fujossyは18歳以上の方を対象とした、無料のBL作品投稿サイトです。
私は18歳以上です
禍ツ天使の進化論 第123話 アントゥム神殿(4) 己ガ罪ヲ償ウ者 | 空月瞭明の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
禍ツ天使の進化論
第123話 アントゥム神殿(4) ...
作者:
空月瞭明
ビューワー設定
123 / 140
第123話 アントゥム神殿(4) 己ガ罪ヲ償ウ者
守護傀儡
(
ガーディアン
)
は、アントゥム神殿の丸屋根の穴を抜けて神殿の中心部に降り立った。 アレスとレリエルは後ろ跳びして距離を取った。 今までの化け物じみた
守護傀儡
(
ガーディアン
)
とは違った。生きた天使のような姿。 見目麗しい男だった。金髪と茶髪の混じる長い髪、整った優しげな顔立ち。細めの体を、大天使の黒装束で包み、制帽を被っている。 ただ、瞑った目と閉じた口が、糸で縫われていた。 黒く太い糸が目と口周りの肉をずぶりと貫通し、痛々しげに縫いつけられている。 まるで何かの戒めのように。 レリエルが震えた声を出した。 「大天使の、ウリエル様……!かつて天界で、まだ僕が子供の頃に処刑された方だ!なぜ処刑されたのかは誰も知らない……!」 「材料が大天使か、じゃあ強いだろうな」 閉じたままの
守護傀儡
(
ガーディアン
)
の口から、どのようにしてか声が発せられた。 「摂理ヲ乱サントスレバ死ヲ。 秘密ヲ暴カントスレバ死ヲ。 我ハ摂理ノ守護者、秘密ノ守護者。 罰ヲ下シ、己ガ罪ヲ、永劫償ウ者ナリ……」
守護傀儡
(
ガーディアン
)
は手のひらを前に突き出した。その五指全てが切断されていた。小指から人差し指までは第二関節で、親指は第一関節で。 まるで拷問を受けた後のように。 その手の平に光が集まる と、手から大量の光の玉が、発せられた アレスは眉間にしわを寄せて叫んだ。 「レリエル、避けることに集中しろ!絶対にあの玉にぶつかるな!」 それに当たれば、並みの天使なら一発で
魂
(
セフィロト
)
を全壊させられる、と直感した。 「わ、わかった!」 レリエルは持ち前の素早さで、次々放たれる光の弾幕を避けた。 アレスはその光の玉を剣で弾きながら、突っ込んで行った。 間合いに入り、虹色に輝く神剣を突き刺そうとする。 だが。 アレスに刺される前に、
守護傀儡
(
ガーディアン
)
はその姿勢をがくりと崩した。 「なにっ!?」 ひざまずく
守護傀儡
(
ガーディアン
)
の額に、赤いナイフが深々と突き刺さっていた。 まるで炎を固体化させたようなナイフが。 振り向くと、
魂構成子
(
セフィラ
)
一つのミカエルが、手でナイフを放ったままの格好でそこに立っていた。歯を食いしばり、殺気に満ちた、それでいて泣きそうな顔をして。 「ミカエル!?なんでお前……」 ミカエルはアレスを無視して
守護傀儡
(
ガーディアン
)
に歩み寄った。 ひざまずく
守護傀儡
(
ガーディアン
)
の顔を両手でつかみ、震えながら声を絞り出す。 「ウリエル……!こんな所で、こんな姿に……!ちっくしょう……!」
守護傀儡
(
ガーディアン
)
の、糸で縫われた瞼がうっすらと開いた。 糸で縫われた口が小さく動く。 「ミ……カ……エル……」 かすれた声を出した
守護傀儡
(
ガーディアン
)
は、かすかに微笑んだように見えた。 その全身が、砂のように崩れ落ちる。 神殿の柱の間から入る風が、砂を運び去っていった。 「……っ、……ぁ、あああああああっ……!!」 手の中の砂を握り締めて、ミカエルは泣き崩れた。 事情が分からないアレスは、ひたすら困惑する。 「お、おい……」 ミカエルは、その場でゆらりと立ち上がった。 そしてぶんと手を振って、その手に赤い三日月刀を出現させる。 「!」 アレスは咄嗟に身構えた。 だがミカエルはアレスではなく、自身の足元の床下に設置されている、
希石
(
コア
)
を見据えた。 そしてその赤い刀を、足元にむかって振るう。 一振りで、
希石
(
コア
)
は粉々に打ち砕かれた。 「えっ!?」 予想外の行動にアレスがうろたえる。 ミカエルは神殿の中心部から一歩後ろに下がった。 神殿の中心部から、緑色の光の柱が立ち上った 緑の柱は神殿の床から、屋根の丸穴を通り、天空宮殿へとまっすぐ、立ち上っている。 「開いたぞ、転送門。行きたきゃ行け、生贄野郎」 そう言って、踵をかえす。 「ま、待て、なんで……!」 アレスは去り行くその背中に問いかけた。 ミカエルは足を止めた。振り向かず答える。 「天界開闢なんてろくでもねえってことが分かった。お前ら人間もろくでもねえ。熾天使とお前、クソ野郎同士の戦い、どっちが勝つか、見届けてやる」 それだけ言って、また歩み出す。 アレスは頭をかいた。手を口にあてがって、声を張る。 「人間と天使、どっちが滅亡しても恨みっこなしだからなー!」 ミカエルが、はっと鼻で笑った。去り行きながら呟いた。 「……一つ、教えておいてやる。宮殿で人間は『人形』にされるらしいぜ」 そして背を向けたまま片手をあげ、おざなりに手を振った。 「おお、情報ありがとな!」 アレスはその後姿に手を振り返し、歩み去るミカエルを見送った。 だがしばらくして、ふと気づいたようにアレスはひごりごちる。 「……あ、やっぱ人間が滅亡したら、俺は恨むわ」 レリエルがくすりと笑ってアレスの手をとった。 「じゃあ行こう、転送門の中へ!」
前へ
123 / 140
次へ
ともだちにシェアしよう!
ツイート
空月瞭明
ログイン
しおり一覧