった事は二度と忘れないないだろう。  それにしても……。  リリさんの所迄連れて行ってくれる為に迎えに来てくれたメリさんは移動中でも何でも、俺を見るたびにため息を吐くし、嫌な顔をしてくる。  んー。  多分だげと、めっちゃ嫌われてる?  俺、なんかやったけ?  五回目のため息を吐かれたタクシーの中で、窓の外を見ながら思い出すけど……。  うん。がっつりセックス見られたね。  うん。俺、多分悪くないね。  うん。悪いの、全部ヘムさんじゃね?  そう思いながら、空の旅を楽しんでいるはずのヘムさんに心の中で思いっきり舌を出すのであった。罵倒する言葉、今度ヘムさんのパソコンで調べたろ!

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